介護業界は、超高齢化社会の日本においてますます必要不可欠な存在となっています。以前は、家族が自宅で介護をすることが一般的でしたが、現在では共働きが増え、介護サービスを利用する人々も増加しています。このような介護スタイルの変化に伴い、介護施設は重要な役割を果たしています。
しかし、介護業界は慢性的な人手不足に悩まされており、一部の施設では十分なレベルのサービスを提供することが難しくなっています。人手不足の状況下で、介護施設からはシフトの管理やシフト表作成に関する相談や問題が多く寄せられています。
そこで、今回は介護業界におけるシフト表作成の問題に焦点を当て、その解決方法である自動作成のメリットについて解説します。
介護施設におけるシフト表作成のよくある問題・課題とは
介護施設におけるシフト表作成の問題、課題は多岐にわたります。まず一つ目の課題は、介護施設の特殊な業務内容による人材需要の変動です。介護施設では、利用者の状態や要望によって、スタッフの配置やスキルセットが頻繁に変わることがあります。そのため、シフト作成時には、各スタッフの能力や経験を考慮しながら、適切な人員配置を行う必要があります。しかし、人材の確保やスキルマッチングの難しさから、常に適切なシフト表を作成することは容易ではありません。
さらに、介護施設におけるシフト作成では、スタッフの希望や制約条件も考慮する必要があります。例えば、スタッフの学校や家庭の都合、休暇や有給休暇の希望などがあります。これらの要素を考慮しながらシフトを組むことは、パズルのような難しさがあります。常にスタッフの要望を満たしつつ、施設の適切な運営を維持するためには、緻密な計画と柔軟な対応が求められます。
まずは、介護施設におけるシフト表作成の問題、課題をいくつか挙げてみます。
その１ シフト表作成に時間がかかる
シフト表の作成は時間がかかります。実際にシフトを作成した経験のある方なら、シフト作成の難しさを体感的に理解できるのではないでしょうか。
シフトを効率的に作成するためには、シフト作成の前準備を十分に行い、定められた手順でシフトを作成していきます。前準備としては、スタッフの勤務希望を確認し、それに基づいて必要な人員を計算することが重要です。また、各スタッフのスキルや経験を考慮し、適切なポジションに配置することも必要です。さらに、シフト作成の手順を明確化し、スムーズな作業を進めることで時間を節約できます。
シフトを作成する作業の段取りを大まかに分けると「前準備」「シフトの作成」「確認・修正」があります。シフトはすき間時間を活用しながら作成することも可能ではありますが、シフト作成にかかる時間を合計すると、1日分の勤務時間に相当することもあります。ですから、事前に時間を確保し、集中して作業することが重要です。
シフトの作成で難しい点は、特定の日に必要な人手を確保できない場合があること、逆に、人手がさほど不要な日に出勤者が多くなることが挙げられます。これらの問題を解決するためには、柔軟な人員配置や代替案を考える必要があります。また、人件費の予算も決められているため、むやみにスタッフの出勤日を増やすことは認められていません。予算内で最適なシフトを作成するためには、スキルや経験に基づいたバランスの取れた人員配置が求められます。
そのため、シフトの作成はまるで難しいパズルに例えられることがあります。パズルのピースのように、スタッフの希望や予算、必要な人員数などを組み合わせて最適なシフトを作り上げる必要があります。
場合によっては、営業中はシフト作成以外の作業も行わなければならないため、会社内だけではシフトの作成が間に合わず、帰宅してシフトの作成を行う人もいます。中には、シフト作成の時間があまりにも足りないためか、帰宅時の電車内でシフトを作成する人も見受けられます。時間に追われる中でのシフト作成は大変な作業です
その２ シフト表作成が難しく、誰もができるものではない
シフト表の作成においては、様々な要素を考慮しながら完成させなければなりません。介護施設においてシフトを作成する場合、以下のような条件を考慮する必要があります。
まずは、スタッフの連続勤務日数の上限を設けることが重要です。また、連続勤務の考慮も必要です。連続勤務が続くと、スタッフの疲労が蓄積し、業務に支障をきたす可能性があります。続いて、1か月の休みの回数も考慮しなければなりません。スタッフに適切な休息を与えることは、彼らの健康とモチベーションを維持するために欠かせません。
夜勤の回数上限も設ける必要があります。夜勤は体力と精神的な負荷が大きいため、スタッフに適度な休息を与える必要があります。また、夜勤明けの翌日は公休にすることも重要です。十分な休息を取ることで、スタッフのパフォーマンスと健康をサポートすることができます。
