
法令遵守はもちろん、従業員の就労状況や人件費の把握・計算などを行うには出勤簿が欠かせません。そのため、出勤簿の適正な管理・保存方法を知ることは、企業の総務・人事担当者にとって避けられない課題です。本記事では、出勤簿の基本的な役割や法律上の保存期間、記載項目や保存方法を解説します。
- 出勤簿とは?
- 出勤簿・賃金台帳・タイムカードの保存期間
- 出勤簿を紛失するとどうなる?
- 保存する出勤簿に必要な記載項目
- 出勤簿の保存方法とは?
- まとめ

出勤簿とは?
出勤簿とは、従業員の就労状況を適正に管理・把握するために用いられる帳簿です。労働基準法を遵守するために必要となる出勤簿は、賃金台帳や労働者名簿と共に「法定三帳簿」のひとつに数えられます。
出勤簿には、各従業員の出勤日、労働日数、出退勤時刻、時間外労働時間などが記録されます。これらの詳細な記録は、各従業員の就労状況や職場全体の労働環境の透明性を高め、従業員の健康や労働者としての権利を守るために非常に重要です。もちろん、給与を正確に算定するためにもこうした記録は欠かせません。
事業者には、従業員の就労状況を適正に管理する責任があり、出勤簿の作成および保存は法律によって義務付けられています。近年はフレックスタイム制やテレワークなど、働き方が多様化していることもあり、出勤簿を正確に管理・保存する方法を確立することは多くの企業にとって重要な課題です。
賃金台帳との違い
出勤簿と関係が深い帳簿として賃金台帳があります。賃金台帳もまた、労働基準法によって事業者の作成・保存が必須として定められた法定三帳簿のひとつです。賃金台帳には、各従業員の労働日数、労働時間、時間外労働時間、賃金の計算期間、基本給や手当、控除項目などの情報が記録されます。重要なのは、賃金台帳が給与計算の透明性を保証し、事業主が従業員へ適正な賃金を払っているか確認するための基礎資料となる点です。
出勤簿は「労働時間」、賃金台帳は「賃金」とフォーカスされている事柄は異なりますが、実際に記載される内容には重なっている部分が多くあります。しかし、「賃金台帳には所定の様式があるけれど出勤簿にはない」「控除項目などの情報も記載される賃金台帳のほうが記載内容が詳細」といった違いもあります。
タイムカードとの違い
タイムカードは、従業員の出退勤時間を記録するために広く利用されているツールです。各従業員がタイムレコーダーにカードを挿入することで、出退勤時刻を機械的に記録できます。近年では、紙ベースのカードだけでなく、生体認証やICカードなどのデジタル化されたシステムも増えつつある状況です。
労働時間の管理に使用されるという点で出勤簿とタイムカードは共通していますが、両者の法的な扱いは大きく異なります。タイムカードは基本的に従業員本人が出退勤時に記録をつけるため、その記録は法的に「自己申告」として捉えられ、労働時間を示す証拠資料としてその客観性や正確性があまり高く評価されません。そのため、タイムカードを出勤簿の代替資料として使用することはできず、あくまで補足的な資料という位置にとどまります。
出勤簿・賃金台帳・タイムカードの保存期間
出勤簿、賃金台帳、タイムカードは法的にそれぞれ異なる位置づけをされており、保存期間にも違いがあるので注意が必要です。以下では、それぞれの保存期間を解説します。
出勤簿の保存期間は原則として5年
労働基準法で定められた出勤簿の保存期間は原則として5年です。元々は3年でしたが、2020年に行われた法改正に伴って5年に延長されました。ただし、当面は経過措置が取られており、3年の保存が認められています。とはいえ、将来的には5年の保存が必須になると見込まれるので、企業としては保存期間の延長に対応できるように早めに準備をしておくことが求められます。
参照:労働基準法の一部を改正する法律(令和2年法律第13号)の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/pdf.pdf
賃金台帳の保存期間は5~7年
賃金台帳の保存期間も出勤簿と同じく、2020年の法改正に伴って5年間に延長されました。経過措置によって当面は3年の保存が認められている点も同様です。
ただし、賃金台帳が源泉徴収簿を兼ねている場合には注意が必要です。源泉徴収簿とは各従業員の給与から差し引かれる源泉徴収額などを記録する帳簿であり、必要な情報が記載されていれば賃金台帳と兼用することが認められています。この場合、税法上の規定に従って7年の保存が必要です。
タイムカードの保存期間は5~7年
タイムカードの保存期間も、2020年の法改正によって、従来の3年から5年に延長されました。経過措置期間中は3年の保存が認められている点も同様です。ただし、賃金台帳と源泉徴収簿を兼用する場合は、賃金台帳を作成するための資料となるタイムカードについても7年間の保存が求められます。
なお、法改正によって出勤簿や賃金台帳、タイムカードの保存期間が5年に延長されたのは、賃金の未払いなどに対する請求権の消滅時効期間が5年に延長されたことが関係しています。
出勤簿を紛失するとどうなる?
