「あの人ばっかり楽なシフトでずるい」「今月の夜勤、多すぎ…」そんなスタッフからの不満の声に、頭を抱えていませんか?夜勤を含むシフト作成は、担当者にとって毎月、頭の痛い作業ですよね。
複雑な夜勤シフト作成が、もっとスムーズに、しかも誰もが納得できる「透明なルール」で運用できれば、担当者の負担はぐっと軽くなるはずです。そこで今回は、そんな悩みを解消し、夜勤シフト作成を効率化するための具体的な方法を紹介します。
この記事では、夜勤の定義や割増賃金の基礎知識から、二交代制・三交代制の組み方の注意点までわかりやすく解説します。チェックリストやExcelの活用法、最適なシフト管理アプリの選び方についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。
・労務管理のチェックリスト: 深夜割増賃金、休憩時間、法定休日、労働時間記録・保存など、法律遵守のための確認事項。
・36協定と変形労働時間制: 法定労働時間を超える労働に必要な36協定の概要と時間外労働の上限、および労働時間を柔軟に設定できる変形労働時間制の活用。
夜勤シフトを組むにあたり、まず押さえておきたいのが、法律で定められた深夜労働のルールです。労働基準法では、午後10時から翌朝5時までの労働を「深夜労働」と定めています。
この時間帯の労働に対しては、通常の賃金に対して25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。これは、正社員やパート・アルバイトといった雇用形態に関係なく、すべての労働者に適用されます。ただし、管理職への適用については、少し注意が必要です。
労働基準法上の「管理監督者」は、残業手当や休日手当の支給対象外となります。しかし、深夜労働に対する割増賃金(深夜手当)は管理職にも支払わなければなりません。
ここで注意したいのが、会社が独自に設定する「夜勤手当」と、法律で定められた「深夜割増賃金」は別物であるという点です。夜勤手当を支払っていても、深夜労働時間分の割増賃金が法定の基準を満たしていない場合、法律違反になる可能性があります。
コンプライアンスを守り、スタッフの信頼を得ることは事業運営において非常に大切です。そのためにも、まずはこの基本をしっかり押さえることが、適切なシフト作成の第一歩となります。
関連記事:【2025年版】シフトと労働基準法|違法にならないシフト作成のルールを専門家が解説
夜勤シフトの作成には、主に「二交代制」と「三交代制」の2つの基本設計があります。1日の勤務時間帯をどのように分割するかによって分類されるのが一般的です。それぞれパターンを見ていきましょう。
三交代制は、1日の業務を3つのシフトに分ける勤務形態です。例えば、以下のような8時間ずつのシフトパターンが一般的となっています。
【三交代制のシフト例】
日勤:8:00 〜 16:00
準夜勤:16:00 〜 24:00
深夜勤:0:00 〜 8:00
このシフトを組む際に特に配慮したいのが、スタッフの健康と安全です。例えば、日本看護協会が発行する「夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」では、連続夜勤は2回まで、夜勤後の休息は11時間以上空けることが推奨されています。
このような客観的な基準があることで、特定のスタッフに負担が偏るのを防ぎ、安全な業務遂行とスタッフの健康維持に役立ちます。シフト作成の際は、こうした公的な指針を参考にルールを決めていくと良いでしょう。
二交代制は、1回あたりの拘束時間が16時間といった長時間になることも多く、スタッフの心身への負担が大きくなりがちです。そのため、三交代制以上に、休息や仮眠の設定が重要になってきます。
厚生労働省のガイドラインなどでも、特に以下の点に留意することが推奨されています。
・十分な休息期間の確保:夜勤後の休みは、夜勤時間と同じ長さ以上の休息が望ましい
・仮眠時間の確保:夜勤中に2時間以上の仮眠時間を確保し、作業能率の低下を防ぐ
・正循環のシフト:「日勤→準夜勤→深夜勤」という正循環を基本とする
これらの配慮がないと、疲労の蓄積による重大事故を招いたり、スタッフの離職につながったりする恐れがあります。シフトを組む際には、勤務時間だけでなく、その前後の休息まで考慮して設計することが大事です。
関連記事:交代制勤務の働き方、シフト管理。2交代制、3交代制などの交代勤務のシフトを徹底解説します
夜勤シフトを作成する際は、労働基準法に定められたルールを遵守しなければなりません。知らず知らずのうちに法律違反とならないよう、以下のチェックリストで基本事項を再確認しておきましょう。
(チェックリスト)
◻︎深夜割増賃金は適用されているか
◻︎法定休日労働の割増賃金は適切か
◻︎適切な休憩時間は確保されているか
◻︎労働時間等の記録・保存はされているか
◻︎法定休日は守られているか
◻︎労働時間を記録し、保管しているか
これらの項目は、健全な労務管理の土台となるものです。もし、1つでも漏れがあれば、是正勧告や罰則の対象となる可能性があるため、確実な運用が求められます。厚生労働省の「しっかりマスター労働基準法」に沿ってチェックしてみてください。
なお、労働時間の記録については「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき師に関するガイドライン」に沿って管理する必要があります。
厚生労働省|労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき師に関するガイドライン