さらに、出勤させるスタッフ数を確保することも大切です。介護施設では、必要なスタッフ数が常に確保されていることが求められます。また、看護師免許を持つ人の数にも注意を払う必要があります。看護師の必要性は日々変動するため、適切な人数を配置することが重要です。
そして、シフト作成においては、スタッフの組み合わせも考慮することがあります。例えば、AさんとBさんは一緒に夜勤をさせないようにするなど、スタッフ同士の関係性や相性も考慮しなければなりません。
シフト管理者としては、スタッフの希望を叶えることや、公平なシフトを作成することを心掛けるでしょう。しかし、これらの勤務条件を考慮しながらシフトを作成することは非常に難しいと感じるかもしれません。
シフトの作成は原則として管理者が行うものであり、誰でも簡単に作業ができるものではありません。そのため、新任のスタッフにいきなり明日からシフト作成を担当させようにも、すぐには引継ぎができません。
その３ そもそもの人手が足りていない
病院やコールセンター等の勤務と同様に、介護施設も人手不足が常態化していますので、シフト表の作成においては、必要な人数を割り当てることが難しくなります。特に夜勤は、十分なスタッフを割り当てることができずに困っているケースが多いです。
介護施設の方々からは、よくこのような相談を受けます。「本来であれば、夜勤には○人のスタッフを割り当てたいのですが、どうしてもスタッフが足りないため、仕事のできるAさんとBさんを含めた夜勤体制にしたいです」という声があります。
しかし、人手不足の状況であっても、利用者の立場を考えると、介護サービスの質を落とすことは原則として認められません。そのため、介護施設では、人手不足の中でも試行錯誤をしながら、サービスレベルを維持するためのシフト表を作成している場合が多いです。
例えば、スタッフ同士の協力体制を構築し、夜勤の人数不足を補うために、AさんやBさんのような優れたスタッフを含めた体制を作ることがあります。その際には、スタッフの希望や能力、勤務時間の調整などを考慮しながら、バランスの取れたシフト表を作成することが重要です。
人手不足が深刻な状況ではありますが、介護施設は利用者の安全と安心を第一に考え、サービスの質を維持するために努力を重ねています。今後も介護施設の現場では、人手不足の解消と効率的なシフト管理に取り組む必要があります
その４ 公平なシフト表が作成できない
介護業界では、利用者のために24時間365日サービスを提供する必要がありますが、その一方で、スタッフの負担が非常に大きいことが問題となっています。特に、シフトの割り当てにおいては、公平さを保ちつつ、スタッフ全員が同じくらいの負荷をかけられるようにする必要があります。
そのような現場においては、特定のスタッフに負荷がかかるようなシフトの割り当ては許されません。誰もが同じくらいの負荷がかかるように、誰もが同じくらいの休息をとれるようにしなくてはいけません。
シフト作成者は、スタッフの勤務条件を考慮しながら公平なシフト表を作成するために努力していますが、それでもなお、スタッフからのクレームが出ることもあります。さまざまな勤務条件を守りながら、誰もが満足するシフト表を作成することは、本当に至難の業といえます。
シフト作成者が、「勤務条件は守れたし、それなりに公平にできた」と判断したとしても、いざ、スタッフにシフト表を発表してみると、「どうして私だけこういうシフトなのか」「Aさんと比べると、私の負担が大きい」などのようなクレームを受けてしまうことも多いのではないでしょうか。
人が作成していると、そんなつもりはなくても、どうしても「えこひいき」していると思われてしまうものなのです。
公平なシフト表が作成できないということは、スタッフの満足度が下がってしまう原因になります。そうなるとそのまま利用者へのサービスの質の低下に繋がってしまいますので、非常に注意すべき問題なのです。
その５ 現場に寄り添う時間が減ってしまう
シフトを作成している管理者は、ずっとシフト作成だけをしているわけにはいきません。なぜなら、施設運営のマネジメント業務やスタッフの教育のほか、利用者の介護もすることもあるためです。
介護施設においては、利用者にどれだけ接することができるかが、サービスの質を向上させる重要な要素になります。
それにもかかわらず、シフト表の作成に時間がかかってしまっては、現場に寄り添う時間が減ってしまいます。利用者に接する時間を確保するだけでなく、一緒に働くスタッフの教育やフォローにも力を入れるべきでしょう。
シフト作成は管理者の重要な仕事ですが、それだけに集中することはできません。なぜなら、施設の運営やマネジメント業務、スタッフの教育など、他の多くの責任もあるからです。特に介護施設では、利用者との接触時間がサービスの質を向上させるために重要です。