ここまで紹介した通り、企業には出勤簿の作成・保存が労働基準法109条で義務付けられており、最低3年(将来的には5年)は適切に保存する必要があります。労働基準監督署が事業所や従業員の状況を調査する際に用いる重要書類であり、たとえ解雇・退職した従業員の記録であっても、必要なときは即座に提出できるように保存しておかなければいけません。
万が一、出勤簿を紛失したり、適切に保存していなかったりした場合、企業は労働基準法違反とみなされるリスクがあります。労働基準法120条の罰則規定に従い、出勤簿の保存義務に違反した場合、違反者には30万円の罰金が科されます。これはタイムカードや賃金台帳、労働者名簿についても同様です。法令遵守の観点からはもちろん、適正な労務管理を行うためにも、企業は出勤簿を適切に管理・保存しなければいけません。
参照:労働基準法(109条、120条)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

保存する出勤簿に必要な記載項目
出勤簿には政府から指定された書式(テンプレート)が存在しないので、企業がそれぞれ自由な書式で作成できます。ただし、記載すべき項目はあるので、作成する際には必要な情報がすべて網羅されているか注意しなければいけません。以下では、出勤簿への記載が必要な項目について解説します。
労働日数に関する項目
従業員の出勤日および労働日数(出勤日数)を明確に記載することが必要です。労働日数はあくまでも従業員が働いた日数を示すため、オフィスに出勤した日だけでなく、テレワーク(在宅勤務)や出張といった勤務形式についても正確に記録しなくてはいけません。オフィスに出勤していないから出勤簿に記録しなくてよいとはならないので注意が必要です。
労働時間数に関する項目
労働時間の正確かつ客観的な記録も不可欠です。具体的には、日ごとの労働時間数、出勤時刻(始業時刻)・退勤時刻(終業時刻)に加え、休憩時間の記載も必要になります。これは、休憩時間を除く実際の労働時間(実働時間)を正確に算出するためです。
毎日の労働時間を正確に記録するためには、ICカードや勤怠管理システムなど、デジタルツールの活用が役立ちます。なお、法令遵守の観点から、労働時間の記録は誤魔化すことなく、正確に実態を反映したものであることが重要です。
時間外労働・休日労働・深夜労働に関する項目
時間外労働、休日労働、深夜労働に関する詳細な記録も必要です。これらの項目は給与計算にも大きな影響を及ぼすため、正確な記録が求められます。各項目の具体的な内容は以下の通りです。
時間外労働:原則として、1日8時間または週40時間を超える労働が該当します。時間外労働を行った日付、時刻、時間数の記録が必要です。
休日労働:法定休日に行われる労働が該当します。法律では、最低でも1週間に1日は休日を設けるように定められています。休日労働に関して記録すべき項目は、該当する日付、時刻、時間数です。
深夜労働:22時から翌朝5時までの労働が深夜労働に該当します。出勤簿には、深夜労働を行った日付、時刻、時間数を記録することが必要です。深夜労働は管理監督者や裁量労働制で働く従業員にも割増賃金が適用されるので、その点にも気を付けなければいけません。
時間外労働などの記録は、従業員の健康を守るためにも重要なことです。特に深夜労働に関しては、安全配慮義務の観点からより注意深い管理が求められます。また、時間外労働の上限規制に違反しないようにするためにも、出勤簿の正確な記録管理を通して各従業員の時間外労働を正確に把握することは欠かせません。
出勤簿の保存方法とは?
