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AIと数理最適化技術の違いとは?それぞれの特徴とシフト作成への適用ポイント

ライター: 勤務シフト作成お助けマン編集部

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近年、データ活用によってさまざまな社会問題やビジネス課題を解決しようとする動きが活発化しています。DX推進やビッグデータに高い関心が集まっているように、データ活用が可能な領域は年々拡大しており、業種業態、企業規模を問わず、データの価値を正しく理解した活用ができなければ、今後の世界で生き残ることは難しい時代になってきているとも言えるでしょう。

今はまだ、その価値が正しく評価されず、放置されたままになっているとしても、これまでの事業運用で蓄積された企業内に存在する多様なデータは、有効に活用することで力を発揮し、ビジネス戦略へと反映させていくことで、効率良く今後の事業を拡大・成長させていくことが可能になるものです。

こうしたデータ活用領域の技術発展は目覚ましく、最新の技術や手法も身近に導入できるかたちで次々に市場へと降りてきており、これらを賢く用いていくことが、ビジネスにおける成功の秘訣となりつつあります。

その中でとくに高い関心を集めているものの代表格としてAI(人工知能、広義のAI)があります。AIは大きく分けて機械学習やディープラーニングといった技術を含む学習型のAI(狭義のAI)と数理最適化技術(最適化AI)があり、それぞれ認知度を高めてきました。

しかし、どちらもその実態が十分に理解されないまま、期待だけが高まっている面も否定できません。ソリューションとして注目しているものの、2つの技術・手法の違いもよく分からないといった経営者の方も少なくないでしょう。そこで今回は、(狭義の)AIと数理最適化技術の理解を整理しつつ深めるところから始め、実際の活用シーンとしてシフト作成業務を取り上げながら、ポイントを分かりやすく解説していきます。


  1. AIとは
  2. 数理最適化とは
  3. AIと数理最適化の違い
  4. AIを活用したシフト作成
  5. 数理最適化技術によるシフト作成
  6. まとめ

勤務シフト作成お助けマン

 

AIとは

AIとは、Artificial Intelligenceの頭文字をとったものであり、日本語では人工知能と訳されています。私たち人間は、外界から受け取った多様な情報を脳内で処理し、判断や推測を実行していますが、こうした人間の知能の活動を、コンピュータによって再現する技術の全体が、AIと言えます。

人が脳で考え、実行する活動全般、言葉を認識したり発したり、絵を描く、計算する、ゲームをする、ものを作るなど、あらゆる知的活動をプログラムで人工的に再現し、実行可能にする技術とイメージすれば良いでしょう。

AIの現状

現時点でAIに関し、厳密な定義が存在するわけではなく、研究者や研究機関、話者によって解釈や認識にいくらかずれがあり、AI全盛のブーム的雰囲気も相まって、きわめて多義的に、曖昧に拡張され、AIといえば全能のように扱われている節もあります。

加えて現在もなお開発途上ですから、AIやAI技術という時、どのようなものが指されているのかには、注意して接する必要があるでしょう。

一般にイメージされやすい、何でも自ら考えられるロボットが備えるような頭脳、まさに人間の知能のようなAIは、とくに「汎用型AI」と呼ばれますが、これはまだ現時点で完成に至っていません。最終目標として開発を目指す研究は行われていますが、依然ハードルは高く、実現の目途が立っていない状況です。

これに対し、技術として導入ケースを耳にするようになってきている、すでに実現済みのAIは、全て何らか用途を限定した「特化型AI」と呼ばれるものです。「絵を描く」なら「絵を描く」AI、「言葉を認識する」なら「言葉を認識する」AIといったように、個別の知能活動を専門に行うもので、顔認証や自動運転車に搭載されるAI、囲碁将棋で人間と勝負するAIなども、この特化型AIのひとつです。

AIと機械学習、ディープラーニングについて

AIを実現する技術・方法として、広く知られているひとつが「機械学習」です。機械学習は、データを分析する手法であり、その名の通りコンピュータ(機械)がデータを取り込み、自ら学習して、対象データの背景にあるルールやパターンを発見するものです。学習により、その判断や精度を向上させていくアルゴリズムが特徴的で、とくに予測精度の高さが重視されます。

