シフト作成で守るべき法律の基本は、労働時間・休憩・休日の3つです。シフト制勤務を管理する担当者向けに、労働基準法の必須ルール・よくある違反事例・変形労働時間制や勤務間インターバルへの対応方法を専門家監修のもと解説します。公開前に使えるチェックリストも掲載しています。
松本幸一(社会保険労務士)
元ハローワーク正職員の社会保険労務士。ハローワーク時代に社会保険労務士試験に合格し、その後社会保険労務士事務所、企業人事部勤務を経て独立。官・民・士業の三視点からのアドバイスを得意とする。独立後は顧問業務のほかWebメディア記事を通じた情報発信などを行っている。
シフト勤務を採用する企業では、労働基準法の正確な理解が欠かせません。
誤ったシフト運用は、次の3つのリスクを生じさせます。
「休憩なし」「連勤が続く」といった従業員の不満が出ている場合、意図せず違法シフトを組んでいる可能性があります。
労働法は頻繁に改正されます。法的知識を継続的に学び、正しいシフト管理を実践することは、企業の信頼維持と安定した事業運営に直結します。
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シフト制で働く従業員にも、正社員と同じく労働基準法が厳格に適用されます。
特に「労働時間」「休憩」「休日」の3つは、シフト作成で必ず守るべき基本ルールです。これらは労働基準法の第32条・第34条・第35条で定められており、従業員の健康を守る最低ラインです。
| 項目 | 法定基準 | 超えた場合の対応 |
|---|---|---|
| 労働時間 | 1日8時間・週40時間 | 割増賃金25%以上が必要 |
| 休憩時間 | 6時間超→45分以上、8時間超→60分以上 | 労基法違反(罰則あり) |
| 休日 | 週1回以上(または4週4日以上) | 法定休日労働として割増賃金35%以上が必要 |
法定労働時間の上限は「1日8時間・週40時間」です(労働基準法第32条)。
例えば「1日10時間勤務」のシフトを組んだ場合、8時間を超えた2時間分は時間外労働となり、割増賃金の支払いが必要です。週単位でも同様で、7日間合計で40時間を超えると超過分は残業扱いになります。
この原則を逸脱する場合は「36協定の締結」や「変形労働時間制の導入」が必要です。
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従業員に適切な休憩時間を与えることも法律で定められた義務です(労働基準法第34条)。
注意すべきポイントは2つです。
忙しさを理由に休憩を後回しにしていると、気づかぬうちに違法状態になります。シフトの段階で休憩時間を必ず組み込みましょう。
企業は従業員に原則「毎週少なくとも1回」の休日を与えなければなりません(労働基準法第35条)。これが「法定休日」です。
シフト制で毎週1回の確保が難しい場合は「変形休日制」が利用できます。「4週間を通じて4日以上」の休日を与えれば、毎週の休日確保は不要です。ただし、就業規則に「4週間の起算日」を明確に定めることが必須条件です。
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法定労働時間を超える残業や法定休日の労働には、「36協定」の締結と労働基準監督署への届出が必須です(労働基準法第36条)。
36協定を締結した場合の残業上限は次のとおりです。
| 種別 | 上限 |
|---|---|
| 原則(月・年) | 月45時間・年360時間 |
| 特別条項(年間) | 年720時間以内 |
| 特別条項(月・休日含む) | 月100時間未満・複数月平均80時間以内 |
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「良かれと思って組んだシフトが実は違法だった」という事態は珍しくありません。意図しない違反でも、従業員とのトラブルや企業の信用失墜につながります。
特に注意すべき4つの違反パターンを解説します。
「忙しくてお昼休憩が取れなかった」「ワンオペで代わりがいない」という理由で法定の休憩を与えないケースがあります。労働時間が6時間を超えれば45分以上の休憩が義務であり、これを怠ると法律違反です。
また、人手不足を理由に「気づけば10連勤」になるケースも違法です。原則「週1日」または「4週間に4日」の休日を与えなければなりません。長すぎる連勤は法律違反だけでなく、労働災害リスクも高めます。
「終業後に片付けや準備を無償で行わせる」「持ち帰り仕事を残業としてカウントしない」といった運用は、深刻な労働基準法違反です。
会社の指揮命令下にある時間はすべて労働時間です。次の時間も労働時間に含まれます。
