「毎月のシフト作成に時間がかかりすぎる」
「従業員の希望を調整しきれず、不満の声が上がってしまった」
シフト作成の担当者なら、きっと一度はこんなことで頭を抱えたことがあるはずです。
実は、シフト作成は単なる割り当てではありません。従業員の満足度や人件費、ひいては店舗全体の生産性を左右する、非常に重要なマネジメント業務なのです。勘や経験だけに頼ったその場しのぎの作成方法を続けていると、いつか必ず限界が訪れます。
そこで本記事では、シフト作成の定義や基本ルールといった基礎知識から、具体的な5つの改善ステップ、Excelや専用ツールを使った効率化のコツ、そして担当者が知っておくべき法律までを解説します。
この記事を最後まで読めば、みません。誰が担当しても公平でうまくいく、そんな「勝ちパターン」が見つかります。
シフトとは、日ごとや時間帯によって変動する従業員の勤務時間や配置を定めた勤務割を指します。シフトを作成する上で、必ず守らなければならないのが「労働基準法」で定められた労働時間のルールです。
具体的には、労働時間は原則として「1日8時間、週40時間以内」と定められています。これを超えて時間外労働(残業)を命じる場合には、事前に労働者と使用者で「36協定」を締結する必要があります。さらに、労働基準監督署長への届出も必須です。
「知らなかった」では済まされないのが法律です。シフト担当者は、まずこの大原則をしっかり頭に入れておきましょう。
シフト作成は、単に希望を並べるだけではうまくいきません。効率的かつ公平なシフトを実現するために、以下の5つのステップで計画的に進めましょう。
この過程全体を通して、労働基準法で定められた労働時間の上限や休日のルールを遵守することが大前提となります。
厚生労働省|36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針
「なぜか毎月シフト調整に時間がかかる」「従業員から不満の声が絶えない」といった悩みを抱えていませんか。もし当てはまるなら、一度やり方を見直してみましょう。
以下のリストで、シフト作成がうまくいかない原因をチェックしてみてください。
一つでも当てはまったら、今のやり方を見直すチャンスです。
シフト作成で最も避けたいのが、従業員から「不公平だ」という不満が噴出することです。そんな事態を避け、みんなが気持ちよく働けるようにするには、「公平さ」を考えたシフト作りが欠かせません。
具体的には、まず希望休のルールを明確に定め、従業員全員にしっかり伝え、ルールを守ってもらうことが大切です。「早い者勝ち」「理由は問わない」など、誰が見ても公平な基準を設けましょう。
また、土日祝日の勤務や負担の大きい業務が、特定の人に偏らないように注意しましょう。そのために、勤務回数や内容を記録し、ローテーションを組むといった工夫も有効です。シフトの決定理由をある程度オープンにすることも、不満の解消につながるでしょう。
関連記事:シフトが偏ってる?働く人から文句が出るような問題のあるシフト表を作成してしまう原因と解決策
多くの職場でシフト作成にExcelが使われています。Excelは手軽に始められるため、小規模な事業所やシンプルなシフトには非常に便利です。
Microsoft公式でも、勤務表やカレンダーのテンプレートが豊富に提供されており、これらを活用すれば初期設定の手間を省けます。しかし、従業員数や拠点が増え、シフトが複雑化すると、手作業での調整やエラーのリスクが高まります。
短期的な運用であれば、Excelでも十分対応できます。しかし、店舗の拡大や頻繁なシフト変更が必要になった場合は、専用のシフト管理アプリへの移行を検討すべきタイミングです。
Excelでのシフト作成を一段階レベルアップさせるには、テンプレートと関数を組み合わせた「半自動化」が効果的です。
いくつかの関数を追加するだけで、手作業によるミスを大幅に削減できます。例えば、COUNTIF関数を使えば、従業員ごとの「早番」「遅番」「休み」の日数を自動でカウントでき、勤務の偏りを一目でチェック可能です。
また、「条件付き書式」を設定し、土日や特定の勤務時間に自動で色を付けるようにすれば、視覚的にシフトのバランスを確認しやすくなります。「データの入力規則」機能で入力できる文字を「早番」「遅番」などに限定すれば、入力ミスそのものを防ぐことも可能です。
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現在Excelでシフト管理を行っている場合、Microsoft Teamsの「シフト」アプリへの移行が最もスムーズでおすすめです。
これまで使い慣れたExcelファイルを活用して、データをインポートできるため、現場の抵抗感を最小限に抑えながら、より高機能なシフト管理へとスムーズに移行できるでしょう。
具体的な手順として、まずTeamsのシフトアプリからサンプルExcelファイルをダウンロードします。そして、その形式に合わせて現在のシフト表のデータをコピー&ペーストしてください。そして、そのファイルをシフトアプリにアップロードするだけです。
よくある失敗例として、サンプルファイルの列の項目(氏名、日付など)を誤って編集してしまい、インポート時にエラーが出てしまうケースがあります。インポート前には、必ずMicrosoftの公式手順を確認しましょう。
そして、サンプルファイルと見比べながら慎重に作業を進めることが、失敗しないためのコツです。
シフト作成ツールの導入を検討する際、何から手を付ければ良いか迷う方も多いでしょう。多くのツールが存在しますが、自社に最適なものを選ぶには、いくつかの必須機能と比較軸を理解しておくことが大切です。特に注目したいのは、以下のポイントです。
交代申請・休暇申請機能
従業員がアプリから直接申請できるか
通知機能
シフト確定や変更、承認状況が自動で通知されるか
権限管理機能
管理者、リーダー、一般従業員など、役割に応じた操作制限が可能か
監査ログ機能
誰がいつ、どのような操作を行ったか記録が残るか
API連携の有無
既存の勤怠管理システムなどと連携できるか