機械学習の方法には、正解データを教えていく「教師あり学習」と、正解か否かは問わず大量のデータを取り込ませる「教師なし学習」、さらに出力される結果にスコアをつけ、最も望ましい結果を出すための行動を学習させていく「強化学習」の3種類があります。

教師あり学習では、正しい過去データから特徴基準を構築し、未知のデータと照らし合わせるかたちで判別させるなど、データから将来起こりそうな事象を予測することに用いるのが一般的です。

これに対し、教師なし学習は、一定基準の大量データを受けてデータの分布状況を学習、未知のデータがこれまでのどのグループ特徴に近いか判別し、データ精度を上げていきます。レコメンド機能などはこれを活かした代表例です。

強化学習は、行動を繰り返し、望ましい結果に応じて「報酬」が与えられ、報酬が大きくなった行動に高いスコア、報酬がなかった行動に低いスコアをつけていくことで、より効率の良い行動が取れるように学習していくものであり、ゲームのAIやロボット制御などに使われています。

AIは、これら3つの機械学習方法で力をつけていきますが、この学習を支えるものに「ニューラルネットワーク」と呼ばれる技術があります。ニューラルネットワークとは、人間の脳にあるニューロン(神経細胞)の働きを模したモデルであり、このニューラルネットワークをさらに複数の層として重ね、多層化したもの、それにより学習能力やデータ分析能力を大幅に高めることを可能にした技術が「ディープラーニング」です。

ディープラーニングは、機械学習の効率や精度を飛躍的に高める技術手法として、昨今のAI開発における主流をなすものとなっています。コンピュータはディープラーニングにより、与えられたデータから自ら独自に特徴を見出し、定義して学習することが可能になりました。

どういった特徴に着目し、抽出して学んでいるかはブラックボックス状態で、人間から理解することはできません。そのため、人間には気づかなかったことの発見や、人間が気にも留めていなかった共通特徴を見出すこともしばしばです。

しかし、まだ現段階では人間のように何でも柔軟に判断できる状態や、人間を超えた複雑な予測をあらゆる場面で実行できるといったレベルには到達していません。あくまでも何らか特化した目的のもとで学習を重ね、その設定された目的に関する判断を下す、その精度を高めてきているという水準です。

ディープラーニングの登場により、AIはかつてに比べると大いに進化を遂げ、まさに“知能”として成長しつつあると言えますが、なお万能ではなく、適用に向いている領域と、そうでない領域があるのです。

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数理最適化とは

「数理最適化」とは、現実にある問題を数理モデル(数式)によって定義し、制約条件を満たしながら問題解決への最適化を図る変数値を求める手法のことを言います。もう少しかみ砕いて言うならば、仕事や暮らしの中で遭遇するさまざまな課題に対し、なるべく安く、また早く目的地に到達するといった、具体的に叶えたい目標を達成するため、何がベストな方法か、数理的なアプローチで機械的にはじき出すことと言えるでしょう。

たとえば「現在地から新宿駅に行く」、「効果の高い広告を出す」といった課題が目の前にあるとするなら、この課題が数理最適化における「最適化問題」と呼ばれるもので、この課題に向き合うにあたってのさまざまなルール、背景要素が「制約条件」です。

「新宿駅に行く」場合、時間も交通費も節約してたどり着ける方法が最適解と考えられますし、「効果の高い広告を出す」というなら、予算内でより多くの対象に広告を届けたい、クリック数を最大化したい、広告出稿後の売上を伸ばしたいといった狙いがあり、それを最も優れて満たせる方法が最適解になります。

こうしたかかる時間やコスト、顧客リーチ数、売上といった、最小化や最大化を図りたい対象について、その数値を数式で表現したものを、数理最適化における「目的関数」と言い、この目的関数を最小化または最大化する変数を算出することが「最適化」なのです。

数理最適化も機械学習などと同じデータ活用技術のひとつですが、現実にある問題を数式に翻訳変換し、関数としてシミュレーションを行って最適な解を出すという点が大きな特徴です。

実際に適用する際には、まず問題の目的関数と制約条件を数理モデルとして定式化し、それを解くのに適したアルゴリズムを複数の中から選択します。そして目的関数を狙いに近づける、最小化または最大化させられる変数値を出し、それを問題における意思決定へ反映させることとなります。

