休憩という言葉は、仕事や遊びなど日常生活のさまざまなシーンで使われていますが、仕事における休憩にはさまざまなルールがあります。ルール通りに休憩すれば、気持ちがリフレッシュしやすくなるため休憩の効果が高まりますが、休憩についてのルールを特に意識していないと、知らず知らずのうちにルールに違反した状態で休憩してしまうこともあるでしょう。また、休憩に関するルールを十分に認識していないと、使用者と従業員との間でトラブルが発生する場合もあります。
使用者としては、従業員にルール通りに休憩に入ってもらうために、また、従業員としてはルール通りに休憩に入るために、「休憩」についてのルールや押さえておくべきポイントを理解しておきましょう。
休憩時間のルール
労働基準法において労働時間やシフトカット、36協定などについて規定されていますが、業務中の休憩時間においても労働基準法によって規定されています。労働時間が6時間を超えて8時間以内の場合は45分以上の休憩を、労働時間が8時間を超える場合は60分以上の休憩を付与する必要があります。
また、同法34条では、休憩時間について「労働時間の途中に与えること」「休憩時間中に労働させてはならない」「休憩は一斉に与えること」という3つの項目を定めています。これらは「休憩の3原則」と呼ばれています。
参考として、休憩の3項目に関する内容が記載されている「労働基準法第34条」の内容を下記に示します。
【引用:労働基準法第34条】 (休憩) |
休憩は労働時間の途中に与えること
休憩は労働と労働の間にはさんで入れる必要があります。休憩の与え方について一例をあげると、下記の通りとなります。
- 9時から18時までの勤務で、休憩時間は12時~13時
上記のように休憩する場合、9時に仕事を始めて、始業時刻から3時間後の12時から1時間休憩を取ります。休憩が終わるのは13時であるため、休憩の後は終業時刻の18時まで5時間働きます。
6時間以上の長時間勤務では、疲れを十分に回復したり、あるいは食事休憩をしたりするために、労働時間の途中に休憩を取ることが基本となります。このような休憩の取り方であれば十分に休息できることでしょう。
しかし、8時間以上連続で働き、労働時間の最初または最後に1時間休憩する、という休憩の取り方は法律で認められていません。例をあげると下記の通りとなります。
- 9時から18時までの勤務で、休憩時間は17時~18時
もし、上記のような休憩の取り方になる場合、9時から17時まで連続で働くと疲れがたまるだけでなく食事を取る時間も十分に確保できないため、働く意欲が低下してしまうことでしょう。
しかも、18時が終了時刻であるにもかかわらず、17時~18時まで休憩を取ると、17時以降の休憩を取らずに家に帰りたい、と考える人がいるかもしれません。
ただし、下記のような休憩の取り方は法律違反にはなりません。
- 9時から18時までの勤務で、休憩時間は16時~17時
上記のような休憩の取り方で法律違反にならない理由は、労働と労働の間に休憩時間が設けられているためです。
しかし、実際に9時から16時まで連続して働くと疲れがたまってしまうため、休憩の取り方が適切とはいえないでしょう。それを踏まえると、休憩時間を取るのは始業時刻から3時間~4時間後が理想的といえます。
休憩時間中に労働させてはならない
休憩時間中は従業員を働かせてはいけません。なぜなら、休憩時間とは仕事を行わない時間を設けることにより、疲れの回復と気分のリフレッシュを図り、休憩後の作業効率を高める目的があるためです。
休憩時間の労働に当てはまる例としては、会議が長引いて休憩時間に差しかかったことや、休憩時間中に自分宛に業務の電話がかかってきて対応することなどがあげられます。
従業員の中には、業務を中途半端な状態で終わらせないようにするために、あるいは顧客対応を優先させるために、やむを得ず休憩時間に仕事をしてしまう場合があるかもしれません。しかし、休憩時間はしっかりと休憩を取ることが原則です。働きやすい環境を維持するためにも、使用者は従業員に対して休憩時間は労働をしないように伝えましょう。
休憩は一斉に与えること
休憩時間はすべての従業員に対して一斉に与える必要があります。この決まりが定められていることによって、従業員自身が休憩したいタイミングで勝手に休憩してしまうことを防げます。また、従業員が一斉に休憩すると、従業員同士で休憩中にコミュニケーションを取れるため、気持ちがリフレッシュしやすくなるメリットもあります。
ただし、一部の業種では例外的に個別の休憩付与が認められています。たとえば、小売店や飲食店のように、営業時間中に顧客が常に来店する店舗や、運送業の運転手のように、荷物の配送状況に応じてその都度休憩を取る方が効率的な場合などがあげられます。
一斉付与の原則が適用されない業種は、運送業、郵便・電気通信、商業、病院・保健衛生、旅館・飲食店、接客娯楽業、官公庁の事業などです。
また、一斉付与の原則が適用されない業種以外でも、労使協定を結ぶことによって個別の休憩付与が認められます。
▼ あわせて読みたい記事
シフト管理者・シフト勤務者におススメのシステム・アプリ
自動作成を特長とするシフト管理システム|導入する前に知っておくべきこと
シフト作成に特化したシフト管理システム比較|クラウドのメリットとは
飲食店に最適なシフト管理システム・アプリ|料金・機能・メリット徹底比較
休憩時間に関するよくある質問
休憩時間についてはさまざまなルールがあるため、そもそもどのようなルールがあるのか、また、正しい休憩の取り方を十分に理解していないなど、休憩のルールに対する不明点も多いのではないでしょうか。ここでは、休憩時間についてのよくある質問とその回答について解説します。