未払いの残業代は後からまとめて請求される可能性があります。徹底した労働時間の管理が必要です。
「予約が少ないから明日は休んでほしい」など、会社都合で一方的にシフトを削ることは、原則として認められません。
一度従業員と合意して確定したシフトは法的効力を持つ「労働契約」です。従業員の同意なくシフトを削った場合、会社都合の休業とみなされ、平均賃金の6割以上の「休業手当」の支払い義務が生じます(労働基準法第26条)。
休業手当を支払わない場合は30万円以下の罰金が科せられる可能性があります(労働基準法第120条)。
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「夜勤が終わって翌朝すぐに出勤」といった過密シフトは、健康被害や事故のリスクを高めます。2019年の働き方改革関連法の施行により、「勤務間インターバル制度」の導入が企業の努力義務となりました。
(引用元:厚生労働省|勤務間インターバル制度について)
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「月によって忙しさが全然違う」「24時間体制が必要」という職場では、通常のシフト作成だけでは対応が困難です。法律では「変形労働時間制」や「交替勤務」といった柔軟な働き方が認められています。
ただし、これらの制度は通常の勤務よりも複雑な法的要件があります。手続きを誤ると気づかぬうちに違法な長時間労働が発生するリスクがあります。
変形労働時間制(へんけいろうどうじかんせい)とは、一定期間を平均して法定労働時間内に収めれば、特定の日に8時間を超えて労働させても割増賃金が発生しない制度です。
主な種類と要件は次のとおりです。
| 種類 | 対象期間 | 導入に必要な要件 | 主な導入業種 |
|---|---|---|---|
| 1ヶ月単位 | 1ヶ月以内 | 就業規則または労使協定の締結 | 小売・飲食・医療 |
| 1年単位 | 1ヶ月超〜1年以内 | 労使協定の締結+労基署への届出 | 製造業・観光業 |
1年単位の変形労働時間制では、さらに以下の制限が設けられています。
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24時間稼働している職場での交替勤務・夜勤には、通常の勤務と異なる法的注意点があります。
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警備業や施設管理・タクシー乗務員など、一部の業種では24時間勤務や隔日勤務が採用されています。適切な管理下であれば違法ではありませんが、次の点に注意が必要です。
具体的な運用にあたっては、社会保険労務士などの専門家への相談を推奨します。
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勤務間インターバル制度とは、終業から次の始業までの間に一定時間以上の休息を設ける制度です。従業員の健康維持と生産性向上の観点から、近年注目が高まっています。
2019年4月1日施行の改正労働時間等設定改善法により、勤務間インターバル制度の導入が事業主の「努力義務」として定められました。
「努力義務」は違反しても罰則はありませんが、法的に「導入するよう努めなければならない」と位置づけられています。国は導入企業に対する助成金制度(働き方改革推進支援助成金など)も設けています。
法律に具体的な時間数の規定はありませんが、厚生労働省のガイドラインでは「9〜11時間」の休息時間の確保を推奨しています。
例えば、終業が23時の従業員に11時間のインターバルを確保する場合、翌日の始業は10時以降となります。この設定により従業員は通勤・食事・睡眠に必要な時間を確保でき、心身をリフレッシュした状態で翌日に臨めます。
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| 区分 | 内容 |
|---|---|
| メリット | 従業員の健康維持・欠勤減少・離職率低下・採用時の企業イメージ向上 |
| 課題 | シフト編成の複雑化・人件費の増加・業務運営上の制約 |
課題に対しては、シフト管理システムの導入や従業員との話し合いによって解決策を見出せます。長期的に見れば、企業の持続的な成長に欠かせない投資となるでしょう。
シフトを公開する前の最終確認として活用できるチェックリストです。労働基準法の基本から複雑な制度への対応、従業員の健康への配慮まで、抜け漏れなく確認できます。
□ 1日の労働時間は8時間、週の労働時間は40時間以内に収まっているか
