早朝手当とは

早朝手当は、深夜勤務の直後や早朝に勤務する労働者に対して支払われる手当です。
早朝勤務について労働基準法に具体的な規定はありませんが、通常とは異なる時間帯の勤務による身体への負担や、生活リズムの乱れに対する補償として企業が独自に設定しています。
また一般的に労働者を確保するのが難しい時間帯であり、その対価として支払われる場合もあります。
早朝手当の適用時間
早朝手当が適用される時間帯は職場や業界によって異なりますが、午前5時から午前9時頃としているところが一般的です。例えばある企業では午前6時から午前9時、別の企業では午前5時から8時までを早朝手当の支給対象時間としています。
夜間手当や深夜割増賃金は午後10時から午前5時までと法律で定められているため、早朝手当はその時間帯の延長線上に位置づけられています。
早朝手当を設けていない企業もありますが、いずれにせよ深夜から、または早朝から勤務し所定労働時間である8時間を超過した場合は残業代を支払わなければなりません。
早朝手当の計算方法
早朝手当の計算方法は企業によって異なりますが、一般的には「時給に一定割合を加算する方法」と「固定額を支給する方法」が採用されています。
時給に一定割合を加算する方法では、例えば時給の25%を早朝手当とする場合、時給1,000円の従業員が早朝勤務をすると時給は1,250円になります。
一方、固定額を支給する方法では、1日あたり、または1時間あたりの定額手当が支給されます。例えば、1日500円の手当を支給する場合、週3日早朝勤務をすれば、週に1,500円の早朝手当が支給される計算となります。
ただし、早朝手当は残業代や深夜手当と重複する可能性がある点に注意が必要です。残業代や深夜手当は、いずれも法定基準に基づいて計算されるため、早朝手当が重複して支給されることはありません。
早出残業は時間外労働になる
早朝手当は早朝勤務に対する対価として支払われる手当ですが、その計算方法や支給額は、個々の企業の就業規則によって異なります。しかし、早朝勤務が時間外労働に該当する場合には労働基準法に基づいた割増賃金を請求できる可能性があります。
特に、通常の始業時刻よりも前に出勤し業務を開始する「早出残業」は、労働基準法上の時間外労働に該当します。
例えば通常の始業時刻が午前9時で、午前8時から業務を開始した場合、この1時間は時間外労働とみなされ、割増賃金の対象となります。時間外労働には、通常の時給の25%以上の割増賃金を支払うことが法律で定められています。
早出残業が企業によって早朝手当と混同されている場合もあるため、正確な区別が重要です。
早朝出勤のメリットとデメリット

早朝手当は労働力の対価となりますが、従業員の働き方やライフスタイルに大きく影響すると考慮した上でシフト管理を行う必要があります。早朝出勤にどのようなメリット・デメリットがあるのかみていきましょう。
早朝出勤のメリット
早朝出勤の最大のメリットは、通勤ラッシュを避けられる点です。多くの人が出勤する時間帯を避けることで、電車や道路の混雑を回避し、ストレスフリーな通勤が可能になります。
また、この時間の労働を希望する人が少ないため採用されやすい傾向にあり、早朝の静かな時間帯に集中して作業できる環境が整うこともメリットの一つです。多くの職場では朝の時間帯は電話や来客が少なく、効率的に業務を進められます。
さらに、早朝勤務を終えた後の午後の時間を有効活用できるため、家事や趣味、ダブルワークなどほかの作業に時間を確保しやすくなる点も魅力です。
早朝出勤のデメリット
早朝出勤はデメリットも伴います。その一つが、早起きが必須となり十分な睡眠時間が確保できない場合がある点です。特に夜型の人にとっては大きな負担となる可能性があります。
また、早朝勤務が重労働や長時間労働につながり、疲労が蓄積されるリスクも高まります。例えば、早朝にピークタイムを迎える職場や、早朝から出勤したにもかかわらず勤務時間が8時間を超過するといったケースです。
従業員が早朝出勤を選択する場合、企業側では健康管理に配慮したシフト作成が求められます。
早朝手当がある仕事

