2025年問題とは?

「2025年問題」とは、2025年を境に日本の高齢者人口が急増し、社会に様々な影響をおよぼす問題です。総務省によると、2023年時点で75歳以上の人口は2,000万人を超えており、総人口に占める高齢者人口の割合は 29.1%となっています。
そして2025年は、1947〜1949年生まれの「団塊の世代」と呼ばれる全員が後期高齢者となります。この問題は単なる高齢化の問題にとどまらず、医療、介護、労働力不足など社会全体の構造に影響を与える深刻な課題です。
そのため企業や自治体が適切に機能するための体制構築が急務となっているのです。
2025年問題と2040年問題とは別?
「2040年問題」は2025年問題をさらに進めた形です。2025年問題は団塊の世代の後期高齢化が進み、社会のインフラや福祉、労働力に具体的な影響が出始めるタイミングを指しています。
それに対し2040年問題は、65歳以上の高齢者が全人口の約40%を占めることが予測され、人口構造が今よりもさらに変化すると懸念されている問題です。社会問題はより深刻化し、長期的な視点での対策が求められます。
つまり2025年問題が「目前の課題」であるのに対し、2040年問題は「将来の課題」と言えるでしょう。両者は時間軸の違いはありますが、根本的な原因は高齢化の進行という点で共通しています。
2025年問題と2025年の崖とは別?
「2025年の崖」は経済産業省が提唱した概念で、企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しない場合、2025年から2030年の間に年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると推測される考えです。
これは、IT人材の不足や老朽化した基幹システムを使い続けることによるリスクを指しており、2025年問題とは別の文脈で用いられます。
ただし、労働力不足を補うためのDX推進という点では、両者は関連性を持つと言えるでしょう。つまり、2025年問題は人口動態の変化、2025年の崖はITシステムの課題に焦点を当てているのです。
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2025年問題が社会におよぼす影響

2025年問題により社会の高齢化が加速すると、社会の様々な側面に影響をおよぼし、企業や地域社会が機能しにくくなることが予想されます。それらの対策を考えるためには、具体的にどのような影響があるのかを把握しておきましょう。
2025年問題の影響①労働人口の不足
労働人口の不足は、2025年問題の中で最も深刻な課題の一つです。後期高齢者の増加に伴い、労働力の中核となる生産年齢人口が減少し、様々な産業で人手不足が深刻化します。
これは経済活動の停滞を招く可能性があり、特に医療・介護分野では需要の増加に対して供給が追いつかず、サービスの質低下や提供体制の崩壊が懸念されます。
企業においては人材確保がますます困難になり、事業運営に支障をきたす可能性もあるでしょう。そこで従業員の定着率向上、シフト管理や労働環境の改善など労働人口不足を緩和する施策が求められます。
2025年問題の影響②後継者不足による廃業
後継者不足も、2025年問題が引き起こす大きな課題の一つです。特に中小企業においては、経営者の高齢化や人材不足に伴い後継者が見つからず、2025年以降は廃業に追い込まれるケースが増えると予測されています。
これらは地域経済の衰退や雇用の喪失を招くだけでなく、日本社会全体の活力低下につながりかねない問題です。円滑な事業継承につなぐためには、企業は事業継承計画を早期に立て、後継者の育成、M&A(企業買収・合併)の活用なども検討する必要があります。
2025年問題の影響③医療費の増加
2025年問題において、医療費の増加は避けられない現象です。高齢化が進むことで慢性的な病気や介護が必要な高齢者が増加し、医療費は膨らむ一方、働く世代の減少により保険料や税収の減少が見込まれます。
このため、医療制度の維持が困難となり、適切な医療サービスの提供に支障が出る可能性があります。さらに、医療の質を維持するための人的資源の不足や、医療機器の老朽化といった課題も影響をおよぼします。
これらの問題を解決するためには、予防医療の推進や医療・介護業務の効率化、IT技術の活用など医療費の抑制に向けた取り組みが求められるでしょう。
2025年問題の影響④医療・介護サービスの体制維持が困難に
高齢者の増加に伴い、介護施設や医療機関への需要が急増しますが、その一方で、介護職や医療従事者の不足が深刻化しています。その結果、医療・介護サービスの体制維持が困難になることも2025年問題の影響の一つです。
適切な医療・介護サービスを受けられない高齢者が増えると、生活の質の低下を招くことが懸念されます。
この問題を解決するためには、介護ロボットやAI技術の導入、働き方改革、さらに介護従事者の待遇改善が不可欠です。また、企業で従業員向けに医療・介護支援を行うことも、社会全体での負担軽減につながります。
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2025年問題の解決に向けて国が行う対策