例えば、クラウド型のシフト管理システムは多くがこれらの機能を備えており、シフト管理を効率化できます。従業員はスマホなどウェブ上で自分のシフトを確認したり、交代や休暇の申請が可能です。
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Excelや無料ツールでのシフト作成に限界を感じ始めたら、有料ツールへの「卒業」を考える時期かもしれません。その判断基準となるのが、事業規模やシフトの複雑さです。具体的なしきい値として、以下を目安にしてみてください。
・従業員数が20名を超えた
・管理拠点が3箇所以上になった
・1ヶ月のシフト変更が10件を超える
・慢性的に欠員率が5%を超えている
上記のいずれかに当てはまったら移行を検討しましょう。例えばMicrosoftのShiftsは、Power Automateと連携させることで、「休暇申請が承認されたら、管理者に自動で通知する」といった業務の自動化も可能です。
その結果、手作業とは比べものにならないほど仕事がはかどります。手間とコストのバランスを見極め、最適なツール選びを進めましょう。
シフトを作成する大前提として、労働基準法をはじめとする法令の順守は絶対です。担当者の知識不足が、気づかぬうちに「ブラックな職場」を生み出すことにもなりかねません。
従業員と会社双方を守るため、以下の最低限のルールが守れているか、必ずチェックしてください。
これらの基準を守り、健全なシフト作成を心がけましょう。詳細は厚生労働省のサイトで確認できます。
関連記事:あなたの職場は大丈夫?残業の上限についてシフト管理者が必ず知っておきたい36協定
飲食業や小売業、医療・介護の現場など、時期や時間帯によって業務の繁閑差が激しい業界があります。そうした業界では、「変形労働時間制」を導入すると良いでしょう。
これは、月単位や年単位で労働時間を調整する制度です。忙しい時期は長く、閑散な時期は短く働くことで、週平均の労働時間を法定内に収められます。
例えば、以下のようなパターンがあります。
飲食業界
週末やピークタイムに合わせた集中的な人員配置と、閑散期の調整。
小売業界
セール期間など繁忙期に人員を増やし、閑散期は調整。
医療業界
外来ピークや夜間対応に合わせ、特定の週の労働時間を長く、別の週を短くする
変形労働時間制の導入は、人件費の最適化や従業員負担の軽減につながります。しかし、導入にあたっては、労使協定の締結や就業規則への記載が必要です。
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「いきなり有料ツールを導入するのはハードルが高い」と感じているExcel派のシフト作成担当者様も多いのではないでしょうか。Excelでのシフト作成は、テンプレートをうまく活用すれば、まだまだ効率化の余地があります。
ゼロから作成する手間を省き、入力ミスや計算間違いを減らすことが重要です。それだけでも、作業時間は大幅に短縮できるはずです。
Microsoft公式サイトでも便利な勤務表テンプレートが配布されていますが、今回はさらに実用性を高めたオリジナルのテンプレートをご用意しました。以下より無料でダウンロード可能ですので、ぜひ日々の業務にお役立てください。
>>【無料ダウンロード】月間/週間/時間帯別シフト管理テンプレート
本記事では、シフト作成を改善するための基本的な考え方から、Excelの活用法、法令順守のポイント、そして最適なツール選びまで、具体的なステップを交えて解説しました。シフト作りを見直すことは、担当者の仕事が楽になるだけではありません。
それは、従業員の満足度アップや、お店全体の売上アップにもつながる、とても大切なテーマなのです。まずは、紹介した5つのステップに沿って、今の仕事のやり方を見直すことから始めてみてください。
自社の規模や課題に合わせて、Excelテンプレートを活用したり、専用ツールへの移行を検討したりするなど、できることから一歩ずつ着手しましょう。それが、大きな改善につながるはずです。
ここでは、特に多くの方が疑問に思う点について、Q&A形式でわかりやすくお答えします。
自分のケースに当てはめながら、疑問の解消にお役立てください。
記事で紹介されている、以下の「卒業」判断基準のいずれかに当てはまった時が、移行を検討する具体的なタイミングです。
・従業員数が20名を超えた
・管理する拠点(店舗・事業所)が3箇所以上になった
・1ヶ月のシフト変更・調整が10件以上発生している
・慢性的に欠員率が5%を超えている
これらの状況は、Excelでの手作業による管理コスト(時間、ミス、リスク)が、ツールの利用料金を上回り始めているサインと言えます。
Excelでも関数と機能を組み合わせることで「半自動化」が可能です。
まず、Microsoft公式サイトなどで提供されているテンプレートを活用し、ゼロから作る手間を省きます。その上で、以下の機能を設定するのが効果的です。
・`COUNTIF`関数: 従業員ごとの「休み」や「早番」の日数を自動でカウントさせ、勤務回数の偏りをチェックする。
・条件付き書式: 「土日」や「深夜」などのセルに自動で色を付け、シフトのバランスを視覚的に確認しやすくする。
・データの入力規則: 入力できる文字を「早」「遅」「休」などに限定し、入力ミスそのものを防ぐ。
これらの工夫で、手作業によるミスや確認の手間を大幅に削減できます。
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「公平さ」は、感情ではなく「ルール」と「透明性」で示すことが重要です。
まず、「希望休の提出は早い者勝ち」「土日休みは月2回まで」といった、誰が見ても公平なルールを明確に定め、全員に周知徹底します。
その上で、特定のスタッフに負担が偏らないよう、勤務回数などを記録し、ローテーションを組んでいることを示しましょう。「なぜこのシフトになったのか」という理由を、客観的なルールやデータに基づいて説明できるようにしておくことで、従業員の不満は「個人的な感情で作られたものではない」と理解され、納得感に繋がります。
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