しかし、シフト作成に時間を費やしすぎると、現場の時間が減ってしまいます。利用者との接する時間だけでなく、一緒に働くスタッフの教育やフォローにも十分な時間を割くことが必要です。シフト作成にかける時間を最適化し、現場のニーズに応えるためにも、管理者は効率的な方法を模索するべきです。
介護施設におけるシフト作成のコツとは？
ここまで、介護施設におけるシフト作成の問題や課題についてみてきました。問題や課題が多いとシフトの作成が大変に感じられますが、少し視野を広げて考えてみると、シフトをできる限り容易に作成するコツがみえてきます。
ここからは、介護施設におけるシフト作成のコツについてみていきます。
シフトを作成するときに行う作業をピックアップする
シフトを効率的に作成するなら、シフトを作成するときに行う作業をピックアップしてみましょう。先述した通り、シフトを作成する場合は「前準備」「シフトの作成」「確認・修正」の作業に分けられます。具体的なシフト作成の内容について、それぞれの作業に分けて説明します。
- 前準備
・日勤と夜勤に必要なスタッフの人数を把握する
・「人員配置基準」に基づき、1日あたりで介護職員が何人必要か、特定の資格を持つ人が何人必要かを把握する
・スタッフが研修に参加する日を確認しておく
・スタッフの休日希望日を取りまとめる
・特定の日に休日希望者が多い場合は休日を変更するようにお願いする
- シフトの作成
・白紙のシフトにスタッフの研修日と休日希望日を入力する
・最初に夜勤から決めていくと効率的
・「人員配置基準」に基づき、特定の資格を持つ人のシフトを決める
・必要な介護職員の人数に応じて、シフトにスタッフを割り当てていく
- 確認・修正
・できあがったシフトの内容を見直し、スタッフは足りているか、人件費がオーバーしていないかなどをチェックする
・シフトの修正が必要な場合は修正する
先に研修日と休日希望日を埋めていく
シフトを作成する場合は、先に研修日と休日希望日を埋めていきます。もし、研修日や休日希望日をシフトに埋めていく作業を後回しにしてしまうと、できあがったシフトを作り直す手間が発生するので注意が必要です。
シフトの作成で二度が手間が発生することを防ぐためにも、研修日と休日希望日をシフトに埋める作業は優先的に行います。
なお、特定の日に休みたいと希望した人が多くなった場合は、休む理由の優先度を考慮したうえで、他の日に休みを移動してもらうようにお願いしましょう。
スタッフの働きやすさを考えれば、休日希望を受け入れることが効果的ではありますが、特定の日に人手が不足して介護サービスの質が低下してしまったら本末転倒です。利用者の立場を考えると、場合によっては休日希望日を変えてもらうことも必要となります。
夜勤から先に決める
介護の仕事には日勤と夜勤があります。シフトを作成する場合は夜勤から先に決めていくことがポイントです。なぜなら、日勤は連続でできるのに対し、夜勤は連続することができないためです。
夜勤を先に決めておき、夜勤が終わったら「公休」として、その後に日勤を入れるとシフトが決まりやすくなります。
ここでは夜勤のシフトの一例を挙げてみます。なお、介護施設によっては1人で夜勤をする場合があります。シフトを作成する条件として、夜勤をするスタッフが8人、日勤と夜勤の二交代制、1人で夜勤をすることとします。
- （第1週）
日曜日：Aさん
月曜日：Bさん
火曜日：Cさん
水曜日：Dさん
木曜日：Eさん
金曜日：Fさん
土曜日：Gさん
※この週は、Hさんは夜勤なし
- （第2週）
日曜日：Hさん
月曜日：Aさん
火曜日：Cさん
水曜日：Dさん
木曜日：Bさん
金曜日：Fさん
土曜日：Eさん
※この週は、Gさんは夜勤なし
夜勤の翌日は夜勤明けの日となり、原則として夜勤の翌々日は公休とします。
そして、公休の次の日からは日勤が数日続く、というように、ある程度定型化したシフトを作成できればシフトを作成する時間を短縮しやすくなります。
人員配置基準に基づいたシフトを作成する
介護施設でシフトを作成する場合に抑えておきたい点として「人員配置基準」を考慮することが挙げられます。
人員配置基準とは、介護施設において適切な介護サービスを提供するために、一定数以上のスタッフを配置する基準のことです。
具体的な例としては、介護施設の入居者3人に対して常勤の介護職員を1人配置することが挙げられます。そのほか、看護師やケアマネジャー、生活相談員などの配置が必要な場合もあります。
これらの資格を持つ人は、入居者数が少なければ常勤で1人配置すれば問題はありませんが、入居者数が多い介護施設では複数人を配置することが求められます。そのため、シフトを作成する場合は人員配置基準を満たすことが必要です。
