アルバイトやパートなど非正規雇用の労働者を雇い入れながら、限られた人員で必要業務を安定して行っていくことは、考える以上に難しいことです。慢性的な人手不足と効率性が追求される今、もともと人員に大きな余裕があるわけではありません。担当者は多くの制約がかかるぎりぎりの中で、シフト管理を行い、日々のサービス提供などに滞りがないよう、臨機応変に対応していくことが強く求められています。
あらかじめ計画的にシフトを組み、万全の準備を施していても、避けられないのが急な欠員の発生です。担当責任者として、そうした事態をどうカバーするか、いかにスタッフの欠員補充を行っていくかに、日々頭を悩ませているといった方も多いでしょう。
そこで今回はこの欠員問題を考え、シフト管理の責任者らがどのような対策を取っていけば良いのか、有効と考えられる実践的方法を解説していきます。
欠員のピンチは急にやって来る
多くの現場では人件費を最低限に抑え、適切な利益率を確保していくため、仕事を回せるだけの最低限の人員を配置するかたちでシフトを組むものです。
時間帯による繁閑の差が大きい飲食業、シーズンによる変動が目立つホテル・宿泊業、セールなどで繁忙期が生じるアパレル業など、それぞれ業種によっても客数変動の傾向、繁忙期の到来パターンなどが異なりますから、それに合った全体の運用計画と綿密なシフト管理が欠かせません。そうして手間をかけ、しっかりとしたシフトを作成しても、あくまで予定、計画ですから、その通りにはいかない事態が生じてきます。
無駄のない人員配置としていればこそ、そこで1人の欠員が出れば、想定通りに仕事を回すことができなくなってしまうでしょう。1人が欠けたままの運用では、他のアルバイトや社員スタッフへの負担が過剰になり、労務管理上の問題が発生してしまう場合もあります。
そこで欠員を何とか補充する策を考えなければなりませんが、この欠員発生が多くの場合、非常に急であることが難題たるゆえんです。本人にとっても予見できない体調不良や事件事故、家庭の事情、交通事情などによる場合、連絡が当日の朝やシフト数時間前になってしまうことも少なくありません。出ることができない本人を責めることもできず、わずかな時間で対処しなければならない管理者は非常に困難な状況に追い込まれます。
さらに困るケースとしては、アルバイトの無断欠勤も残念ながら少なくありません。社員であれば厳しく責任を問われ、今後のキャリアや人事評価などに大きく影響してくることから、あまり無断欠勤となることはありませんが、一時的な雇用関係である非正規雇用、アルバイト・パートの場合、どうしても社員に比べ、簡単に無断欠勤をしてしまうタイプの人を生みやすくなります。寝坊や個人的理由、管理不足によるシフト忘れ、別のバイトとのダブルブッキング、仕事に馴染めない、ミスが続き叱責されて嫌になったなど、欠勤理由はさまざまですが、たとえアルバイトでも、何の報告もなく欠勤することは許されることではありません。管理者にできることは、もちろんまず本人の安否確認を兼ねて連絡を入れ、状況を確認することですが、こうした場合もごく短時間で対処を完了させねばなりません。
また、人員側ではなく、業務環境の側の突発的事態で人員補充が必要になるケースもあります。例えばクレームが殺到するような事態が発生した、外発要因から急に問い合わせが激増する事態となった場合などです。こうした突然の繁忙時対応、現場をパンクさせないための対応も、早急に求められることがあり得ます。
いずれにしても、欠員はまさかのタイミングで生ずるもの、いつも急にやって来る難事という意識で備えることが必要です。
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欠員カバーの対処法
実際に急な欠員が発生し、シフトがうまく回らなくなってしまった場合には、どのように対処すれば良いのでしょうか。管理者にできることとして、次のような方策があります。
自店舗・自社内スタッフで補充する
まずは当日のシフトに欠員が生じた場合、自店舗や自社内の他のアルバイトやパート、難しい場合には社員にまで拡張し、可能な従業員が応援に入ることで補充する方法が基本となります。
