変形労働時間制はわかりにくいと感じている方は多いのではないでしょうか。変形労働時間制には4つのパターンがあり、各パターンごとに残業の扱いが異なるため、仕組みを把握することが重要です。
今回の記事では、変形労働時間制の4つのパターンをわかりやすく解説しています。さらに、なぜやばいと思われているのかや、制度を効果的に活用するためのポイントも紹介しています。シフト管理にお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
4パターンの変形労働時間制
変形労働時間制には以下の4つのパターンがあります。
これらのパターンについて、それぞれの特徴や適用例、注意点について解説します。
1週間の変形労働時間制
1週間の変形労働時間制は、主に従業員数が30人未満の小規模事業で採用されます。飲食店やサービス業種、小売業などがこれに該当します。
この制度では、1週間単位で労働時間を調整することが可能であり、需要の変動が日々ある場合に有効です。週40時間を労働時間の上限とし、1日あたりの労働時間は最大で10時間までとなります。規定を超過した場合は割増賃金が支払われ、労働時間は1週間前までに通知されます。
1日単位で忙しさが異なる職種に適しており、需要が予測しにくい業種や季節的な変動がある業界で採用されています。例えば、観光地やイベント会場周辺の飲食店や小売店などが代表例です。
1ヶ月の変形労働時間制
1ヶ月の変形労働時間制は、法定労働時間が1ヶ月の日数によって変動する制度です。具体的な変動内容は次の通りです。
1ヶ月の日数 |
法定労働時間 |
28日 |
160.0時間 |
29日 |
165.7時間 |
30日 |
171.4時間 |
31日 |
177.1時間 |
1ヶ月単位で法定労働時間内に収めれば、1日あたりの労働時間や休日日数の制限はありません。
例えば、第1週から第3週までは1日あたり7時間の労働時間が設定され、最後の週では10時間の労働時間にするなど、柔軟な対応が可能です。業務量の変動に応じて労働時間を調整し、従業員の負担を軽減できるでしょう。
この制度は、需要が一定ではない業種で効果的です。例えば、観光地のホテルやレストランなどでは、観光シーズンやイベント時に需要が高まり、それ以外の期間は需要が低下する傾向があります。
このような場合に、1ヶ月の単位で導入することで、需要に合わせて労働時間を柔軟に調整可能です。
繁忙期には長時間労働を行い、閑散期には労働時間を短縮することで、従業員の健康やワークライフバランスを保ちながら、企業の業績を安定させることができます。
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1年の変形労働時間制
1年の変形労働時間制は、1年間で平均して週に40時間の労働時間が上限となる制度です。この制度は、1年を通して時期によって業務量が大きく変動する繁忙期と閑散期が明確な場合に採用される傾向にあります。
例えば、リゾート地のホテルや農業など季節的な需要が大きく変動する業種が対象です。
労働時間の制限として、1日あたりの労働時間は最大で10時間までとし、連続勤務は6日までにしなければなりません。この制限により、極端なシフトを組むのが防げるため、従業員の健康や労働条件の保護が図られます。
1年の変形労働時間制は、労使双方が労働協定を結び、その内容を労働基準監督署へ提出しなければなりません。労働基準監督署は、提出された労使協定を審査し、法令に適合しているかを確認します。
この制度の利点は、繁忙期には労働時間を長くし、閑散期には労働時間を短縮することで、業務量に応じて柔軟に対応できる点です。
フレックス制
フレックスタイム制は、労働者が自身の仕事の進捗状況に応じて、出勤や退勤の時間を柔軟に決定できる制度です。
フレックスタイム制では、あらかじめ特定の期間の総労働時間上限を設定しておきます。1日の労働時間が8時間を超えても、また特定の週の労働時間が40時間を超えても問題はなく、それらは残業の対象とはなりません。
ただし、あらかじめ決めた期間全体を清算し、平均して週の労働時間が40時間を超えた場合は残業の対象となります。この制限によって、労働時間の過重な増加を防ぎ、労働者の健康とワークライフバランスを確保します。
フレックスタイム制は、繁忙期と閑散期の差が大きい業種で採用されることが多く、例えばITエンジニアなどの職種で採用されていることが多いです。
IT業界ではプロジェクトの進行状況やクライアントの要求に応じて業務時間が変動することが多く、フレックスタイム制が適しています。
変形労働時間制がやばいと言われる理由は?
