「勤務シフト作成お助けマン」のコラム|JRシステム

人時生産性とは?【計算式と上げ方】シフト最適化で利益を最大化|勤務シフト作成・シフト管理「お助けマン」のコラム


「売上は伸び悩んでいるのに、人件費は上がり続ける…」多くの店長や経営者の方が、こうした利益構造の課題に頭を悩ませています。その根本原因を突き止め、解決へと導く鍵が、従業員1人・1時間あたりの稼ぐ力を示す「人時生産性」です。

この「人時生産性」という言葉、聞いたことはあっても、正確な意味や計算、どうすれば高められるのかまでは分からない、という方も多いのではないでしょうか。社内で「人時」に関する認識が曖昧なままだと、効率的な経営改善を進めることは困難です。

この記事では、人時生産性について、基本的な定義から正確な計算式「人時売上高」や「労働生産性」といった似たような指標との違いを解説します。さらに、人時生産性を高めるための具体的な3つの打ち手なども深掘りします。

この記事を読めば、自店の「実力」を数値で客観的に捉え、利益を最大化するための具体的なヒントが見つかります。

この記事でわかること

  • ・人時生産性の定義と重要
    ・人時生産性を向上させる具体的な方法
    ・人時生産性だけを追うことの危険性

  1. 自店舗の「実力」を知る第一歩。人時生産性の意味・読み方・計算式
  2. あなたの店舗はどのレベル?業種別の人時生産性の見方(スーパー等)
  3. 人時生産性を上げる3つの打ち手は「シフト設計」で決まる
  4. 人時生産性だけを追う危険性|顧客満足・品質・離職の副作用
  5. 「人時」と「満足度」を両立させるKPI&ダッシュボード運用
  6. まとめ:人時生産性の向上は最適なシフト設計から

自店舗の「実力」を知る第一歩。人時生産性の意味・読み方・計算式

店舗経営や事業運営において、「従業員がどれだけ効率よく利益を生み出しているか」を測る重要な指標が「人時生産性(にんじせいさんせい)」です。

これは、従業員1人が1時間働くことで、どれくらいの粗利(付加価値)を生み出したかを示す指標で、数値が高いほど効率的な経営ができていると判断できます。働き手が減っていくこれからの日本では、限られた人数で成果を出すことが重要なのです。

だからこそ、人時生産性への理解を深め、向上させることが急務となっています。人時生産性の計算式は、以下の通りです。

・粗利額 = 売上高 - 売上原価

・人時生産性 = 粗利額 ÷ 総労働時間

ここでいう粗利額とは、商品やサービスの売上から、仕入れや製造にかかる費用(売上原価)を差し引いた利益のことです。総労働時間は、従業員全員が働いた合計時間を示します。

【例題】
ある店舗で、1カ月の売上が1,000万円、売上原価が200万円だったとします。この店舗の全従業員の総労働時間が3,200時間だった場合、人時生産性はいくらになるでしょうか。

1.粗利額を計算します。

1,000万円(売上高)- 200万円(売上原価)= 800万円(粗利額)

2.人時生産性を計算します。

800万円(粗利額)÷ 3,200時間(総労働時間)= 2,500円

この結果から、この店舗の従業員は1時間あたり2,500円の粗利を生み出していることがわかります。このように数値で「実力」を把握することが、改善への第一歩となるのです。

人時売上高との違い:売上ベースか、粗利(付加価値)ベースか

「人時生産性」とよく似た言葉に「人時売上高」がありますが、これらは目的と計算のベースが異なります。人時売上高は、従業員1人が1時間あたりにどれだけの売上高を生み出したかを示す指標です。

具体的には、以下の計算式で求められます。

人時売上高 = 売上高 ÷ 総労働時間

対して、人時生産性は「粗利額」をベースに計算するため、材料費や人件費といった売上原価を考慮に入れています。つまり、人時売上高が純粋な売上の効率を見るのに対し、人時生産性はコストを差し引いた後の「利益を生み出す効率」を測る指標なのです。

このように、人時売上高は売上規模を測る際に重要視されることが多く、特に飲食店などで活用されるケースが多いです。一方、人時生産性は、企業全体の収益性や従業員一人ひとりのパフォーマンスを評価する際に役立ちます。

労働生産性との違い:分子(付加価値)/分母(時間・人)の取り方を整理

人時生産性と並んで、企業の効率性を測る指標として「労働生産性」もよく用いられる用語です。しかし、これら二つの指標には明確な違いがあります。

労働生産性は、投入した労働量に対してどれだけの成果を生み出したかを示す、より広範な指標です。労働生産性の計算式は以下のように算出します。

労働生産性 = アウトプット量(生産数、付加価値額など) ÷
労働投入量(労働者数、総労働時間など)

