ワークライフバランスの重要性が高まる中、医療機関で働く看護師の働き方は、近年ますます多様化しています。働き方改革を進める現場では、より良いシフト体制の確立が求められています。
今回は、看護師の主な勤務形態である日勤、2交代制、3交代制について解説します。シフトを組む際の注意点についても詳しく触れていますので、看護師のシフト管理に携わる方はぜひ参考にしてください。
看護師の勤務形態
看護師の勤務形態は大きく分けて、日勤、2交代制、3交代制の3種類があります。どの勤務形態が適しているかは、業務内容や入院設備の有無、看護師の在籍数などによって異なります。
日勤
クリニックや総合病院の外来病棟などでよく見られる勤務形態で、昼間を中心に働きます。
1日のシフト例
日勤:8時30分~17時30分
1週間のシフトスケジュールの例
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月曜 |
火曜 |
水曜 |
木曜 |
金曜 |
土曜 |
日曜(休診) |
Aさん |
日勤 |
日勤 |
休み |
日勤 |
日勤 |
日勤 |
休み |
Bさん |
日勤 |
休み |
日勤 |
日勤 |
日勤 |
日勤 |
休み |
Cさん |
日勤 |
日勤 |
日勤 |
休み |
日勤 |
日勤 |
休み |
2交代制
総合病院など24時間体制の病院で採用される勤務形態の一つであり、日中の勤務と夜間の勤務、2つのシフトに区分されます。
日勤と夜勤の勤務時間が均等なシフトの他、日勤8時間・夜勤16時間など、どちらかの時間を長くする「変則2交代制」のシフトがあります。
1日のシフト例
●一般的な2交代制の例
日勤:8時~20時
夜勤:19時~9時
●変則交代制の例
日勤:8時~17時
夜勤:16時30分~翌朝9時
1週間のシフトスケジュールの例
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月曜 |
火曜 |
水曜 |
木曜 |
金曜 |
土曜 |
日曜 |
Aさん |
日勤 |
夜勤 |
夜勤明け |
休み |
夜勤 |
夜勤明け |
休み |
Bさん |
日勤 |
夜勤 |
夜勤明け |
休み |
休み |
日勤 |
夜勤 |
Cさん |
休み |
日勤 |
日勤 |
日勤 |
夜勤 |
夜勤明け |
休み |
3交代制
24時間を「日勤」「準夜勤」「深夜勤」の3つのブロックに分ける勤務体制です。基本的には、どの時間帯も8時間勤務となります。
1日のシフト例
日勤:8時~17時
準夜勤16時30分~24時30分
深夜勤24時~9時
1週間のシフトスケジュールの例
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月曜 |
火曜 |
水曜 |
木曜 |
金曜 |
土曜 |
日曜 |
Aさん |
休み |
日勤 |
日勤→深夜勤 |
深夜勤明け |
休み |
準夜勤 |
準夜勤明け |
Bさん |
日勤 |
日勤→深夜勤 |
深夜勤明け |
休み |
準夜勤 |
準夜勤明け |
休み |
Cさん |
休み |
日勤 |
日勤 |
日勤→深夜勤 |
深夜勤明け |
休み |
準夜勤 |
勤務形態別のメリットやデメリット
3つの勤務形態には、それぞれにメリットとデメリットがあります。
日勤
【看護師】
日勤は、8時間勤務が基本です。夜勤がないため、生活リズムが安定し、心身の負担も少ないのがメリットです。家族や友人との時間を確保しやすく、プライベートな時間を充実させることができます。
一方で、夜勤手当などが得られないため、給与が低くなりやすいというデメリットがあります。
【管理者】
勤務パターンが一つなので、シフト作成の手間が少ないのがメリットです。一方で、欠勤や退職など、人手不足によるシフト調整が困難な場合があります。特に、子育て中のスタッフが多い職場では、子どもの病気などによる欠勤時の対策が必要です。
2交代制
【看護師】
夜勤明けに休日が入るため、1か月当たりの休日取得数が多いのがメリットです。日勤と夜勤の繰り返しですから、生活リズムも比較的安定するでしょう。また、夜勤手当などの各種手当が支給されるため、収入が高くなりやすいのも魅力です。
その反面、長時間勤務になりやすく、心身への負担が大きくなります。
【管理者】
シフトパターンが2つなので、比較的管理しやすいのがメリットです。しかし、日勤と夜勤のバランスを取る、休日をしっかりと設けるなど、考慮すべき課題もあります。
3交代制
【看護師】
8時間勤務が基本となるため、心身への負担が比較的少ないのがメリットです。しかし、3つの勤務パターンの繰り返しは生活リズムの調整が難しく、体調管理が必要です。
【管理者】
3つの勤務パターンを組み合わせるため、十分な人員を配置しやすいのがメリットです。反面、シフト作成は複雑になります。また、準夜勤と深夜勤の入れ替わりが深夜となるため、スタッフの通勤帰宅時の安全配慮が求められます。
シフトを組むときの注意点
看護師のシフト編成時に、特に注意すべき4つのポイントについて解説します。
労働関連の法令を守る
シフト編成時には、労働時間や休日に関する法令の遵守が必須です。労働基準法などの法律を基準に、「労働時間」「休憩時間」「休日」の設定には特に配慮が必要です。