変形労働時間制がやばいと言われる理由として、所定労働時間が明確でないことが挙げられます。
変形労働時間制は、特定期間内の平均労働時間数が所定労働時間とされるため、従業員は実際に労働している時間を正確に把握できません。
その結果、法定労働時間を超える可能性や、残業代の計算が複雑化するというデメリットが生じます。
法定労働時間以上になる可能性がある
変形労働時間制の問題の1つは、法定労働時間を超える可能性があることです。
この制度では、1日の労働時間が柔軟に設定されるため、従業員が実際に働いた時間や残業の有無を正確に把握することが難しくなります。
本来、法定労働時間以上を割増賃金なしで働かせることは法律違反です。しかし、複雑な労働時間の計算や所定労働時間の曖昧さから、実際には法定労働時間以上を働かせてしまうこともあるでしょう。
また、企業が設定する就労規則上の所定労働時間が法定労働時間以上となっている場合もあるため、注意しなければなりません。
労働者が過労で健康を損なうリスクや、企業が法的トラブルに巻き込まれるリスクが高まるため、変形労働時間制の運用には慎重な対応が必要です。
残業代の計算が難しい
例えば、1週間単位の変形労働時間制では、週を通じた労働時間が基準となりますが、1ヶ月単位や1年単位の制度では、より長期間にわたる労働時間の均等化が求められます。
残業代の計算が難しいと、従業員と企業の間でトラブルが生じる可能性があります。正確な残業代の支払いが行われない場合、従業員の不満や労働組合との対立が生じ、企業の信頼や労使関係に悪影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
変形労働時間制を正しく運用するためにはどうしたら良い?
変形労働時間制を正しく運用するにはどのように対処すれば良いのでしょうか。次の2つのポイントに留意する必要があります。
以下では、これら2つのポイントについて解説します。
変形労働時間制ではシフト変更がNG!正しく作成
労働時間が適切か自動で計算できるようなシフトにする
適切な労働時間を確保するために、自動で計算できるシフトを組むことが重要です。複雑なシフト作成は管理側の負担を増やし、さらにトラブルの原因になりかねません。労働時間が適切かどうかを確認し、法令を遵守したシフトを作成することが必要です。
自動シフト作成ツールを導入することで、労働条件に合わせて効率的にシフトを作成できます。職種ごとに異なる勤務状況に対応し、カスタマイズされた勤務条件に基づいて効率的にシフトの作成が可能です。
また、法令を遵守したシフトの作成も重要になります。自動シフト作成ツールは労働時間や法令に基づいてシフトを作成し、適切な労働条件を確保します。これにより、管理側の負担を軽減し、法令違反やトラブルのリスクを未然に防ぐことができます。
適切なシフト表は自動作成サービスで
今回の記事では、変形労働時間制について解説しました。変形労働時間制にはフレックス制を含めた4つのパターンがあります。それぞれが残業の対象となる時間が異なるため、変形労働時間制を採用する際にはその仕組みを理解しておくことが重要です。
変形労働時間制では所定労働時間の把握が難しく、法定労働時間を超える可能性や残業代の計算の複雑さが課題となります。法令を遵守していないシフトや、残業時間が正しく支払われない場合、トラブルが発生する可能性も考えられます。
そこで、自動でシフトを作成できるツールを導入することで、各従業員の勤務条件に合わせた正確なシフト作成が可能になります。これにより、トラブルの発生を防ぎ、効率的なシフト管理が行えるでしょう。導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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