勤務シフトによる管理を行っている職場では、報酬など待遇面とともに、およそ希望にそったシフトで働けるかどうかが、従業員の満足度を大きく左右するところとなります。無理なく、働きたいタイミングで働ける環境は、労働者にとって理想であり、満足度の高いものとなることはすぐに理解されるでしょう。しかし、従業員全員が完全に満足のいくシフトで回すということはきわめて困難で、現実には不可能なことがほとんどです。
業務を遅延させることなく進める、店舗運用に支障をきたさない計画を立てる、その観点から調整を行う管理者は、必要に応じてシフト変更を依頼するなど、諸対応をとらねばなりません。希望と異なるシフトを受け入れてもらうには、それなりの進め方や工夫が必要です。ただやむを得ないからと一方的に変更し、それを押し付けるやり方では当然、従業員の不満が蓄積され、生産性の低下や離職率の上昇を招いてしまうでしょう。人間関係や職場の環境そのものも悪化してしまいます。
シフトの管理・作成者は不満を誘発するシフト作成を避け、平等で納得しやすいシフトの計画・管理を行っていくことが大切です。今回は、そうしたシフト希望の上手な調整法、従業員の不満をためないシフト作成について考えていきましょう。
従業員が不満に思うシフト例
まず、どのようなシフトが従業員の不満を呼ぶもととなるのか、具体的に考えてみましょう。
早番・遅番の組み合わせ
早番や遅番と呼ばれる時間帯のシフトをどう組み込むかは、作成において大いに問題となりやすいポイントです。日中時間帯での勤務しかできないスタッフもあるなど、対応できる従業員が少ない場合も多いと考えられますが、前日に遅番で帰宅が深夜となり、くたくたに疲れているのに翌日は早番で朝一の出勤といったことが重なると、不満がつのるのはもちろん、従業員の健康面にも悪影響を及ぼしやすいため、注意が必要です。
2019年4月からは、勤務間インターバル制度も導入され、勤務終了時刻から次の始業時刻までの間隔を十分にとること、それによって休息や睡眠時間をきちんと確保できるようにし、従業員の健康被害を未然に防ぐことが事業者の努力義務ともなりました。
一律のルールや罰則などの法的な拘束はありませんが、従業員の職場定着率や満足度向上、生産性の面でも、繰り返し遅番と早番が続くようなシフトは組まないようにすべきです。また、早番や遅番がどこに位置しているかもポイントです。例えば休日の前日が遅番であったり、休日の翌日が早番であったりすると、休日の過ごし方にもある程度の制約がかかってしまいます。反対に、休日の前日が早番で、休日の翌日が遅番であるなら、貴重な休日を丸々自由に使える、有効活用できると感じやすくなるでしょう。
休日前後の早番や遅番がどう組み合わせられているか、その点に従業員間で偏りがあったり、せっかくの休日がいつも削られているように感じられるシフトであったりすると、不公平感や不満をおぼえる従業員が多くなってしまいます。
月替わりで生じる遅早よりも過激なシフト
手作業でシフト作成を行っている場合、月単位で確認しながら作業を行うことが一般的であり、前月データと連結したチェックが行き届かないケースが大半となることから、気がつかない間に月をまたいで過酷な勤務シフトを求めてしまう場合があります。
最大5連勤という決まりがあるのに、前月末に3連勤、今月の月初めが4連勤などと組んでしまうと、その従業員は7連続勤務を強いられます。また、先述の遅番と早番の組み合わせを月またぎで生じさせてしまう、前月末が遅番でその月の初めが早番の割り当てといったケースも、意識的でなく生んでしまう場合がしばしばあり、実際に働く従業員には不満となりやすいため、注意が必要でしょう。
シフトへの希望反映に偏りがみられる
シフトを組む側には、特段の意識がなかったとしても、従業員の側では他のスタッフと自身の扱いに差があるのではないかと思ってしまう、比較して不公平だと感じてしまうことは少なくありません。
本人が希望している場合は別ですが、いつも特定の従業員に夜勤が多い、遅番または早番が回りやすいといった状況があると、必ず不満が生じます。また、休日の回数だけを意識し、平等にしたと考えていても、実際は土日祝日にどの程度休みが当たっているか、連休が何度とれているかといった点に差がある場合、従業員にしてみれば公平でないと感じるでしょう。
