外国人労働者は年々増加傾向にあります。厚生労働省が公表している「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)によると、2022年10月末時点の外国人労働者数は約182万人であり、うち留学しながら働く人の数は約25万人となりました。
企業の中には、外国人留学生のアルバイトが貴重な労働力となっているケースもあることでしょう。しかし、外国人留学生の労働時間には上限が設けられています。違反した場合、 留学生は「不法就労」に、雇用主は「不法就労助長罪」に問われるケースもあるのです。
外国人留学生を雇用する企業は、留学生の労働時間に関する法令を理解し、正しい労働条件のもとで雇用する必要があります。
今回は、労働基準法上における外国人留学生の労働時間の上限について説明したうえで、違反した際にはどのような罰則が科せられるのか、また、違反の発生を防ぐためにはどのような対策が必要か、という内容について解説します。
- 外国人が日本で働くには、就労できる「在留資格」が必要
- シフトの境目のタイミングは、週28時間を超えないように気をつける
- 定められた労働時間を超えた場合、違反となり双方が罰則を受ける
- 外国人労働者のシフトを作成するうえで気をつけること
- まとめ
外国人が日本で働くには、就労できる「在留資格」が必要
外国人が日本で働くには、原則として「在留資格」を取得する必要があります。在留資格とは、外国人がどのような目的で日本に長期間滞在するのかを示す資格のことです。
在留資格は29種類あり、主な在留資格としては「外交」「公用技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「教育」「高度専門職」「留学」があります。
在留資格は、特定の目的で日本に滞在できる資格であるため、特定の在留資格を持つ外国人は法律で定められた職種の仕事にのみ就くことができます。また、来日の目的は必ずしも働くことであるとは限らないため、在留資格の中には原則として就労が認められていないものもあります。
なお、「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の4つの在留資格は、居住することが目的の在留資格です。これらの在留資格を持つ人は働いて収入を得る必要があるという観点から、就労の制限は設けられておらず、どんな仕事にも就くことができます。
留学生は資格外活動許可が必須
外国人留学生は「留学」という在留資格を取得して来日します。「留学」の場合、入国する目的は「日本で教育を受けること」であるため、原則として就労は認められていません。
しかし、留学生が日本で生活するためには、母国からの仕送りだけでは不足することがあるため、アルバイトをして収入を得ることも必要となります。アルバイトをして収入を得たい留学生のために「資格外活動許可」の制度が設けられています。
資格外活動許可とは、日本で活動する外国人に対して、本来の在留資格以外の活動を認める制度のことです。資格外活動許可は、本来の在留資格で行う活動に支障が出ないことを条件に付与されます。
留学生が「資格外活動許可」を取得すれば、学校で学ぶことに加え、週28時間以内であれば働くことが認められます。留学生にとって、週28時間という労働時間は短く感じられるかもしれませんが、この労働時間は、学業に支障が出ないことを目安に定められたものです。
企業が留学生をアルバイトとして雇用する場合は、パスポートや在留カードなどで資格外活動許可を得ているか確認しましょう
シフトの境目のタイミングは、週28時間を超えないように気をつける
留学生は、特別な許可を得て「学業に支障が出ない範囲で働く」という基準があります。留学生が労働可能な、時間は残業時間を含めて週28 時間。1週間のうち、どの曜日からカウントしても28時間を超えないようにしなければなりません。
例えば、今週のシフトが月曜休み、火曜5時間労働、水曜5時間労働、木曜休み、金曜6時間労働、土曜6時間労働、日曜6時間労働の場合を見てみましょう。
5日の月曜日起算で考えれば28時間で収まっています。しかし、12日の月曜日に5時間労働してしまえば、6日の火曜日で起算すると33時間労働となり、違反となってしまいます。
シフト管理者は「どの曜日から起算しても週28 時間を超えないこと」に注意 する必要があるのです。
また、他に気をつけたい点は、1か月のシフトの境目にあたるときに、前後のシフトを確認しないと、1週間の労働時間が28時間を超える場合があることです。
たとえば、1か月のシフトの範囲が毎月1日から末日までとします。そのときに、下記のような働き方をしたとしましょう。
- 29日(日)6時間
30日(月)休み
31日(火)6時間
1日(水)6時間
2日(木)休み
3日(金)6時間
4日(土)6時間
この場合、1週間の労働時間は30時間となり、週28時間を超えて働かせたことになります。
通常であれば、週28時間を超えないようにシフトを作成するところですが、31日と1日の間で月間のシフトが切り替わっているため、1週間の労働時間が28時間を超えていることに気がつかないことがあります。
留学生に週28時間を超えて働かせると法律に違反するため、特にシフトの変わり目のタイミングでは、1週間あたりの労働時間についても配慮するようにしましょう。
アルバイトを掛け持ちしても労働時間は合計で週28時間まで
留学生によっては、2つ以上のアルバイトを掛け持ちしていることもあります。ダブルワークのアルバイトをしている場合も、労働時間の上限は週28時間までです。
そのため、留学生がダブルワークのアルバイトをしている場合は、シフト管理者は他のアルバイト先での労働時間を確認する必要があります。
ただし、留学生がダブルワークをできるのは、アルバイトを行っている企業が副業を認めている場合に限られます。もし、ダブルワークを認めていない企業で留学生がダブルワークをすると、法律上では問題がなくても就業規則に違反してしまいます。
ダブルワークを認めていない企業の場合は、面接の時点で「当社ではダブルワークは禁止です。ほかの会社でアルバイトはしないでください」と伝えておきましょう。