一度定式化することができれば、状況変化による新たなデータが与えられるたびに、このアルゴリズムを通して最適な変数値が即座に自動算出されるため、効率的にベストな振る舞いができるようになる、問題の解消や目標の高度な達成が継続的に図られていくと見込まれます。

数理最適化技術を使った、計画業務の自動化についてはこちらを参照
計画系ソリューション|JRシステム

AIと数理最適化の違い

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AIと数理最適化の基本的な概要を確認しましたが、時折、AIの技術と数理最適化技術はどう違うのかと質問されることがあります。

とくにディープラーニング(深層学習)が大きな成功を収め、研究・開発が大いに進んでAIがジャンルを問わず話題になるようになった第三次AIブーム以降の、AIが何でも可能にする、人間の力を超えて既存の属人的仕事を奪う、いよいよシンギュラリティが現実味を増してきたといった論を受けて、数理最適化技術などの必要性が見えづらくなり、違いも理解しにくくなっているような印象があります。

実際のビジネスソリューションにもAIの機械学習やディープラーニングといった先端技術を取り入れる動きが活発となり、そうした流れと同時進行で、データ活用の重要さが強く認識されるようになってきたことも影響している可能性があるでしょう。

AIを支える機械学習やディープラーニングの技術と、数理最適化技術の違いということを整理するならば、次のように解説することができます。

先述のようにディープラーニングは機械学習の一手法であり、機械学習の技術はデータ活用のひとつの手段たるものです。多様なデータを活かしていく上でその手段には実にさまざまなものがあり、統計解析やBIツールによる可視化、線形回帰分析、ロジスティック回帰、グレイモデル、そして数理最適化もそのひとつです。

よってAIの技術も数理最適化技術も、データ活用、分析にかかる手段という共通点を持っています。しかし、どのようなシーンで用い、何に有効かという点で、それぞれ違いがあります。

まずAIの機械学習やディープラーニングは、過去データをもとに「この後どうなるか」を予測したい時や、対象が「何であるか」を認識、分類したい時に役立ちます。またデータから規則性を自動的に独自で学習し、次の予測や認識に活かしていくこともできます。

一方、数理最適化は、目的を叶えるために「結局どうすれば良いのか」、具体的な計画や意思決定につながる答えを得たい時に有用です。規則性や前提となるルール、条件は人間が問題として落とし込み、設定してやる必要がありますが、データとルールは分かっているのに、最良の解決策を導き出すことが困難なシーンにおいて問題を解消し、ベストな意思決定を助けてくれるのです。

ECの「おすすめ」機能、レコメンデーションで考えてみましょう。シンプルなレコメンデーション機能は、各ユーザーの購買履歴や属性データなどから購買確率の高い商品を推定し、表示させることで成り立ちます。これは将来どうなるかを「予測」するデータ活用ですから、機械学習によって実現させられます。

しかし、ここで商品の在庫に限りがあり、その中で売上を最大化するにはどうすれば良いかという問題がかかってくると、状況が変わります。機械学習の予測では、どのユーザーにも購買確率の高い商品をレコメンドしていくため、必然的に人気の商品、話題の商品が高頻度に表示されるようになります。しかし、在庫に限りがあり、売り切れてしまえば購買・注文成立につながりようがないと、必要以上の露出表示は無駄ということになるでしょう。売上の最大化として考えていくと、商品カテゴリの間での露出頻度バランスや、レコメンド枠における表示数・表示回数の制限なども考慮して「おすすめ」を決定する必要があり、判断は複雑になってきます。

そこで、ここに数理最適化技術を導入すると、在庫数や表示の回数・バランスといった制約条件の中で、表示させるに最も適切なものを決定することが可能になるのです。こうした考え方から、機械学習で「予測」した結果に数理最適化を用い、おすすめの「判断(意思決定)」を実行、購買可能性を高めて売上を最大化する、最適なレコメンデーションを実現させるといったことが、実際に行われています。

このように、機械学習やディープラーニングは主に予測を担い、数理最適化は予測結果などをもとに最適なアクションを見つけ出す、その意思決定を支援する、と考えることができます。

 

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AIを活用したシフト作成

シフト作成業務は非常に複雑で手間のかかる作業であり、効率化が望まれるところであるため、昨今はAI(人工知能)を活用したシステムも誕生しています。現状としてどのような特徴があり、導入メリットが見込めるのか、みていきましょう。