今月はしっかり稼ぎたくて希望シフトを出したのに、ほとんど入れていない、逆に、都合がつきにくいと申し出ておいたのに、普段よりもきついシフトが組まれている、あの人の希望は通っているのに私の希望は通らない、そうしたことの重なりは従業員の不満を大きなものにしてしまいます。
勤務の並びの差がある
とくに極端な遅番、早番がある職場、夜勤のある職場などで注意したいポイントとして、始業時刻の順がどうなっているかという点があります。
正循環勤務と呼ばれる、始業時刻が徐々に後となっていく流れ、早番から中番、遅番で勤務する方が身体への負担が少なく、反対の逆循環勤務とされる徐々に始業時刻が早まっていく流れ、遅番から中番、早番となるシフトはきつく感じられることが一般に知られています。これは人間の体内時計が25時間周期でできており、1日の24時間とそもそもずれがあるためと言われ、前倒しになっていくよりも、後ろに倒れていく方が楽、体調を自然に合わせやすいからとされます。
よって、シフトを組む際には、従業員個々の勤務並びが正循環になるよう配慮することが推奨されており、逆循環勤務の発生には注意が必要です。このように機械的に回数だけの平等を実現しても、そのシフトによって感じられるきつさの度合い、個々の負担には違いが生ずることがあります。生活リズムと合わないシフトの押し付けは、従業員の不満のもとであり、我慢を強いれば健康被害につながりやすくなります。
このほか、人間関係やスキル面の問題から、いつも特定の人と一緒のシフトになることを嫌い、満遍なく組み合わされるかたちにならないことを不満に思うケースや、そもそもシフト発表のタイミングが遅いことに不満があるケースなどもあります。
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問題のあるシフトが及ぼす影響
どんなに工夫してシフト組みを行っても、従業員全員の希望を全て叶えることはできません。細やかな配慮と希望を汲んで作成しても、何らかの不満がどこかに出てくることは避けられないでしょう。そのような事実が実際にはなくても、自分ばかり不公平に扱われている、あの人のシフトはいつも楽そうといった思いを抱く従業員が出てくるケースもあります。
シフトの管理・作成者は、ある意味でこうした従業員の不満を受け止める役目、それと付き合っていく立場にあるといっても過言ではありません。しかし、実際に複数の従業員に不満が蓄積していくような、シフト作成のあり方そのものに問題が認められる状況を放置する、不満が生ずるのは仕方のないことだからと改善を図ろうとしないといった態度は、やはり大きな問題です。
不満を放置した問題のあるシフトでは、従業員の士気が低下し、生産性の低下や離職率の上昇、変更願・欠勤の増加といった事態が生じやすくなります。こうした事態が発生すれば、業務や店舗運営に支障が出たり、繁忙期に対応できなくなったりして、収益にも悪影響が及ぶでしょう。職場の雰囲気も悪くなり、トラブルやミスが増加する原因にもなります。
急な欠勤で穴が空けば、人員補充を行う必要がありますが、それもたびたびでは上手くいきません。人件費が余分に生じたり、業務が回らなくなったりするほか、シフト管理と調整を行う側の負担も過大となり全てが悪循環で非効率的、手間と時間だけが浪費されていくということになりかねません。
経営面にも悪影響を及ぼすところとなるほか、従業員の健康被害、労働災害を発生させてしまうリスクも高まります。問題のあるシフトは、あらゆる面で事業の根幹を揺るがす元となりかねないのです。
納得感あるシフト作成のコツ
全員が全てに満足するシフトを完成させることは不可能ですが、不満を最小限に抑える工夫を施すことは可能です。より良い、納得感あるシフトを効率良く作成するためのコツをまとめました。
希望収集時の工夫
完成したシフトに不満が集まらないようにするには、希望収集時から工夫を施すことが重要です。まず、希望休みの上限日数などルールを定める場合にはその旨了解を得て、提出期限を明示、全員から確実に希望の提出を受けるようにしましょう。ある程度早めに回収を終え、シフト表の確定発表から開始当日までにも余裕がもてるようにすることが大切です。ぎりぎりの発表では調整や変更交渉が難しく、管理側も従業員側も困難に直面し、無理をしなければならなくなるため、どうしても業務支障や不満が生じやすくなります。