国は2025年問題に対し、高齢化に伴う社会的な負担を軽減する解決に取り組んでいます。どのような取り組みが行われているかをみていきましょう。
公費の負担を見直す
公費の負担見直しは、2025年問題解決に向けた重要な施策です。具体的には、給付と負担の見直しや医療・介護サービスの効率化が議論されています。
今回の介護保険法の改正においては、75歳以上でも一定以上の収入がある人に対して医療費負担額を2割に引き上げ、低所得者の負担を軽減する見直しが行われました。また医療のデジタル化や遠隔医療の推進、介護ロボットの導入など、テクノロジーを活用した医療・介護の効率化も進められています。
さらに、現役世代の生活を圧迫しないよう持続可能な社会保障制度の構築を目指して多角的に検討されています。
医療・介護人材の早急な確保
医療・介護人材の確保は、2025年問題を解決するために急務とされる課題の一つです。
医療・介護現場は、需要と供給のバランスが取れにくくなっており、厚生労働省によると介護業界では2025年に約38万人の需給ギャップが生じると推計されています。
これらを解決するためには、賃金アップ、離職せずに子育てしながら働ける環境など従業員の待遇を改善する、教育や研修を充実させる、IT技術を使った業務効率化を進めるといった対策が考えられています。
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地域包括ケアシステムの構築
地域包括ケアシステムの構築は、高齢化社会に対応し生活の質を向上させるQOL(クオリティ・オブ・ライフ)につながる対策です。地域包括ケアシステムとは、医療、介護、福祉などが連携し、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を送れるよう地域全体で支援する仕組みです。
地域包括ケアの実現に向けては、地域医療・介護施設のネットワークを強化し、在宅での医療・介護サービスの提供を充実させる取り組みが行われています。
また自治体が企業や学校と連携した支援体制の構築、地域交流イベントなど独自の取り組みを行い、高齢者やその家族のQOLを目指しているところもあります。
2025年問題の解決に向けて企業ができること

国としての対策だけでなく、企業も2025年問題の解決に貢献できます。どのような取り組みが実施できるか、そのポイントを紹介します。
多様な働き方を推進する
高齢化が進むにつれて、働く人々のライフステージや価値観は多様化しています。こうした状況下で多様な働き方を推進することは、企業が2025年問題に対応するために実行すべき重要な対策の一つです。
例えば、テレワーク、フレックスタイム制度、シフト勤務といった多様な働き方を導入・推進することで、企業は人材不足の緩和と労働力の確保につなげることが期待できます。一方、労働者にとっては、ワークライフバランスを維持しながら就労機会を拡大できるというメリットがあります。
ビジネスケアラーを支援する
ビジネスケアラーとは、仕事を持ちながら家族の介護を行っている社員のことです。経済産業省によると、2030年には家族介護者は833万人、うちビジネスケアラーは318万人と推測されています。
これは全体の介護者の約40%を占めており、介護に伴う離職や労働生産性低下による経済損失は9兆円を超えると算出しています。
そのことから企業では、介護休業や柔軟な勤務時間の導入、社員のメンタルヘルス支援などビジネスケアラーが仕事と介護を両立できるようなサポート体制を整備することが重要です。
ビジネスケアラーの支援は、離職の防止や生産性向上、結果的には企業の利益につながります。
早いうちから事業継承の計画を立てる
2025年以降、経営者の高齢化や労働力不足などにより、廃業が増加すると予想されています。そのため、地域経済や雇用の維持が困難になる可能性が考えられるでしょう。対策として企業は、早期に事業継承計画を立て次世代のリーダーを育成することが不可欠です。
事業継承計画を早期に策定し、後継者の育成や必要な経営スキルの継承に取り組むことが求められます。後継者の確保が難しい場合、M&A(企業買収・合併)を活用することも有効な選択肢となります。事業継承に向けた準備は、企業の持続的な発展と安定を支えるために欠かせません。
まとめ

2025年問題は、高齢化が進む日本社会にとって避けては通れない重要な課題です。国だけでなく、企業も地域社会全体に協力し、様々な対策を講じていくことが求められます。
それぞれの立場でできることを考えて実行していくことが、持続可能な社会の実現につながると言えるでしょう。
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