AIを活かしたシフト作成システムでは、データをもとに機械学習を重ね、これまで完全に人の手で行っていた作成業務を、より楽に実行可能となるよう、半自動化で支援する仕組みが搭載されています。主に繁忙期や閑散期、人件費予算のデータ、従業員の勤務条件・希望傾向などを学習し、法律や企業内で定めたルールに則った人員配置を作っていくスタイルになっています。

AIに学習させるのは、これまでシフト作成時に考慮された条件や従業員の希望、その他状況要素と、実際に作成・完成形となったシフト計画のデータです。前者が条件や状況の入力データで、後者が正解の出力データに当たります。この入力と出力をセットとする教師データを取り込み、過去のある日にある従業員がどのように勤務可能だったか、前日はどうだったか、シフト作成者は過去のある日にその従業員を勤務させた(させなかった)といった内容を学んでいくわけです。

ここからどういった条件や状況の場合に、どのようなシフト計画を正解として出し、従業員を働かせれば良いのか、規則性を見出し、新たなシフト作成を再現するようにして提示していきます。AIはディープラーニングによって学習を重ねていきますから、システムを使えば使うほど、正解に近い結果、つまり担当者が丁寧に作成したシフトに近いものが自動的に得られるようになると考えられています。

AIによるシフト作成のメリット

1.業務負荷の削減

AIを導入したシフト作成システムでは、各従業員のシフト希望を集約し、元データとして転記するなど単純作業は完全に自動化させることができます。また、時間帯ごとの必要人員に合わせ、希望データともすり合わせながら、過去の事例を参照し、人員調整や配置計画を立てるなどの業務を任せることも可能です。

こうしたシフト作成における業務負荷を削減し、担当者や店長らが、過剰にシフト作成・管理に手間取るといった事態を防いで、よりコアな業務、本質的な業務に注力できる体制を確保できるようになるというメリットを生み出します。

2. 法律や就業規則などの遵守徹底

AIは学習したデータを正確に反映させるため、労働基準法や就業規則など、シフトの人員配置にかかるルールを徹底させられるようになります。頻繁な見直しなどで担当者がキャッチアップしていくことが困難な場合や、注意してチェックしていても発生しやすい確認漏れ、ミスによる違反をなくしたいといった場面で大いに力を発揮するでしょう。

3.過去データ分析によるシフト品質の向上

AIを活用すれば、これまで人の手で作成し、運用させてきた過去のシフトデータを活かし、良好な結果に結びついたものの傾向を分析、学習して、一定品質以上のシフト作成を効率良く叶えることができるようになります。

さまざまな要素を加味し、作成していく高度な作業であるため、属人化しやすく、担当者の力に左右されやすい、異動や離職があると貴重な知見やノウハウが失われ、引き継ぎが困難で、作成されたシフトの品質にばらつきが生まれやすいといった、シフト作成業務における問題点を解消しやすくなるでしょう。

AIによるシフト作成のデメリット

1.変化に対応させにくい

シフト作成をAIで半自動化・自動化させる場合、学習データと事前に設定したルールやパターンをもとに、実行させることとなります。しかし、実際にシフト作成で考慮すべき現場の経営環境の変化や、対象となる従業員の入れ替わりといった事象は頻繁に発生しうるものです。その結果、過去データから機械学習によって自動作成されたシフトでは、実情に合わないということが出てきてしまいます。

職場環境として、事業のサイクルがほぼ決まっている、従業員の入れ替わりもめったにない、個々の従業員が抱える事情もあまり変化しないといったケースであれば、問題ありませんが、変化スピードが速い職場であればあるほど、AI作成のシフトでは回らなくなってしまう可能性が高まります。

2.適切なデータ蓄積そのものが難しい

シフト表の評価というものは単純に下せるものではなく、ある人にとって高評価であるものが、ある人にとっては低評価であるというケースもしばしば発生します。そのため、どれを正解、どれを優位度の高いものとして学習させるか、AIへの入力に困難を生じることがあり得ます。

また、現在の変化しやすいビジネス環境にあっては、なかなか同条件で多くのシフトが作成されるということがありません。経営環境による運用状況や事業内容、人員数の変化、従業員の入れ替わり、部署の再編など、シフトの作成条件を根本から変えてしまうような変化がしばしば発生します。