また、希望の提出と管理は一元化し、透明性を図りましょう。管理システムの機能などを活用し、専用アプリで提出させたり、クラウドシステムへ入力を要請したりすれば、提出時のミスや情報の行き違いを防げ、シフト管理・作成者の負担も大幅に軽減されます。一括データをもとに処理することで正確なシフトを組みやすく、互いの確認作業もスムーズになるからです。
勤務日や勤務時間は公平性を意識する
従業員個々に背景事情は異なり、希望する勤務時間や日数にも違いがありますが、雇用時の契約で確認した条件、扶養内を希望、週3日程度の勤務希望などを満たすようにしつつ、同条件下ならば、勤務日や勤務時間に差が出ないシフトとしましょう。
勤務日の並びや、休日があたる日が土日祝日か平日か、遅番・早番を担当する回数、遅番や早番と休日の組み合わせ、連続勤務となる時間数など、単純な日数、時間数だけでなく、多角的に偏りがないかチェックしながら、全従業員にとって可能な限りの平等が確保されているように設定します。
希望には可能な限り柔軟に添う
年末年始や夏休みシーズンに休日の希望が集中したり、学生アルバイトなどであれば試験期間前から休日希望が増えてシフトが埋まりにくくなったりと、全ての従業員の希望を叶えることはできませんが、可能な限り、それぞれの出勤希望日と希望休に合った作成を目指しましょう。
場合によっては人員として余る、シフトを削りたい日も出てきますが、働きたいタイミングでは働けないのに、休みたいところでは無理に出てこさせるのか、といった思いを抱かせると、大いに不満と不信感をつのらせることになり、その従業員との間の信頼関係を傷つけてしまいます。
可能であれば、やや余分でもシフトを入れて余裕をもたせる日を作ったり、休日希望が重なっているケースなら希望の優先順位をあらためて聴取し、優先順位の低いところでは変更を要請、別に休日をとってもらうようにしたりといった工夫をすると良いでしょう。
できる限り希望に添う姿勢を見せた取り組みがあれば、信頼関係が醸成され、緊急時にヘルプで入ってもらうといったことも頼みやすくなりますし、同じシフトでも不満が軽減されたり、満足度が高まったりする可能性が出てきます。
スキル等を意識して人員配置を工夫する
基本的には希望に添ったシフト作成としますが、業務遂行や店舗運営をスムーズにするためにも、人間関係を良好に維持する面でも、人員配置、従業員の組み合わせグループを意識しながら組むことが理想的です。
やや相性が悪く同じシフトに入れると、従業員の不満につながりやすいような注意すべき組として情報を得ているセットが繰り返し発生していないか、それらの組み合わせによるシフトは最小限に抑えられているか確認しましょう。こうした情報を正しく入手するため、日頃から従業員同士の人間関係に注目しておいたり、従業員らから相談を受け付け管理側でその情報を共有するといった仕組みを構築しておいたりすることも必要です。
また、対応できる仕事の範囲やスキルレベルが異なる、新人とベテランなど、個々のパフォーマンスを加味し、バランスのとれた配置とすることもポイントです。単純な頭数、機械的な繰り返しではなく、スキルを中心に考え、人数を調整したり、新人とベテランが組むことでサポートや学びが自然に促されるような組み合わせとなるようにしたりして、シフトを完成させていきましょう。そうすれば従業員の不満を低減させられるほか、業務水準や店舗サービスの平準化、従業員の能力向上を実現しやすい流れと環境が生まれます。
余裕のあるシフトを組む
経営面では、最低限の人員で維持・運用を図りたいところですが、余裕のないシフトの場合、何らか突発的な問題が発生すると、従業員に過剰な負荷がかかったり、緊急の欠員補充が必要になったりすることが考えられます。カバーできなければ、業務にも支障が生じますから、できるだけ余裕のあるシフトとしておくことが望まれます。
もちろん、常に大幅に余裕をもったシフトとすることはできません。人件費面などの制約もあります。しかし、あまりに余裕がなく、ぎりぎりのラインで回しているシフトでは、たびたび無理難題への対応を迫られたり、想定していなかった労働提供で忙殺されたりといったことが発生し、従業員の職場不満が蓄積されやすくなります。1人の穴が大きく影響するため、やむを得ない事情での欠員に応援を要請することも欠かせず、予定外のシフト入りをしなければならないことも多いなどとなれば、さらに不満を抱くもととなるでしょう。