「勤務間インターバル」とは、勤務が終了してから次の勤務が始まるまでに、一定時間以上の休息時間を確保する仕組みのことです。これは、働き方改革関連法により、2019年4月から事業主の努力義務となりました。
例えば「11時間」のインターバルを設ける場合、夜勤が24時に終わったスタッフは、次の出勤を翌日の11時以降にする必要があります。これは、夜勤明けの十分な休息や睡眠時間を確保し、働き過ぎによる健康リスクを低減させるのが狙いです。
導入方法としては、次のようなパターンが考えられます。例えば、退勤時間に合わせて翌日の始業時間を遅らせる「遅出」や、次のシフトを考慮して早めに退勤させる「早出」などです。
厚生労働省も導入・運用マニュアルを公開しており、企業の取り組みを後押ししています。スタッフの健康を守り、離職率の低下や生産性の向上につなげるためにも、積極的な導入を検討したい制度です。
関連記事:勤務間インターバル制度について解説!一定の休息時間を与え、従業員の健康被害を予防しよう
法定労働時間を超えてスタッフに時間外労働をさせるには「36協定」を事前に締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。ただし、36協定を結んでも、時間外労働には上限が設けられており、原則として月45時間・年360時間を超えることはできません。
臨時的な特別な事情があっても、年720時間以内、複数月平均80時間以内などの厳格な上限が適用されます。
また、変形労働時間制は、日々の労働時間を柔軟に設定できる制度です。1週間、1ヶ月、1年といった特定の期間を平均して、法定労働時間内に収まるように調整します。
夜勤のある職場では、特定の日の労働時間を長くし、他の日の労働時間を短くすることで、週や月の労働時間を効率的に調整できるメリットがあります。特に「1年単位の変形労働時間制」は、季節ごとの業務量の変動が大きい職場で利用されることが多いです。
ただし、導入には労使協定の締結や労働基準監督署への届出が必須で、各期間の労働時間の上限など、定められたルールを守る必要があります。
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「専用ツールの導入はハードルが高い」と感じるかもしれません。そんな場合は、まずExcelから始めてみるのがおすすめです。追加費用なしで、シフト作成の大部分を自動化・効率化できるのは嬉しいポイントです。
まずはテンプレートを試してみて、そこから自社に合わせてカスタマイズするのが基本的な流れです。
以下に代表的な関数をご紹介します。
Excelで夜勤シフトを効率化する上で、特に役立つのが「COUNTIFS関数」です。この関数を使えば、複数の条件に合致するセルの数を自動でカウントできます。例えば、特定のスタッフの「週末の夜勤回数」といった集計も簡単です。
【夜勤回数をカウントする数式例】
B1からAF2のセルに「日付」を入力し、B2からAF2のセルに「曜日」を入力します。夜勤の日は曜日の下に「夜勤」と入力してください。
B5のセルに、以下の関数を入力します。
=COUNTIFS(B3:AF3, "夜勤")
【週末夜勤回数をカウントする数式例】
B1からAF2のセルに「日付」を入力し、B2からAF2のセルに「曜日」を入力します。夜勤の日は曜日の下に「夜勤」と入力してください。
B5のセルに、以下の関数を入力します。
=COUNTIFS(B3:AF3,"夜勤",B2:AF2,"土") + COUNTIFS(B3:AF3,"夜勤",B2:AF2,"日")
このように数式を組んでおけば、シフトを入力するだけで回数が自動で集計されるようになります。これにより、手作業での数え間違いを防ぎ、誰が見ても公平なシフト作成が実現可能です。
関連記事:【テンプレート無料提供】エクセルで作るシフト表、タイムスケジュール表のコツを紹介!
夜勤シフトの作成・管理をより効率化し、スタッフの満足度を高めるためには、専用のシフト管理アプリの導入が効果的です。特に看護や介護のように24時間体制が必須の現場では、多様なニーズに応えられるアプリを選ぶことが重要となります。
単にシフトを作るだけでなく、日々の運用をスムーズにするための機能にも注目して選ぶのがおすすめです。シフト管理アプリを選ぶ際は、以下のポイントを比較してみてください。
これらの機能を比較検討し、自社の現場に最適なアプリを見つけることは、労務リスクの低減やケアの質の向上にもつながるでしょう。
夜勤シフトの作成は、単なる「組み合わせ」ではありません。なぜなら、これはスタッフの健康や生活、さらには業務の質に直結するとても大事な業務だからです。
まずはExcelの関数活用など、今日から始められる小さな改善でも構いません。大切なのは、非効率な現状を「仕方ない」と諦めずに、より良い方法を探し続ける姿勢です。
もし業務が複雑で、Excelでの管理に限界を感じているなら、本格的なシフト管理システムの導入を検討するのも良いでしょう。シフト作成が効率化されれば、生まれた時間をスタッフとのコミュニケーションや、より良い職場環境づくりに充てられます。
そこでおすすめしたいのが、シフト作成ツール「お助けマン」です。「お助けマン」なら、複雑な条件設定や法規制を自動で考慮し、公平かつ効率的なシフト表をあっという間に作成できます。
スタッフの希望収集から自動作成、共有、変更履歴の管理まで、シフト管理に関するあらゆる業務を一元化することで、担当者の負担を大幅に軽減可能です。