この「アウトプット量」や「労働投入量」の捉え方によって、労働生産性の意味合いは変わってきます。例えば、物量で測ることもあれば、付加価値額で測ることもありますし、労働投入量も「従業員数」や「総労働時間」が使われることも少なくありません。

一方、人時生産性は「従業員1人が1時間あたりに生み出す粗利」に焦点を当てた指標です。つまり、労働生産性の中でも特に「付加価値額をアウトプットとし、総労働時間をインプットとした1時間あたりの効率性」を示します。

広義では、人時生産性は労働生産性の一部であると理解すると分かりやすいでしょう。
これらの違いを図で比較すると、以下のようになります。

このように、労働生産性は企業全体のパフォーマンスを測るのに対し、人時生産性はより現場の細かな時間効率や利益創出力に着目する際に有効です。それぞれの指標が持つ意味と用途を正しく理解し、目的に応じて使い分けることが、効果的な経営改善には欠かせません。

あなたの店舗はどのレベル?業種別の人時生産性の見方(スーパー等)

自店の人時生産性を計算したら、次はその数値がどの程度のレベルにあるのか気になるかもしれません。人時生産性の水準は、業種によって大きく異なります。

まずは、公表されている平均値と見比べ、自店の立ち位置を大まかに把握してみましょう。
中小企業庁の調査によると、主な業種の人時生産性の平均値は以下のようになっています。

参考:中小企業庁|中小小売業・サービス業の生産性分析

小売業:2,444円
宿泊業:2,805円
飲食店:1,902円

もちろん、これらはあくまで平均値であり、事業規模や地域によって差があります。しかし、もしあなたの店舗の数値がこの平均を大きく下回っている場合は、業務プロセスや人員配置に何らかの改善の余地があるかもしれません。

この数値をきっかけに、より深い分析をしてみましょう。

スーパーマーケット:部門別(青果/鮮魚/惣菜/日配)の読み解き

スーパーマーケットのように多様な商品を扱う業態では、部門ごとに人時生産性を分析する必要があります。各部門の粗利率や必要な作業工数が異なるため、全体の数字だけでは見えてこない課題が隠れていることがあるからです。

例えば、鮮魚部門や惣菜部門は専門的な加工が必要なため人件費がかさむ傾向にありますが、同時に粗利率も高いことが多いです。対照的に、日配品(牛乳、パンなど日持ちの短い食品)や青果部門は、粗利率が低いものの、補充や陳列作業の効率化で人時生産性を高める余地があります。

部門別の具体的な人時生産性の例を見てみましょう。

青果部門
粗利益高 600万円 ÷ 総労働時間 750時間 = 人時生産性 8,000円

鮮魚部門
粗利益高 540万円 ÷ 総労働時間 600時間 = 人時生産性 9,000円

惣菜部門
鮮魚部門と同様に調理工程が多く、専門性も求められるため、高い粗利が期待できる一方で、人時生産性も高くなる傾向が見られます。

日配部門
粗利率は低いものの、効率的な品出しや在庫管理が直接人時生産性に影響します。

このように、部門ごとの特性を理解し、それぞれに合わせた目標設定と改善策を講じることが、店舗全体の生産性向上には欠かせません。

「業種別平均」「ランキング」の落とし穴と使い方

業種別平均やランキングといったデータは、自社の立ち位置を知る上で便利な一方、その数値を鵜呑みにするのは危険です。こうした平均値データには、自社とは全く異なる前提条件の企業の数値も含まれています。

例えば、同じ小売業でも、以下のような条件が違えば人時生産性の数値は大きく変わってくるからです。

営業時間:24時間営業の店舗と、日中のみ営業の店舗
商圏:都心の一等地にある店舗と、郊外のロードサイド店舗
店舗面積(坪効率):小規模な店舗と、大規模な総合スーパー
正規・非正規の比率:パート・アルバイト中心か、正社員中心か

これらのデータを参考にする際は、こうした背景の違いを考慮し「自社の条件に引き直したらどうなるか」という視点を持たなければなりません。

平均値との比較はあくまで現状把握のきっかけと捉え、最終的には「過去の自社の数値からどれだけ成長できたか」を重視することが、本質的な生産性向上につながります。

人時生産性を上げる3つの打ち手は「シフト設計」で決まる

人時生産性を高めると聞くと、「従業員にもっと頑張ってもらう」「気合と根性で乗り切る」といった精神論を思い浮かべるかもしれません。

しかし、本当に効果的なのは、個人の努力に頼るのではなく、働く「仕組み」そのものを最適化することです。その最大の鍵を握るのが、日々の「シフト設計」に他なりません。

シフトは、単なる勤務時間の割り当て表ではなく、利益を最大化するための戦略ツールです。ここからは、人時生産性を飛躍的に向上させるための、シフト設計に焦点を当てた3つの具体的な打ち手をご紹介します。