出勤簿をどのような媒体・方法で保存するかは、記録の正確性や情報管理の安全性にも影響を与える重要な要素です。そこで以下では、出勤簿の主な保存方法として紙媒体・Excel・勤怠管理システムの3つを挙げ、それぞれの特徴を紹介します。
1. 紙媒体
紙媒体の出勤簿は依然として多くの企業で使われています。紙媒体の出勤簿は安価に導入しやすいため、特に小規模事業者にとっては有用な方法です。法律的にも、紙媒体の出勤簿が禁じられているわけではありません。
しかし、2019年4月以降は働き方改革関連法の施行によって労働時間管理のルールが厳格化されたことから、紙媒体による出勤簿の運用は実務的な面で難しくなっています。というのも、労働安全衛生法の改正により、客観的な記録による労働時間の把握が義務化されたからです。未把握の場合、従来はガイドライン違反にとどまっていたものが、法違反となります。
たとえば、出勤簿に記載された出退勤時刻を使用者または労働時間の管理者が自ら確認するなど、自己申告によらない客観的な方法での把握が必要です。そのため、従業員が少数の企業ならばともかく、それ以外の企業では紙ではなくデジタルで運用したほうがはるかに効率的です。
出勤簿の手書きは違法?
手書きの出勤簿を使用すること自体は違法ではありません。しかし、手書きの場合は改ざんのリスクや、労働時間の正確な把握に問題がある「自己申告制」による管理方法であるため、原則としてやむをえない事情がある場合に使用するものとして扱われます。
そのため、もしも客観的に労働時間を把握できる手段が存在するにもかかわらず、あえて手書きの出勤簿を使用する場合は、法的に問題となる恐れがあります。また、企業が従業員の勤怠管理を適正に管理することは義務なので、運用に難がある手書きの出勤簿を使用し続けることで、結果として法律違反になってしまうことも否定できません。したがって、可能なら勤怠管理システムなどを導入し、手書きから脱却できるようにするのがおすすめです。
2. Excel等の電子データ
出勤簿は電子データ形式で作成・保存することが認められています。たとえばExcelやスプレッドシートはデジタルで出勤簿を作成・管理するために、一般的によく使われるツールです。こうしたツールを活用することで、データの検索性や扱いやすさが向上し、紙媒体に比べて効率的な管理が可能になります。
Excelならば多くの企業がすでに導入しているため、追加の費用などがかからないのもメリットです。ただし、Excelで管理する際にはデータの紛失・破損・削除といったリスクに注意する必要があります。また、労働基準監督署などの求めに応じて速やかに提出できるよう、いつでも印刷できる状態にしておくことが大切です。
3. 勤怠管理システム
Excel以上に効率的かつ安全に出勤簿の保存をしたい場合は、勤怠管理システムの導入がおすすめです。Excelは手軽に導入できる反面、膨大なデータや複雑なデータを扱うのには向いていません。
その点、勤怠管理システムを導入すれば、テンプレートの書式・機能を使って、ヒューマンエラーのリスクを抑えて効率的に出退勤時間などの入力・集計作業が行えます。ファイル管理が煩雑になりがちなExcelよりもデータへのアクセス性も優れており、長期保存にも適しています。給与計算ソフトなど、他のシステムと連携してさらに利便性を高められることもあります。これらの利点を考慮すると、勤怠管理システムの導入は、出勤簿の適切な保管方法として非常におすすめの方法です。
まとめ
2020年の法改正により、出勤簿の保存期間は原則5年に延長されました。当面は経過措置として3年の保存が認められていますが、経過措置期間が終了した場合に備えて、5年の保存に対応できるよう早めに環境を整備しましょう。
出勤簿の紛失や破損は法律違反になる恐れがあるため、安全な保存方法の選択が重要です。主な保存方法としては、紙媒体、Excel、勤怠管理システムの3つがありますが、効率性や安全性、法令遵守などの面を考えると勤怠管理システムがおすすめです。本記事を参考に、ぜひ出勤簿の適正な保存に取り組んでください。
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