普段から急な変更に対応できる環境を整え、いざという時に備えておくことが重要です。あらかじめ丁寧な聞き取りを行い、比較的急な変更にも対応しやすく、時間の都合をつけやすいスタッフは誰なのか、店舗など作業現場の近隣に居住しているスタッフは誰か、可能ならばもっと働きたい・稼ぎたいと考えている人は誰かなど、代替要員として依頼した際に、請けてくれやすい対象を絞り込みやすくしておくと良いでしょう。
スタッフ1人1人、背景はさまざまです。いつでもヘルプに入れるわけではなくとも、平日夜ならば自由が利きやすい、平日は無理だが土日祝日は余裕がある、特定の曜日や時間帯を避けてもらえれば融通を利かせられるなど、ある程度の傾向や幅があると考えられますから、採用時や普段のシフト希望聞き取りを行う際などに確認し、記録・整理しておくことをお勧めします。
欠員が生じたら、そうして把握している状況をもとに、最適な対象者へ速やかに連絡し、シフトに入ってもらうよう依頼しましょう。
他店舗に応援を要請する
複数店舗を経営している、他に系列店舗が存在するといった場合には、そちらに応援を要請し、人手を回してもらうという方法が考えられます。
繁閑タイミングが異なっていたり、少し店舗規模や雇い入れている人材の規模として、余裕のある状態の店舗が近隣にあったりする場合には、欠員で業務に支障をきたしていることを発信し、ヘルプを求めることで、穴を埋める人員を融通してもらえる可能性があります。
とはいえ、あまり急な依頼では、他の店舗も協力したくてもできない、対応できないことが多くなると考えられます。自店舗をきちんと回すことが最優先ですから、他店舗にばかり負担をかけることも望ましくないでしょう。
同じような業務内容であっても、環境の違いからスムーズには働けない、本来のパフォーマンスを発揮しづらいことも十分にあり得ます。あくまで他に手段のない場合に限定すること、そしてあらかじめ当該店舗間で、そのような欠員補充の応援要請を行う場合にはどうするのか、ルールや手順を設定し、確認し合っておくことが大切です。
余裕をもった人員配置としておく
社会では人手不足が深刻化し、各現場においては無駄な人件費の削減、効率化を追求していくことが強く求められる今、どうしても必要最低限で業務を回すようにしがちですが、あまりにぎりぎりの状態で回していると、やはり突発的に生じた欠員による1人分の穴が、運用における多大な損失となる、大きな業務支障となる可能性が高まってしまいます。
欠員以外でも、急なクレームの発生や問い合わせの増大、トラブル対応などで普段以上の人員が必要になることもあり得ます。こうした場合に備え、可能であれば余裕のある人材採用と配置を行っておくことが望ましいでしょう。
短時間ならば、欠員の穴をカバーし合えるだけの人数がいる場合、一時的に個々の負担は増えることとなりますが、何とかそれぞれに努力してもらって対処することも可能です。無断欠勤で寝坊やシフト忘れなどによるものだと判明した場合には、早急に出勤するよう指示し、空いた時間のみをカバー、到着次第、遅刻扱いで入ってもらうなどすればスムーズです。
普段から行っておくべき対策
シフト組みは慎重に進め、急な欠員の発生を最小限に抑えることが第一ですが、どんなに気を配っても、突発的事態で欠員が生ずるリスクをゼロにすることはできません。そこで、普段から対応しやすい環境づくりを進めておくことが大切です。現状、頭を悩ませているならば、次のような対策をとるところから始めると良いでしょう。
シフト管理ツールで可視化・効率化を図る
担当管理者が独力で勤怠管理・シフト管理を行おうとすると、大変な手間と労力が発生し、欠員補充への対応でも、逐一調査・連絡などが必要になります。これではあまりに負荷が大きく、欠員をカバーする際にも時間がかかるばかりでそのリスクと影響を増大させてしまうでしょう。
そこで、全体を効率化させるシフト管理ツールなどを含んだ統合システムを導入することが効果的です。個々のスタッフに対する希望調査もシステム上で行え、収集から実際のシフト組み、確認・連絡・承認など一連のプロセスを半自動化して進めることが可能になります。
現状の可視化で、余剰人員や欠員の発生状況を簡単に、かつ正確にリアルタイムで把握でき、人員調整やシフトの再調整検討、人件費管理などにも役立ちます。
急な欠員が発生したシーンで、スタッフ全員に対し、メールやアプリを通じた応援要請を発信できる機能が搭載されたものもあり、これを用いれば補充を迅速、かつ容易に行えるようになるでしょう。店舗間での情報共有、ヘルプ要請などに対応するシステムもあり、そうしたツールを導入すれば、店舗の垣根を越えた人員のやり取り、助け合いも円滑に進められると期待されます。