ダブルワークを認めていない企業であれば、留学生の労働時間の確認は自社で働いた分だけで済むため、留学生の労働時間の管理を簡単に行えます。
長期休暇中は週40時間まで働くことが可能
特例として、留学生が夏休みなどの長期休暇中にアルバイトをする場合は、1週間あたり40時間以内の労働が認められています。週5日働く場合は、1日あたり8時間まで働くことが可能です。
その理由は、長期休暇中は学校に通う必要がなく、時間を自由に活用できるためです。留学生の中には、夏休みなどの長期期間中にできるだけ多く働いて、収入を増やしたいと考えている人もいることでしょう。
留学生を雇用している事業主は、留学生から長期休暇に入ったことを伝えられた場合は、1週間あたりの労働時間を40時間に増やすことができます。
定められた労働時間を超えた場合、違反となり双方が罰則を受ける
留学生をアルバイトとして雇用する場合、労働時間を週28時間以内に収めることが原則ですが、もし、労働時間が週28時間を超えてしまった場合は違反となります。
違反をした場合は、留学生だけでなく、留学生を雇用した事業者側も罰則を受けることになります。具体的な罰則の内容についてみていきます。
留学生が受ける罰則
外国人留学生の労働時間が規定の時間を超えてしまった場合、 入国管理局の調査で「不法就労」と判断されることがあります。その場合、強制送還を命じられたり、在留資格の更新が認められなかったりすることがあります。
強制送還を命じられれば、速やかに母国に送り返されます。また、在留資格を更新できなければ、結果として日本に滞在できなくなるため、遅かれ早かれ母国に帰ることになってしまいます。
もし、強制送還を命じられた場合、5年間は日本に再入国できなくなります。留学するために来日したにもかかわらず、アルバイトをしすぎたことが原因で日本にいられなくなってしまうと、まさに本末転倒となってしまいます。
事業者側が受ける罰則
一方、事業者雇用側にも罰則があります。事業者雇用側は「不法就労助長罪」に問われることとなり、3 年以下の懲役、または300万円以下の罰金が科せられます。
罰則を科せられるのは、外国人留学生を採用した責任者となります。店舗で採用した場合は店長、企業の人事責任者が採用した場合は人事責任者が罰則を受けます。
そのほか、留学生の採用時と退職時にはハローワークへ届け出なくてはなりません 。「報告を怠る」「虚偽の申告をする」といった行動は雇用対策法に違反するため、30万円以下の罰金となります。
定められた労働時間の上限を守るためには
外国人留学生の労働時間が週28時間を超えないようにするためには、日々のシフト管理を確実に行うことがポイントといえます。そのほかに重要な点は「留学生とのコミュニケーションを密にすること」です。
たとえば、定められた労働時間を超えてしまう原因の一つに「ダブルワーク」があります。
面接の時点で「1週間の労働時間は28時間以内です。もし、ダブルワークをする場合は私に伝えてください。アルバイトの合計時間が週に28時間を超えると、在留資格を更新できなかったり、強制的に国に帰らされたりすることがあります」と伝えておきましょう。
特に、外国人留学生は、日本人と比較すると理解できる単語の量は限られます。外国人労働者とコミュニケーションを取るときは、できる限り易しい単語を使いながら、わかりやすく伝えることを心がけましょう。
そのほか、日々業務を行っているときも、外国人留学生とこまめにコミュニケーションを取りながら、外国人留学生が話しやすい雰囲気を作っておくことも大切です。コミュニケーションの頻度が増えるほど「1週間の労働時間は28時間以内」という内容を伝えやすくなるため、定められた労働時間を超えてしまうことも防げます。
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外国人労働者のシフトを作成するうえで気をつけること
シフト表の作成においては、留学生に定められている週28時間以内の労働だけに目を向けるのでなく、その他の法令や社内の就業規則も考慮する必要があります。
たとえば、連続勤務は最大○日まで、1週間に休日は○日以上与える、1か月の総労働時間は○時間以内、勤務間インターバルは○時間、という内容があげられます。
それだけではなく、各スタッフの勤務希望を受け入れることや、運営に必要な人数のスタッフを確保することも重要な要素です。
シフト表の作成は手書きやExcelで作成している事業所も多いのではないでしょうか。しかし、人手でこれらの勤務条件を考えたうえでシフトを作成するのは非常に難しく感じられ、時間がかかってしまいます。
しかも、できあがったシフトで実際に業務を行ってみると、人員の配置がうまく行われていない場合があり、スタッフとしては作業を行いにくいと感じてしまう可能性もあります。
このような場合、シフトを管理していくのは非常に難しいことになります。その場合は手書きやExcelで作成するのではなく、シフト管理システムを利用して管理を行うのも有効な手段と言えるでしょう。
まとめ
現在では、多くの現場で外国人留学生が貴重な労働力となっています。特に、日本で学ぶために留学している外国人は、真面目で有能な人が多いことでしょう。雇用側にとってみれば、期間限定とはいえ大切な従業員であることは間違いありません。
人事責任者は留学生の労働に関する正しい知識を身につけておくことが重要です。
もし、留学生が定められた労働時間を超えて働いてしまうと、留学生が退職に追い込まれ、大切な従業員を失ってしまう可能性があります。しかも、留学生を雇用した自分自身も刑事罰の対象になってしまうリスクもあるのです。
そのようなトラブルを防ぐためにも、 留学生を採用する前に資格外活動許可を取得しているかどうかを確認しましょう。採用後は、1週間で働ける時間を確認し、他のアルバイトとの掛け持ちや長期休暇特例も踏まえた労務管理が求められます 。
今一度、留学生の労働条件を見直し、適切なコミュニケーションを図ることができる管理体制かどうかも確認しておきましょう。また、留学生のシフトを作成する場合は、労働条件や規則を遵守するように気を付けましょう。
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