①需要予測×シフト連動:POS/予約/天候でピークを先読み

人時生産性を上げるには「勘」や「経験」だけに頼ったシフト作りからの脱却が必要です。客観的なデータに基づいて、未来の来店客数や売上(需要)を予測し、それに連動した人員配置が欠かせません。

需要予測には、以下のような様々なデータを活用します。

POSデータ: 曜日別・時間帯別の売上や客数の推移
予約データ: 飲食店や宿泊施設での確定的な需要
天気予報: 気温や天候による来客数の変動
周辺イベント情報: 地域の催し物などがもたらす特需

重要なのは、予測したピークタイムに対して、人数を増やすだけでなく「誰を」配置するかという配置ルールを明確にすることです。例えば「金曜19時のピークには、追加注文が得意なAさんを必ず配置する」といったルールを設けることで、機会損失を防ぎ、売上と利益の最大化を図れます。

②“ムダ”を削る計画:過剰/過少配置・残業・深夜割増の抑制

効率的なシフト設計は、「ムダ」を徹底的に排除することにもつながります。具体的には、人件費が高騰する原因となる「過剰配置」や「過少配置」の是正、そして「残業時間」や「深夜割増賃金」の抑制などです。

過剰配置は人件費の無駄遣いとなり、従業員のモチベーション低下にも繋がりかねません。一方、過少配置には顧客満足度の低下や従業員の負担増、ひいては離職率の上昇に繋がるリスクがあります。

正確な需要予測に基づき、時間帯ごとに必要な人員を割り出せば、こうしたムダを最小限に抑えられます。例えば、ピークタイムを過ぎたら早めに退勤できるようなシフトを組むと効果的です。

また、深夜営業を伴う店舗であれば、深夜帯の業務を効率化するための人員配置やタスク管理を徹底したりすると効果があります。さらに、連続勤務時間の管理や休憩時間の適正化も、従業員の疲労蓄積を防ぎ、生産性の維持や向上につながります。

③“質”を高めるスキルベース配置:短時間差し込み×スキルマトリクス

人時生産性を高めるためには「誰を、どこに、いつ配置するか」という「質の最適化」が重要になります。これを実現するのが「スキルベース配置」です。

従業員一人ひとりのスキルや経験を可視化した「スキルマトリクス」を作成し、それに基づいて、特定の業務や時間帯に最適な人材を配置します。例えば、レジ打ちが早い従業員、商品知識が豊富な従業員、クレーム対応が得意な従業員など、それぞれの強みを最大限に活かせるシフトを組むのです。

この際「短時間差し込み」が有効となり得ます。これは、特定のピークタイムや特定の作業量が増える時間帯に、必要なスキルを持つ従業員を短時間だけ配置する方法です。

こうすると、コアタイム以外の人件費を抑えつつ、お客様へのサービス品質を維持・向上できます。スキルベース配置を導入する際には、以下のKPIを意識すると良いでしょう。

人時粗利: 従業員1人1時間あたりの粗利額。生産性向上の直接的な指標
顧客満足度::アンケートなどで、お客様の満足度を測定し、サービスの質を維持しているかを確認する
欠品率/待ち時間: 品切れやレジ待ち、注文待ち時間などを測定し、適切な人員配置ができているかを確認する

これらの指標を定期的にモニタリングし、改善サイクルを回せば、人時生産性を高めながら顧客満足度も維持・向上させられます。

人時生産性だけを追う危険性|顧客満足・品質・離職の副作用

人時生産性は、店舗の収益性を可視化するのに有効な指標です。しかし、この数値を絶対的な目標として、過度に追求することは慎重になったほうが良いでしょう。

その理由は、短期的な効率化を優先するあまり、長期的な店舗の価値を支える大切な要素を損なってしまう「副作用」が起こりうるからです。このようなリスクを事前に理解しておけば、より健全な経営判断が可能になります。

例えば、人件費を削るためにギリギリの人数で店舗を運営したとしましょう。レジには常に行列ができ、お客様への丁寧な対応がおろそかになるかもしれません(顧客満足度の低下)

また、清掃や商品補充といった、直接売上につながりにくいけれど重要な業務が後回しにされ、売り場の品質が落ちることも考えられます(品質の低下)

