一般的な労働者が仕事において気にするのは、勤務時間のことではないでしょうか。何日何曜日の何時から何時までか。休憩時間は何時間か。時給または日給はいくらか。一方、シフト管理者も従業員の勤務時間に注視しがちです。
今回は、従業員の勤務と勤務の「間」、いわゆる勤務時間外の「勤務間インターバル制度」について解説します。
勤務間インターバル制度とは
勤務間インターバル制度とは、勤務終了後から翌日の始業までに一定時間以上の休息時間を設ける決まり、ルールのことを言います。
働き方改革における「労働時間等設定改善法」が改正され、2019年の4月から勤務間インターバル制度の導入が事業者の努力義務となっています。勤務間インターバル制度を導入する目的は、従業員の睡眠時間などを確保し、健康被害を未然に防ぐことが挙げられます。
出典:厚労省
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/interval/interval.html
EU諸国では勤務間インターバル制度がいち早く導入され、前日の終業時間から翌日の始業時間を11時間以上確保することを義務付けています。日本はあくまで努力義務なので、勤務間インターバル制度における休息時間の設定は事業者に委ねられます。
▼あわせて読みたい記事
シフトに困っている人に勧めたいシフト管理システム・アプリ
自動作成を特長とするシフト管理システム|導入する前に知っておくべきこと
シフト作成に特化したシフト管理システム比較|クラウドのメリットとは
勤務間インターバル制度のメリットと導入事例
次に、勤務間インターバル制度のメリットと導入事例をご紹介します。
従業員の健康維持がメリット
郊外に住みながら、東京の23区内で働く会社員を例に考えてみましょう。勤務先の通常勤務時間は平日9時始業、18時終業。仕事が立て込み、23時まで残業しました。職場近くで遅い夕食を済ませ終電に乗り、1時間かけて帰宅。就寝したのは深夜2時です。
翌日、9時の始業に間に合わせるには遅くとも7時に起きなければなりません。睡眠時間は5時間です。これでは、十分な睡眠時間が確保できたとは言えません。
11時間の勤務間インターバル制度を導入すれば、前日の終業時間である23時から11時間後、つまり10時の始業となります。十分な睡眠時間が確保できるとともに、朝の時間に余裕も生まれます。満員電車も回避できるので、精神的負荷も軽減できるでしょう。
前日の夜遅くまで働いていた従業員にとって、睡眠時間と朝の準備時間が確保されるのは大きなメリット。従業員のワーク・ライフ・バランスを整えるので、モチベーションの保持や離職抑止も期待できるでしょう。
勤務間インターバル制度の導入事例
勤務間インターバル制度を導入している日本企業はまだ一握りです。しかし、働き方改革が叫ばれる昨今、大手企業や介護業界、医療業界などへは徐々に浸透しつつあります。以下に導入事例をご紹介します。
- KDDI株式会社
KDDI株式会社は、日本における勤務間インターバル制度の先駆けです。就業規則に最低8時間の勤務間インターバル確保を取り入れ、安全衛生管理規程では11時間のインターバルを健康管理の指標としています。 - 株式会社ニトリホールディングス
家具インテリアでおなじみの株式会社ニトリホールディングスも、勤務間インターバル制度を導入。導入前は現場店舗において前日の遅番と翌日の早番が連続する際、十分なインターバル時間を確保できないケースもありました。勤務間インターバル制度を導入、インターバル時間を10時間と定めることで改善させています。 - 社会福祉法人 あいの土山福祉会 エーデル土山
介護や医療の現場で働く従業員にとっても、勤務間インターバル制度は有効でしょう。滋賀県の特別養護老人ホーム、エーデル土山は介護職、事務職すべてを対象に12時間のインターバル時間確保を義務化。「19時終業、翌朝6時始業のシフトが辛い」といった不満の声も解消されています。 - 恩賜財団済生会 横浜市東部病院
従業員1,400人超の総合病院、横浜市東部病院は必要に応じていつでも病院に出勤できる「オンコール勤務」の看護師に対して、勤務間インターバル制度を採用しました。
オンコール勤務は不定期かつ2、3時間の対応が発生します。夜間の呼び出しに対応し、その後日勤というケースもあったそうです。夜勤に関連して生じるシフトの課題は従業員同士の気遣いで調整しており、制度として曖昧な状態でした。
その後、勤務間インターバル制度を導入し「0時以降の呼び出しを受けた場合、その翌日は有給休暇の取得可」という規程を設け、正式に制度化させています。
参考:厚労省
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/interval/case_study.html
勤務間インターバル制度の「努力義務」における罰則は?
このように成功事例が見られる勤務間インターバル制度ですが、法律上は努力義務にとどまっているため、未導入企業に対する罰則などはありません。
また、勤務間インターバル制度を導入し、10時間のインターバル時間を設定したものの、従業員に所定時間の休息を与えなかった場合でも、事業者は罰則を受けません。しかし、勤務間インターバル制度を導入し、インターバル時間を定めた就業規則で雇用契約をしている場合、労働契約違反となるケースもあるので注意が必要です。
条件を設定して確実なシフト管理を
勤務間インターバル制度は、従業員が働いていない時間に着目した、新しい観点の働き方改革です。シフト管理者は従業員の勤務時間内だけを考えるのではなく、終業時間と翌日の始業時間についても気配りをすることが重要です。
シフト作成においては、シフト表自動作成ツールが効率的です。
エクセルなど手作業でシフトを作成している場合、11時間の勤務間インターバルが導入されると一人ひとりの終業時間と始業時間をチェックしなければなりません。その作業に気を取られ、数日間の人員が確保できなくなる可能性もあります。
シフト表自動作成ツールは「遅番の勤務の翌日に早番の勤務を禁止にする」と設定するだけ。間違いなくスムーズにシフト表に適用されます。シフト表自動作成ツールは、適正人数や休日回数の確認だけでなく、あらゆる条件を設定し、企業にあったシフト表にカスタマイズできるという利点があります。
「勤務シフト作成お助けマン」は、条件が複雑に絡むシフト表を、スタッフの希望に従って自動作成できるクラウドサービスです。わかりやすく説明をしている動画もご用意しておりますので、是非ご視聴ください。