法律では、原則として「1日の労働時間」は8時間、「1週間の労働時間」は40時間を超えてはいけないと定めています。「休憩時間」は労働時間が6時間超~8時間の場合は45分、8時間を超える場合は1時間を最低ラインとして確保する必要があります。
「休日」は、少なくとも毎週1日または、4週間を通じて4日以上が必要です。また、法律上の休日とは、単純に24時間を1日とするわけではありません。法定休日は暦日と定められています。暦日とは、午前0時~午後12時までの継続24時間を指します。
つまり、夜勤明けで朝に勤務が終わった場合でも、暦日で1日の休日を取得しなければいけません。単に24時間休んだだけでは、休日とは認められない点に注意しましょう。
ただし、就業規則などで8時間3交代制などの番方編成による勤務形態が定められている場合などは、特例として継続して24時間休めば休日とみなされます。このようなケースでは、夜勤後に24時間明けて次の勤務を入れた場合、3交代制では休日扱いになっても、2交代制では休日とは認められないということです。
このほかにも36協定、変形労働時間制、年次有給休暇、時間外労働の上限規制なども確認しておきましょう。
法令を遵守することは、従業員を守るだけでなく、
・法令違反による是正勧告や罰則を回避できる
・労働者の健康と安全を確保し、離職率の低下につながる
・モチベーションの高い人材確保につながる
など、事業者にとってもメリットがあります。
法令遵守のポイントは、労働基準法などの内容を理解すること、出退勤時間や休日に関する記録を正確に管理することです。不明な点があれば、労務担当者や専門家に相談しましょう。
▼出典:労働時間、休憩及び休日|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000118961.pdf
十分な休息を確保する
看護師の健康維持と質の高い看護サービス提供には、十分な休息が不可欠です。労働時間に配慮し、夜勤明けに十分な休息時間を確保することは、疲労の蓄積を防ぎ、様々なリスクを軽減するために重要です。
疲労の蓄積が招くリスク
疲労の蓄積は、スタッフのモチベーションの低下、健康被害の増加、離職率の上昇、医療ミスの増加といった多くのリスクをもたらします。これらの問題は、医療機関の評判や信頼性に直結し得るため、看護師だけでなく、事業者にとっても看過できない課題です。
ガイドラインの実施
日本看護協会は、「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」を作成し、広く公開しています。
このガイドラインでは、勤務間隔を11時間以上確保すること、拘束時間を13時間以内に設定すること、夜勤の連続回数を2回までに制限することなど、11項目の指針が示されています。これらの指針を適切に適用することで、看護師が必要とする十分な休息を確保し、良質な看護サービスの提供につながります。
▼出典:「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」|公益社団法人日本看護協会https://www.nurse.or.jp/nursing/home/publication/pdf/guideline/yakin_guideline.pdf
見合った手当を支払う
看護現場では、患者の容態の急変、自然災害の発生、大規模な事故の発生など、突発的な事態によって定時退勤が困難な場合があります。このような状況では救命措置が最優先となり、残業や夜勤、休日出勤が必要になることがあります。
労働者の権利を守るためには、法令に準じた適正な勤務手当の支払いが必要です。これには、夜勤手当、休日出勤手当、時間外手当、深夜手当などが含まれます。
サービス残業や無休の休日出勤は、労働基準法に違反する行為です。正確な労働時間の記録と適正な割増賃金の支払いを通じて、労使間の信頼関係を構築し、職場の士気を向上させましょう。
家庭の事情に配慮する
従業員のライフスタイルは多種多様です。妊娠中や子育て中、家族の介護中といったスタッフも在籍していることでしょう。
多様な働き方に対応するためには、公平性を保ちつつ、個々の希望を可能な限り実現する柔軟な対応が求められます。
例えば、子どもの病気やケガ、家族の介護による休暇、ボランティア活動やリフレッシュのための休暇など、個々のニーズに合わせた対応を検討しましょう。
働きやすいシフト体制を整えるためには、管理者を含めたスタッフ間の相互理解を促進することも重要です。定期的なミーティングを開催するなどして、各自のニーズや提案を共有しましょう。このようなオープンなコミュニケーションを通じて、シフト体制の見直しや改善を行うことが相互理解を深め、チームワークを向上させる鍵となります。
また、スタッフからの希望を叶えるのが難しい場合でも、密なコミュニケーションを通じて信頼関係を築くことで、理解を得やすくなるでしょう。
まとめ
看護師の働き方には日勤、2交代制、3交代制があり、勤務形態を選択する際には、それぞれのメリットとデメリットを考慮する必要があります。最適なシフトの決定においては、法令の遵守やスタッフ個々の事情への配慮も重要です。
働き方改革と人材確保の必要性が高まる中、医療機関は看護師の多様なニーズに柔軟に対応し、魅力的な職場環境の構築が求められています。適切なシフト管理の運営は、これらの課題に効果的に対処し、働きやすい環境の実現に貢献するでしょう。
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