そうした中にあって、1カ月単位での作成を行っているとしたら、ひと月に得られるシフトのデータはわずか1つです。1週間単位で作成していても月に4~5つにすぎません。膨大なデータの蓄積と繰り返しの学習によって進歩していくAIには、本来の力を発揮できるだけの環境が揃いにくいと考えられます。このように、学習に適した適切なデータ蓄積そのものが難しいケースが多いことは、シフト作成にAIを用いる上でのデメリットといえます。

3.個別考慮がしづらく修正が増加しやすい

先述の変化に対応させにくいというデメリットとも似ていますが、AIを活かしたシステムで自動作成したシフトの場合、人間であれば柔軟に取り込めるような、個別の特殊事情を反映させられないというデメリットがあります。

例えば、従業員同士の人間関係の面で、今回は少しイレギュラーな組み方をしておく方が良いと考えられた場合や、新人指導の関係から違った体制で臨もうとする場合、急なトラブルの発生などから業務内容の負荷が通常と異なるバランスになると予想される場合など、細かなルール化を行えば反映させられるケースもありますが、基本的にはこれらの事情を加味したシフトを自動作成することはできません。

結果として、自動化プロセスによってシステムが作成したシフトをベースとしつつ、手動で修正を加えていくといった作業が必要になり、場合によっては一から作成する以上に手間がかかる、新たな修正という業務対応で、かえって作成担当者の負荷を増大させてしまうといった事態に陥るリスクもあります。

AIによるシフト作成の注意点

昨今のAI関連技術における進展は目覚ましく、さまざまな領域での活用成功事例が多く報告されていることもあり、人間が行うと面倒で複雑な作業=AIに任せればスピーディで正確、完璧な作業結果をすぐに得られるようになる!と安易に考えてしまいがちですが、実際にはまだまだ得意不得意があり、それを人間が判断して的確に導入してこそ、力を発揮するという段階です。

「AIがあらゆる状況を加味し、自動的に最適なシフトを作成してくれる」というところまで進化したシステムとなれば最良ですが、現状ではデメリットで指摘したような限界があります。

シフト作成という業務があまりに煩雑で手間のかかるものであるため、その作業を合理化する、効率化するのだという目標が一人歩きし、AIによる全プロセスの自動化でこれをクリアしたと考えていると、事業の遂行・運用という全体の業務を改善する最適なシフトを作るという、本来目指すべき重要なポイントが抜け落ちてしまいかねません。

継続的な業務改善につながるベストなシフトが効率良く作成できてこそ、意味のあるシフト作成作業の見直しになるはずです。

AI技術を活かしたシステムが得意とする、メリットに挙げられたような内容は、AIでなくとも実現できる場合があります。希望シフトの収集整理や、労務コンプライアンスの徹底などミスの発生防止といった部分などは、その典型的な例であり、AIに縛られる必要はありません。

AIの活用は、その限界と得意領域をよく理解した上で検討することが大切です。とくにシフト作成・管理のような、細やかな配慮も必要とし、多くの可変要素が関わってくる高度な作業分野では、AIもあくまで手法のひとつであり、他の技術や手法、人間の手と組み合わせて用いていく必要があることを理解しておきましょう。

数理最適化技術によるシフト作成

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数理最適化技術は、すでにある条件に対し、人間が見出すのに苦労する最適解を効率良く、高精度に出力することを得意としています。影響する個別の関連データや、現実にかかる制約、ルールが明らかとなっているのに、解決策となる方法が見つからない、どれが最善か判断しづらいシーンで、人間の意思決定を助けてくれます。

AIの機械学習やディープラーニングのように、膨大な教師データを学習させてアルゴリズムを作る、抽象化のプロセスを経由させるといった必要はありません。複雑な条件が絡み合う現実問題の整理とその数式化が行えれば、きちんと機能します。

この特徴を踏まえると、シフト作成業務が抱える問題は、シーンとして数理最適化とのマッチ度が高いと考えられます。

シフト作成の場合、店舗であればこの時間帯は何人程度で回すといったサイクルのルールや、アルバイトと正社員のバランス、従業員の希望などを考慮し、労務上の問題も生じさせないようにすることが必要です。24時間体制の工場などでは、従業員により扱える機械や能力に差がある場合もあるでしょう。