予想外の損害を防ぐためにも、従業員のシフト不満を大きくさせないためにも、一定以上の余裕をもって組んでおくことがポイントです。
コンプライアンス遵守を徹底する
当然のことですが、シフトの内容が労働基準法に違反するものとなっていないか、雇用契約や就業規則から外れていないか、十分に確認することが大切です。シフトの作成・管理は複雑な作業で、さまざまな調整要素を加えている間に、担当者が気づかぬまま、過大な時間外労働やルール超過の連勤、休日の不足などの問題を生じさせてしまうことがあります。
こうしたコンプライアンス違反を放置すると、従業員らとの信頼関係が崩れ、雇用側への不満も大きくなります。無理にシフトをこなした結果、従業員に健康被害が及ぶ危険もあるでしょう。それらが大きな問題として明るみに出れば、会社全体の信用も失われます。
コンプライアンスの遵守は徹底するものとし、シフト作成時には、仮案の段階で複数人でのチェックを行うなど、問題が見逃されないようにしておくことも重要です。
情報共有とコミュニケーションの深化
可能な限りの配慮を行い、従業員の希望に添うシフトを目指したとしても、全ての希望を叶えることは不可能ですから、常に全員に最高レベルの満足を得てもらうことは難しいでしょう。しかし、やむを得ない措置として、希望通りとはならなかった部分が生じたこと、それぞれの背景事情を汲んで、可能な範囲で担い合うよう負荷の平等な分散が図られていることが明確に理解できれば、従業員も強い不満を抱くことはなくなり、一定の理解を示してくれるはずです。
そのために重要なのは、丁寧な情報共有と日頃からのコミュニケーションによる信頼関係構築です。シフトの発表がいつも直前であったり、紙媒体で管理しているなど職場に足を運ばなければシフト確認が行えなかったり、情報の共有がスムーズになされていないと、従業員もスケジュールの都合をつけづらく、度々急な対応や無理を迫られるために、振り回されてばかりいる気持ちになり、不満を抱いてしまうものです。
オンラインシステムやアプリで情報共有をスムーズにし、シフト作成者側の管理負担も軽減されるように改善すれば、お互いに働きやすい環境を維持しやすくなります。ミスの低減にも役立ちますから、情報共有という観点から管理体制そのものを見直してみることも有効でしょう。
また、従業員が本音を伝えやすく、管理側は個々の事情がよく分かっているといった日頃のコミュニケーションが密にできているケースでは、シフトへの不満も最小限に抑えられます。不公平感や不満は、そもそも連絡・情報の行き違いや、人間関係の問題に起因することが少なくありません。
しっかりと日々のコミュニケーションが深められており、互いが協力しながら業務を進めていく、シフトを回していくという積極的な気持ちを持てる環境となっていれば、愛社精神や責任感も醸成され、生産性の向上、職場定着率や満足度の改善・上昇が見込めるほか、シフト作成時にどうしても生じてしまったしわ寄せに納得してもらったり、急な欠員が出てシフトの変更や見直し、ヘルプを要請したりしなければならなくなった場合にも、対応してもらいやすくなります。
ともに働く人間同士であることを踏まえ、ソフト面のコミュニケーションも充実させるようにしましょう。
まとめ
いかがでしたか。従業員がどのようなシフトであった場合に不満を抱きやすくなるのか、作成にあたりどのような改善策をとっていけば、不満を解消でき、職場満足度を向上させられるのか、主なポイントを解説してきました。
シフトの作成・管理は、複雑で手間のかかる作業ですが、事業運営にかかる非常に重要なものであり、それが上手く行えているかどうかが、職場環境を大きく左右するところとなります。現在の方式で多大な労力を要していたり、手間をかけたにもかかわらず従業員とのやりとりが上手くいっていない、不満が多く寄せられているといった状況があったりと、悩みを抱えられているなら、ぜひ本記事の内容も参考に見直しを進めてみてください。
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