□ 労働時間が6時間超のシフトに45分以上、8時間超に60分以上の休憩を入れているか
□ 休憩時間は勤務時間の「途中」に設定されているか
□ 毎週少なくとも1日の休日、または4週間を通じ4日以上の休日を付与しているか
□ 法定労働時間を超えるシフトがある場合、36協定は締結・届出されているか
□ 残業や深夜労働に対する割増賃金が正しく計算される仕組みになっているか
□ 変形休日制を導入している場合、4週間の起算日が就業規則で明確に定められているか
□ 前日の終業から翌日の始業まで十分な休息時間(9〜11時間)を確保できているか
□ 夜勤明けの従業員に無理な早朝出勤をさせていないか
□ 就業規則や労使協定で変形労働時間制の起算日や期間が明確に定められているか
□ 対象期間を平均して、週あたりの労働時間が40時間を超えていないか
□ 対象となる従業員に、あらかじめ各日の勤務時間を具体的に伝えているか
□ 1年単位の場合、年間労働日数の上限(280日)や連続勤務日数の上限を超えていないか
□ 労働基準監督署への届出は済んでいるか
□ 残業や法定休日の労働は36協定の範囲内になっているか
□ 特定の従業員に連勤・夜勤・休日出勤が偏っていないか
□ シフトが原因で心身の不調に関する相談は出ていないか
□ 従業員から提出された希望休は可能な限り尊重できているか
□ 一方的なシフト変更や理由が不透明なシフトカットを行っていないか
□ シフトに関する不満や意見を従業員が気軽に相談できる窓口はあるか
□ 各従業員のスキルや経験を考慮し、無理のない人員配置になっているか
いいえ、法律違反となります。労働基準法第34条では、休憩は「労働時間の途中」に与えなければならないと定められています。「忙しいから終業前にまとめて1時間休憩」といった運用は認められません。労働時間が6時間を1分でも超える場合は45分以上、8時間を超える場合は60分以上の休憩を、必ず勤務時間の間に設定してください。
原則として、最大6連勤までです。労働基準法では「毎週少なくとも1回の休日(法定休日)」が義務付けられているため、7日間に1日の休みが必要で、連続勤務の上限は6日となります。ただし、「変形休日制」を就業規則で定めている場合に限り、最大で12連勤まで可能です。この制度を正しく導入していない状態での6日を超える連勤は法律違反となるため注意が必要です。
たとえ本人が合意したとしても、会社都合で労働時間を短縮した場合は「休業手当」の支払い義務が発生します。労働基準法第26条に基づき、早上がりさせた時間に対して、平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければなりません。例えば、時給1,000円のスタッフに2時間早く帰ってもらった場合、最低でも「1,000円×2時間×60%=1,200円」の休業手当を支払う必要があります。一方的なシフトカットはトラブルの原因となるため、慎重な対応が求められます。
いいえ、36協定を締結しても残業には上限があります。原則として「月45時間・年360時間」が上限です。特別条項付き36協定を結んだ場合でも、「年720時間以内」「休日労働を含め月100時間未満」「複数月平均80時間以内」という厳格な上限が適用されます。これらを超えると法律違反となり、罰則の対象になります。
はい、適用されます。労働基準法はパート・アルバイトを含むすべての労働者に適用されます。雇用形態にかかわらず、6時間超の勤務には45分以上、8時間超の勤務には60分以上の休憩が必要です。また、週1回以上の休日(または4週4休)も必ず付与しなければなりません。「バイトだから関係ない」という認識は誤りです。
深夜労働(午後10時〜翌朝5時)には、通常賃金に加えて25%以上の割増賃金が必要です(労働基準法第37条4項)。通常の残業代も25%以上の割増ですが、深夜かつ残業の場合は合計50%以上の割増となります。また、深夜業に常時従事する労働者には、年2回の健康診断の実施が義務付けられています。
シフト勤務の作成には、労働基準法をはじめとする多くの法律が関係しています。
この記事で解説した必須ポイントを整理します。
「自社のシフトは本当に大丈夫だろうか」「法律改正に対応できているだろうか」という不安がある場合は、社会保険労務士などの専門家のサポートを活用することをおすすめします。
複雑な法律をすべて遵守しながら従業員の希望を調整するシフト管理は、担当者にとって大きな負担です。「もっと効率的に、間違いのないシフト管理を実現したい」とお考えなら、シフト管理システムの導入も検討しましょう。
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