こうした状況は、従業員の負担を極端に増やし、心身の疲弊から離職率の悪化を招くことにもつながりかねません。人時生産性の追求が、顧客や従業員の犠牲の上に成り立っては本末転倒です。

この指標を単独で追うのではなく、必ず「品質」に関する指標とセットで運用しましょう。顧客満足度やリピート率、従業員満足度といった数値を並行して観測し、両者のバランスが取れた最適点を探っていく視点が不可欠です。

「人時」と「満足度」を両立させるKPI&ダッシュボード運用

人時生産性の向上を目指す上で、顧客満足度や品質を犠牲にしないためには、複数のKPIを組み合わせて管理することが重要です。効率性だけを追求せず「人時生産性」と「顧客満足度」を同時にモニタリングし、バランスの取れた経営を目指しましょう。

そのために有効なのが、これらの指標を可視化した「ダッシュボード」の運用です。これにより、店舗の現状を瞬時に把握し、迅速な意思決定が可能です。

ここでは、以下のようなKPIを併用することをおすすめします。

人時生産性 = 粗利額 ÷ 総労働時間
人時売上高 = 売上高 ÷ 総労働時間
人件費率 = 人件費 ÷ 売上高
顧客満足度(CS): 顧客アンケート、レビューサイト評価など
平均待ち時間: レジ待ち、品切れ時間など

これらの指標をひとつのダッシュボードで常にチェックすれば、どこかの指標が極端に悪化していないか、全体として目標に向かって進んでいるかを一目で確認できます。

週次15分レビューで改善サイクルを回す方法

KPIダッシュボードを導入しても、それを見るだけで終わってしまっては意味がありません。大切なのは、定期的にその数字をレビューし、改善へとつなげるサイクルを回すことです。

そこでおすすめしたいのが、「週次15分レビュー」という運用フレームです。店長や部門責任者が毎週一度、たった15分間だけ時間をとり、主要なKPIを振り返ります。
具体的には、以下のような流れです。

誰が:店長、または各部門の責任者
いつ:毎週決まった曜日・時間に15分間
何を見るか:人時生産性、人時売上高、人件費率、顧客満足度、平均待ち時間など主要KPIの週次推移

この短い時間で、各指標が目標値に対してどうだったか、特に変動が大きかった指標はないか、といった点をざっと確認します。もし異常値が見つかれば、その原因を深く掘り下げるための次なるアクションを検討しましょう。

例えば、もし顧客満足度が低下していれば、その原因がスタッフの対応なのか、商品の品質なのか、あるいは待ち時間なのかをさらに分析するのです。このようなレビューを習慣化すれば、問題の早期発見と迅速な対策が可能となり、PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)が効率的に回せるようになります。

アラート→逸脱検知→是正提案→検証のサイクル

週次レビューを形骸化させないためには、数値の変動に対して具体的にどう動くか、というアクションの「型」を決めておくことをおすすめします。そこで役立つのが、「アラート → 逸脱検知 → 是正提案 → 検証」という改善サイクルです。

「型」を決めておくと、問題発生から解決までのプロセスがスムーズに流れるようになります。具体的には、以下のようなルールを事前に決めておきましょう。

【ルール例】先週の惣菜部門の「人時生産性」が目標値を10%下回った場合

アクション①:逸脱検知
内容:原因のヒアリング(特売、欠品、新人スタッフの比率など)
担当:店長が惣菜部門のリーダーに確認
期限:レビュー会議の当日中

アクション②:是正提案
内容:次週の改善アクションを1つ提案(例:ピーク時のベテラン配置、調理計画の見直し)
担当:惣菜部門のリーダー
期限:翌営業日まで

アクション③:検証
内容:次回の週次レビューで、実施したアクションと結果を報告
担当:惣菜部門のリーダー
期限:次週のレビュー会議

このように、問題発見後の動き方をテンプレート化しておくことで、改善のサイクルが高速で回り始めます。

まとめ:人時生産性の向上は最適なシフト設計から

人時生産性は、売上や利益だけでなく、従業員一人ひとりの労働効率を測る重要な指標です。小売業や飲食業など、多くのサービス業において経営改善の目安となっています。

この人時生産性を向上させるための最も効果的な「テコ」となるのが「最適なシフト設計」です。

需要予測に基づいた的確な人員配置、無駄のない計画、そしてスキルを最大限に活かす配置。これらは、人件費の最適化と利益の最大化に欠かせません。しかし、これらの複雑な要素をすべて考慮し、手作業で最適なシフトを作成するのは手間がかかるため、課題となっている店舗も多いです。

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