さまざまな条件を加味し、限られたリソースの中で必要な労働力を過不足なく割り当て、コストを最小限に安定した事業運用を行う、繁忙期にもしっかりと対応し売上を最大化するといったシフトを組むことができれば理想的です。

しかし機械的に考えられる組み合わせパターンは膨大で、それに各従業員の希望や能力、諸事情を考慮して実際にシフトを作成するとなると、熟練した担当者の力を持ってしても容易なことではありません。結果として大きな業務負荷の作業となり、手間も時間も要してしまうのです。

ところが、このシフト作成問題は、数理的な組み合わせ最適化問題として扱うことができます。人的リソースとそれぞれの時間帯に必要な人員数、各業務で要する工数、労務コンプライアンスからはじき出される業務量と時間などはあらかじめ決まった条件であり、すぐに数値化することが可能です。

シーズンや繁閑タイミング、従業員の希望、スキルといった条件も、ある程度の単純化を行うことにより、数式に変換することができます。よって、複雑に絡み合う多種多様な制約条件は数式化することが可能であり、コストを最小化して生産性を最大化する、各従業員の公平性を叶えるなど、狙いを最適化したい値、目標関数として表現すれば、数理モデルを構築し、数理最適化技術で解を得ることができるのです。

数理最適化技術を活かしたシステムであれば、この最適解がシフト案として出力できるため、シフト作成にかけていた手間や時間を大幅にカットすることが可能になります。効率良く、事業目標に適したシフトを正確に組むことができるため、担当者の業務負荷軽減だけでなく、ビジネス課題の解消や事業成長も大いに期待できるでしょう。

数理最適化技術によるシフト作成のメリット

1.加味すべき条件が多く、多岐にわたっていても問題ない

シフト作成における悩みとして広く認められるものには、考慮すべき条件、守るべきルールなど制約が多すぎて、全てを満たすようなシフトが組めない、熟練者が取り組んでも作成に膨大な時間がかかるといった課題があります。できる限り従業員の希望にも添うものとしたいけれど、そこまで配慮してあげられないと悩まれている担当者も多いでしょう。

しかし数理最適化技術を用いたシステムであれば、制約条件が多岐にわたっていても問題ありません。組み合わせがいかに膨大でも、条件項目が多くとも、必ず利用可能な集合から最も良いものを素早く導き出してくれます。条件を満たさないシフト案が出力されることはありませんから、正確で精度が高く、気づかぬうちに労務関連法規の違反となっていたといった重大ミスが発生するリスクもなくすことができます。

2.規模にかかわらず適用・導入できる

人間の頭で考えるのではなく、数理モデルに落とし込み、計算処理で最適解を出す仕組みであるため、そのシフトに関わる従業員数や店舗数が非常に多いケースでも対応可能です。大企業や数多くのチェーン店舗を持つ企業でも、中小企業や個人店舗でも、最適なシフト作成が行えるでしょう。数理最適化技術によるシステムには、規模や業種業態にかかわらず、導入できる柔軟さがあります。

3.属人化を防げる

システム化することにより、現場の事情に精通し、かつシフト作成業務に慣れた熟練者でなければ実行できないといった属人化の問題を解消することができます。担当者が異動になったり、離職・退職したりするシーンでのノウハウの継承に悩むこともなく、事業を安定して回す高精度なシフトを誰でも遜色なく作成可能な体制へ移行可能となります。

手作業に比べ、データとして蓄積もしやすく、さらなる改善を図ることもスムーズになるほか、公平性や透明性の面も改善されることが期待できます。

4.達成したい目標が複数でも可能

従業員ごとの業務量を平準化しつつ、業務効率は最大化させる、など最小化・最大化・平準化として達成させたい最適化の目標値が複数存在する場合にも、数理最適化は適用可能です。そのため単純なシフトの自動作成にとどまらず、ビジネスの現実に即した最適化ソリューションとして用いていくことができます。

数理最適化技術によるシフト作成のデメリット・注意点

1.条件の十分な整理とデータの存在が前提になる

数理最適化は、考慮すべき制約条件やルール、現状が明らかであり、関連するデータも揃っているところに適用することで、最適解を出し、判断する技術です。そのため、この前提が整っていなければ、上手く機能させることができません。