人員配置基準に基づいてシフトを作成する場合は、看護師やケアマネジャーなどの有資格者を先にシフトに組み込み、介護職員は入居者数に応じた人数を配置するようにします。
スタッフが少ない事業所ほど、人員配置基準を満たしたシフトの作成が難しく感じられる場合がありますが、介護のサービスレベルを維持するためにも、必要な人員をシフトに割り当てられるように心がけましょう。
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介護施設のシフト表の問題は自動作成で解決しましょう
ここまで、介護施設におけるシフト作成のコツについてみてきましたが、さまざまな条件を満たしながらシフトを作成する必要があるため、難しいと感じてしまいがちです。
しかし、シフト作成の時間を短縮し、なおかつ定められた条件を満たしたシフトに仕上げたいなら、シフト表を自動作成できる「シフト管理システム」の導入を検討してみませんか。
シフト表の自動作成における代表的なメリットをいくつか挙げてみます。
シフト表作成の時間が短縮できる
シフト管理システムを利用することにより、さまざまな勤務条件やスタッフの希望を簡単に登録することができます。これにより、手作業でシフトを作成する必要がなくなり、システムが自動的にシフトを作成してくれます。
シフト管理システムの利用により、大幅な省力化が実現されます。これまでのように自宅に帰ってシフトを作成する必要がなくなるため、時間と手間を節約することができます。
シフト表作成にかかる時間を短縮することで、その時間を他のマネジメント業務や利用者へのサービス提供に割り当てることができます。これにより、より効率的に業務を遂行することができるだけでなく、利用者へのサービス品質も向上させることができます。
誰でも作成ができる
シフト表を手作業で作成する必要がないため、時間と労力を節約できます。シフト管理システムが自動的に作成することで、煩雑な作業をする必要がなくなります。システムの利用方法さえ理解していれば、誰でも簡単にシフト表を作成することができます。これにより、シフト作成の担当者が変わってもシフトの質を保つことができます。
介護施設の運営においても、スムーズなシフト作成を実現し、支障が生じることが少なくなります。シフト作成の手間を軽減することで、職員の負担を減らし、より効率的な運営が可能となります。
公平なシフト表が作成できる
シフト表を作成する際に、勤務条件を登録することは非常に重要です。スタッフの勤務日数や公休の日数などを正確に把握することで、公平なシフト表を作成することができます。このようにすることで、スタッフ全員が同じ待遇で働けるため、不公平な扱いがなくなります。
さらに、システムが自動的にシフト表を作成することで、手作業によるミスや人為的な偏りが少なくなります。これにより、不公平なシフトが起こりにくくなり、スタッフ全員が公平な待遇を受けられることが保証されます。
スタッフにとっても、公平なシフト表が作成されているという安心感があります。自分の勤務日数や公休の日数が他のスタッフと同じであることが分かれば、不公平な扱いを受ける心配がなくなります。そのため、スタッフの満足度も上がり、仕事へのモチベーションが高まるでしょう。
また、シフト表作成者にとっても、公平なシフト表を作成するという負担が軽減されます。シフト表作成者は、スタッフの要望や制約を考慮しながら公平なシフトを作成する必要がありますが、自動的なシステムによってその負担が軽減されます。そのため、他の業務に集中することができ、より効率的に業務を遂行することができるでしょう。
▼ 介護施設におけるシフト表自動作成による成功事例は、こちらをご参照ください
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まとめ
介護現場におけるシフト表作成の問題点と、その解決策である自動作成のメリットについて、今回は詳しく解説してきました。介護業界は人手不足の中、シフト表を作成しなければならず、その難易度は非常に高いです。しかし、自動作成システムを活用することで、この問題を解決できるのです。
シフト作成の業務にフォーカスしている今回の記事ではありますが、シフト作成だけでなく、他の業務も効率化できるシステムがたくさん存在しています。例えば、介護記録のデジタル化や医療機器の導入など、さまざまな面で業務をサポートしてくれるシステムがあります。これらのシステムを上手に活用して、少しでも業務の負担を減らすことを検討してみてはいかがでしょうか。
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