無断欠勤を防ぐ指導等を行う
予期せぬ体調不良や家庭の事情など、本人の責任に帰すことができないものでその旨連絡もあり、シフトに穴が生じるケースはやむを得ない緊急事態と言えますが、スタッフ本人の不注意による無断欠勤は可能な限りなくしていくべきものです。よって、これについては発生を未然に予防すること、また実際に起きた際には再発を防ぐ策をとることがポイントです。
まずアルバイト・パートなど非正規雇用であっても、正式な労働契約を結んだ労働者であり、雇用主との契約関係があります。無断欠勤してもいいと思えるような無責任な態度で臨むことは許されません。書面で懲戒解雇や減給処分の対象条件を明記・提示しておくといった、無断欠勤を防止する対策が必要でしょう。一度の無断欠勤であっても、まずはその理由をきちんと聞き取り、必要な指導を行いましょう。パワハラなど環境面に問題があるならば調査も必要です。
本人の問題であれば、口頭で注意喚起を行い、再発を防ぎます。それでも無断欠勤で欠員を生じさせることが繰り返されるような場合は、書面での注意喚起や減給処分、懲戒解雇処分を事前の契約条件に従って進め、決然とした態度で接することが重要です。甘い態度で放置していては、業務の遅滞といった支障が発生するだけでなく、職場全体の空気も悪化させてしまいます。安易な無断欠勤をなくすだけでも、職場環境・労働環境の改善、シフト管理の改善が図れる場合もあります。
横断的に対応可能な人材の育成を進める
業務内容として個々に特化した役割を担い、働いているスタッフが多い場合、代替が利きにくく、そもそもシフト調整に無理を生じやすい状況が生まれます。スタッフの希望とすり合わせながら、負担が過剰にならないように配慮することは必要ですが、特定の業務だけでなく、より幅広く対応できるような人材教育を進めておくと、柔軟なシフト組みや、急な欠員時の代替要員として活躍してもらいやすくなるでしょう。
成長に応じ、横断的に対応できるスキルをもった人材として評価、昇給させるといったベネフィットを与えれば、スタッフのモチベーションも上がります。また、人材育成は普段の生産性も向上させるため、企業にとって多角的なプラスの効果を生み出します。
信頼関係・円滑な人間関係を醸成する
普段から職場内で管理者と一般スタッフ、スタッフ同士など、良い人間関係に基づいたチームワーク性をアップさせておくことも、欠員補充策のソフト面として重要なポイントです。
厚い信頼関係があり、密にコミュニケーションがとれていれば、何とか都合をつけて積極的に応援に入りたいと考えるスタッフも増え、待機要員を確保しやすくなります。また、やむを得ない事情で欠勤するスタッフも、その状況を自分だけで長く抱えているのではなく、可能性が生じた時点で管理者や周囲のスタッフに相談したり、シフトの変更を申し出たりしやすくなるでしょう。
そうすれば、当日や直前になって急に休む、誰も予期していなかったシフトの穴が空くといった事態を大幅に減らせる可能性が高まります。何事も話しやすく、必要な時は互いに助け合える関係性と雰囲気、そうした職場づくりを目指すことが、誰にとっても働きやすく、また急な欠員の生じにくい体制を作ることにつながります。
まとめ
急な欠員に対応できない場合、業務に深刻な支障をきたし、顧客の信頼を損ねたり、事業全体の成績を大きく悪化させたりしてしまうことになりかねません。しかし、どんなに入念にシフトを組んでも、未来は誰にも予想できませんから、突発的で避けられない事態、やむを得ない事情が生じ、予定通りには回せなくなるといったリスクもゼロにすることはできないでしょう。
欠員を補充するために応援を要請するといったことが管理者の業務として発生しますが、実際には他の予定を入れているスタッフも多いなど、代替要員は容易に見つからず、対応に苦慮されている方が少なくないと思われます。しかし、取り巻く環境は厳しくとも、とれる対策が全くないわけではないはずです。システム面や環境面など、ソフト・ハードの両面で見直しを行い、普段から備えを充実させておきましょう。少しでも管理負荷とリスクを低減し、安定した店舗や事業の運営、生産性の向上を実現できるよう、ご紹介した対策を実践してみてください。
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