パート・アルバイトの休憩時間の付与について
パートやアルバイトといった非正規雇用者と正規雇用者の間で休憩時間に関する規定の差はありません。正社員でないため休憩は不要ということにはならず、同様に休憩を付与する必要があります。
休憩時間を分割してもよいか
休憩時間の合計が最低ラインを下回らないなど、他のルールを守ってさえいれば、休憩を分割すること自体に問題はありません。ただし、休憩の目的が「労働からの解放」や「気分の切り替えやリフレッシュ」である以上、あまりにも細かく分割すると従業員が労働から解放されず、気分がリフレッシュしていないと感じられないため、休憩の効果が期待しにくくなってしまいます。
極端な例をあげると、1時間の休憩を12回に分け、1回あたりの休憩時間を5分にすることです。この場合は休憩の回数が多くなるため、こまめに休憩できるように感じられるものの、1回あたりの休憩時間があまりにも短いため、休憩した気分にならず、逆に気ぜわしいと感じられることでしょう。
休憩時間に、従業員が「十分に休憩した」と感じられるようにするなら、せめて1時間の休憩を分ける回数は2回にとどめることが効果的です。そのように休憩を分ければ、1回あたりの休憩時間が30分になり、比較的長めの休憩となるため、休息の効果は十分に期待できます。
残業時に休憩時間を付与・延長する必要はあるか
残業によって労働時間が長くなると、付与すべき休憩時間も長くなる場合があります。そのような場合は、休憩時間を新たに付与するか、あるいは追加で付与する必要があります。
休憩を付与する方法について、下記に2つの例をあげます。
例①:従来の労働時間が6時間で休憩時間を取得していない従業員が、1時間の残業により労働時間が7時間となった場合、休憩時間を新規に45分付与する必要がある 例②:従来の労働時間が8時間で休憩時間を45分取得している従業員が、1時間の延長により労働時間が9時間となった場合、休憩時間を追加で15分付与する必要がある |
なお、残業によって労働時間が増えても休憩時間の長さが法令に基づいているなら、残業時間中に休憩時間を新規に付与したり、または追加で付与したりする必要はありません。
たとえば、例②において、従来の労働時間が8時間で休憩時間を1時間取得していた場合は、1時間残業をして合計の労働時間が9時間になっても、休憩時間は1時間のままで問題ないため、休憩時間の変更は不要です。
ただし、法律上では休憩時間を付与する必要がない場合であっても「休憩時間を付与してはいけない」という決まりではないため、社内規定等で休憩時間の付与を認めていれば、休憩を追加で取得することは可能となります。
休憩時間について気を付けるべきポイント
労働基準法によって規定されている休憩時間のルールは必ず守る必要があります。休憩のルールについて特に意識していないと、知らず知らずのうちに違反してしまう恐れがあり、もし、違反すると罰則が科せられます。ここでは、休憩時間のルールについて気をつけたいポイントについて解説します。
休憩時間の返上は従業員からの申請であっても不可
会社は、労働基準法によって決められた休憩時間は絶対に守らなければいけないものであるため、休憩時間を返上して早上がりするというのは、原則「休憩は労働時間の途中に与えること」に対する違反となります。
たとえば、9時から18時までの勤務で1時間の休憩が設けられている場合、1時間の休憩を取らずに17時で一日の業務を終了することは認められていません。
使用者が従業員に対して休憩時間の返上を求められないほか、従業員が使用者に対して「休憩時間を返上します」という希望を伝えることができない点について理解しておきましょう。
手待ち時間は労働時間であり休憩時間ではない
従業員が使用者から「休憩時間中に電話が鳴ったり、あるいは来客があったりしたら、顧客対応のために電話に出たり、来客者に対する案内をしたりしてください」という指示を受けたとしましょう。休憩時間を利用して電話番や来客の番をしているときに、電話や来客が来なかったとしても、待機に使った時間は手待ち時間として扱われ、労働時間としてみなされます。
一見すると、休憩時間に電話番や来客の番をしているときに、電話が鳴らず、来客者も来なければ、休憩時間と同じ扱いのようにしてもよいように感じられます。
しかし、電話番や来客の番をしていると「いつ電話が鳴るだろうか、いつ来客があるだろうか」と気持ちが張り詰めた状態になるため、仕事をしているときと同様の状態となります。
軽い気持ちで従業員に電話番などの業務を依頼し、その業務を休憩時間扱いとした場合、後にトラブルに発展する可能性があるので注意が必要です。
まとめ
働くうえで休憩というものは必須となりますが、守らなければならないルールは複雑であり、適切に付与するだけでも一苦労となっているのが現状です。シフト管理者がシフトを作成する場合、休憩時間をどのように付与しようかと頭を悩ませるケースは多いのではないでしょうか。
複雑な休憩時間を考慮した、適切なシフト表の作成には自動作成ツールがおススメです。JRシステムが提供する「勤務シフト作成お助けマンTime」では、労働基準法で規定されている付与すべき休憩時間の長さにおけるルールや労働時間の間に付与するルールを順守することはもちろんのこと、社内独自の付与ルールについても順守したうえで、シフト表を自動作成することができます。
クラウドサービスとして提供しており、インターネットの環境があればすぐにお使いいただけます。2か月間は無料でトライアルできますので、是非お試しの上、ご評価ください。