早朝手当が支給される仕事は多く、早朝から業務を開始する必要がある職種が多く含まれます。以下に代表的な例を挙げて解説します。
24時間営業のコンビニ
24時間営業のコンビニでは、早朝手当が支給されるケースが一般的です。特に、午前5時から9時までの時間帯に勤務する場合に、早朝手当が適用されることが多いでしょう。
早朝勤務では、通勤・通学ラッシュ時の午前7時半から9時くらいまでが忙しい時間帯とされています。特に駅や会社、学校周辺のコンビニは客数が増加して行列ができることも多く、迅速かつ効率的な接客が求められます。
また品出しや清掃といった日常的な業務に加え、朝食用の食品が多く売れる時間帯であるため、混雑する前に品出しや陳列の調整、食品の鮮度管理なども重要な業務になります。
開店準備作業があるスーパー
スーパーでは、開店前の数時間を使って店舗の準備を行うスタッフが早朝手当の対象となることがあります。主な業務としては商品陳列や清掃、レジの準備などが挙げられますが、これらの作業は通常午前6時から午前8時の間に行われることが一般的です。
この時間帯には、開店直後にスムーズな営業が行えるよう、細かな準備を徹底する必要があります。また生鮮食品の補充や陳列、その他納品された商品の検品なども行われます。
開店後もそのまま働くケースもありますが、来店客は少なめのため黙々と作業をしたい人に適しています。
朝刊の配達を行う新聞配達
新聞配達の仕事は典型的な早朝業務の一例です。配達員は多くの場合、午前3時から午前6時頃までの時間帯に働きます。新聞配達だけでなく、トラックからの荷下ろし、チラシ広告の折り込みなどを手作業で行う場合もあり、その後新聞を各家庭に届けます。
天候にかかわらず業務を行う必要があり、一定の体力と根気が求められる仕事です。こうした業務の負担を軽減するため、多くの新聞販売店では早朝手当を設けています。早朝手当に加え午前3時から5時までは深夜手当もつくため、限られた時間で効率的に働けます。
朝刊・夕刊のどちらか、またはその両方など人によってシフトは異なりますが、自分のペースで働ける点が魅力といえます。
早朝から営業しているカフェ
カフェでは、早朝から営業する店舗においてスタッフが開店準備や接客業務を担当する場合があります。特に通勤客向けに朝7時前から営業を開始する店舗では、午前6時~9時頃までのスタッフを募集し、早朝手当を支給するケースがあります。
仕事内容は食事の仕込みやドリンクづくり、清掃、メニューの準備、レジ対応などです。特に駅チカ、駅ナカのカフェなどは出勤前に軽食やドリンクを持ち帰る利用客も多いため、レジやドリンクづくりの迅速な対応が求められます。
比較的忙しいといえますが、店舗によってはバリスタとしての知識も身につくため人気のある職種ともいえるでしょう。
仕込みや形成を行うパン屋
パン屋は、開店時に焼きたてのパンを提供するため早朝から勤務する特徴的な仕事です。一般的に、午前2時や3時といった深夜から仕込みや成形、焼成といった作業が始まります。そのため深夜手当や早朝手当が支給されることが多いです。
シフトによっては午前10時頃まで勤務し、包装やレジ対応、清掃などの業務を行うこともあります。パンづくりだけでなく、お客様との接客や店舗の管理など幅広い業務にかかわる機会があるでしょう。
早朝勤務は、体力的な負担が大きいという側面もありますが、パンづくりが好きな方にとっては、魅力的な職業です。
製造やパック詰めを行う弁当屋
弁当屋では、午前4時や5時といった早朝から調理やパック詰めなどの作業が始まります。そのため早朝手当が支給されるケースも多く、短時間勤務でまとまった収入を得やすい点が魅力です。
また早朝勤務だけでなく、ランチタイムに向けた調理や接客など様々な業務があり、店舗によっては早朝のみの勤務、お昼頃までの勤務など、柔軟なシフト制を採用しているところも多いとされています。
体力だけでなく、衛生管理や調理の知識、来客とのコミュニケーションなど幅広いスキルが得られる点などもアピールポイントになります。
朝食メニューを提供しているファミレス
ファミリーレストランでは、朝食メニューを提供する店舗において早朝勤務のスタッフを配置するところも多くあります。これには、開店前の準備や仕込み作業などキッチンの仕事、早朝の来客対応、清掃などホールの仕事に分かれています。
午前6時から午前9時の間に勤務することが多く、その場合は早朝手当が支給されます。立ちっぱなし、重い物を持つなど体力が必要な職場ですが、柔軟なシフトを組める、従業員割引や賄いなど、福利厚生を利用できるなどで求人しやすい職種といえます。
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まとめ

早朝手当は、早朝勤務を行う労働者の負担を軽減し、働く意欲を高めるための重要な制度です。適用時間や金額は職場ごとに異なりますが、シフト作成を行う場合は労働者の生活リズムや企業の業務効率を考慮して柔軟に設定しましょう。
早朝手当を含む給与計算や効率的なシフト管理を実現するためには、勤怠管理システムの活用が非常に有効です。シフト管理システムを導入することで、正確なシフト作成や早朝手当の計算が簡便化され、企業の業務効率化を図れます。
また従業員にとっても給与計算の透明性が向上するため、働きやすい環境が整い充実したキャリア形成にもつながります。
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早朝手当に関するQ&A
Q1. 「早朝手当」とは何ですか?また、法律で支払いが義務付けられていますか?
A1.早朝手当とは、通常の勤務時間より早い時間帯(一般的に午前5時~9時頃)に働く従業員に対し、企業が独自に支給する特別な手当のことです。早朝勤務による身体的負担や生活リズムの乱れを補い、労働意欲を高める目的があります。深夜手当とは異なり、労働基準法で定められた制度ではないため、支払いは企業の任意となります。
Q2. 「早朝手当」と「早出残業」の違いは何ですか?
A2. 「早朝手当」は、企業が任意で設定する福利厚生の一環です。一方、「早出残業」は、本来の始業時刻より前に業務を開始することで発生する「時間外労働」を指します。時間外労働に対しては、企業は法律に基づき、通常の時給の25%以上の割増賃金を支払う義務があります。手当と割増賃金は明確に区別される必要があります。
Q3. 早朝手当が支給されることが多い仕事には、どのような例がありますか?
A3. 開店準備や早朝のサービス提供のために、朝早くから業務を開始する必要がある仕事で多く見られます。具体的には、24時間営業のコンビニ、スーパーの開店準備、新聞配達、早朝から営業するカフェ、パン屋、弁当屋、朝食メニューを提供するファミリーレストランなどが挙げられます。