これまで手作業によるアナログな形式でシフト作成を行ってきている現場の場合、労働基準法や就業規則などで明確に決まっている休暇数や連続勤務の上限、事業の継続運用に必要な人員数、時間帯を分ける枠の数といった分かりやすいポイントについては制約条件としてすぐに挙げられるものの、各従業員のスキルや相性など、実際には条件として考慮してきているけれど明文化されていないようなものについては、要件として挙げ忘れたり、明確化しづらかったりすることがしばしばです。

技術自体は多岐にわたる制約条件を加味することができますが、条件の洗い出しと整理が十分に行えていなければ、当然ながら適切に最適解をはじき出させることができなくなってしまうため、設計・導入の段階で注意深くチェックし、制約条件にもれがないか、満たすべきルールはすべて出し切ったか確認しなければなりません。

また、現状と目標を確実に反映させた計算処理とするため、どのようなデータがどれくらい必要なのかを知り、そのデータの入手先と入手方法を明確化して、きちんと実際に揃えることも求められます。

2.状況の単純化が必要な場合がある

一般に想像される以上に、数式は柔軟に複雑な条件や現実を表現することが可能ですが、言語における翻訳でも完全に訳し切ることが困難な表現ニュアンスが存在するように、完全な数理モデルへの落とし込みは難しい場合ももちろんあります。

そのため、制約条件などをより間違いのない形で数式に反映させるため、状況をある程度単純化したり、ルールの優先度に従って下位のものの表現を調整したりすることが必要になる可能性があります。

3.数理モデル化と検証に技術と時間が必要

数理最適化においては、最適化したい値を、その状況を表したベクトルを引数にとる関数、目標関数として表現したり、制約条件を等式や不等式などの形で表したりと、数式に落とし込んでアルゴリズムを作り上げる必要があります。

当たり前のことですが、この数式化には知識とノウハウ、技術が求められます。複雑な状況をしっかりと適切に反映させられるかどうかは、手がける者の技量によりますから、信頼できるパートナーを選定することが大切です。

また、優れた技術者とシステムベースをもってしても、条件整理や数式化の際の単純化といったプロセスにおいて、本来は反映させるべき要素を落としてしまうこともあります。このこぼれ落ちた要素がモデル全体の精度を大きく左右する場合もあり得ることから、アルゴリズムは一度で完成させるのではなく、まずプロトタイプとして作成し、それによって算出された最大値・最小値が現実を上手く反映しているか、実際のデータと照らし合わせながら検証して修正を加えていくという作業を行います。

こうして試行錯誤を重ねて精度の高いアルゴリズムを生み出し、それをシステムとして実装、現場への導入と進む流れになるため、思いついてすぐに適用とはならず、一定の手間と時間を要することを念頭に置いておかねばなりません。とくに条件が多く複雑で高度なシステムとなるケース、特殊でカスタマイズ性が高いケースでは、開発難易度が高くなるため、完成・導入までにかかる期間をある程度余裕のある形でみておく必要があるでしょう。

まとめ

いかがでしたか。今回は、近年高い注目を集めるAIと、徐々に認知を高めてきている数理最適化技術について、その特徴概要と比較、異なる点について整理するとともに、実際のビジネス応用例として、それぞれの技術をシフト作成業務へ適用させた場合のポイントを解説してきました。

AIは今後も進化を続けると見込まれますが、現状ではまだできることが限られ、万能ではありません。その他の技術と同じく、得意不得意分野があり、適したシーンに用いてこそ力を発揮するものです。

一方、数理最適化技術は、AIに比べるとやや地味な印象で、適用範囲が分かりにくかったり、最適化しかできないのではないかと誤解されたりしがちですが、実際には複雑で多様な条件がかかるシーンでベストな判断を効率良く見出すことにおいて、大きな力を発揮する優れた技術です。

シフト作成業務のような、多くの条件を整理し、最適な運用を図るためのプランを正確に作り上げていくことが求められる場面では、数理最適化の技術が大いに役立ちます。煩雑で困難なこの業務を半自動化・自動化できるメリットは非常に大きいでしょう。

自動作成として何を求めるかにより、適切な技術が何であるかは異なる可能性がありますが、数理最適化は有用な可能性が高い技術として、注目するに値するものであることは確かです。数理最適化を含む複数の技術を組み合わせたものを含め、さまざまなソリューションが生まれてきていますから、ぜひ自社に合ったものの活用を検討してみましょう。

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勤務シフト作成お助けマン編集部

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