昨今の市場の変化に対応するために、DXを推進することが望ましいとされています。これは人事部でも例外ではありません。
本記事では、人事DX(HRDX)を進めるにあたって把握しておくべき概要やメリットを紹介しつつ、各企業での導入事例についても解説します。自社での人事DX推進を検討している方は、ぜひご一読ください。
人事DX(HRDX)とは、業務のデジタル化によって個人や組織の変革につなげること
人事DXとは、人事業務のプロセスをDXし、業務効率化を図ることで、個人や組織の変革につなげる取り組みです。別名「HRDX(Human Resources Digital Transformation)」とも言います。
DXは、市場における競争上の優位性を実現するために行われます。人事DX推進によって業務を自動化し、データ管理をペーパーレス化することで、多様な働き方に対応できるようになったり、企業の生産性を向上させられたりするというメリットが得られます。
▼DXについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
DXとは何か?シフト作成のシステム化から始めるDX推進の第一歩
人事DXが注目されている背景
人事DXが注目されている背景として、以下のことが挙げられます。
- ・人手不足が深刻化し、これまでと同じ時間を割けない
・コロナ禍を経てテレワークが定着し、業務のデジタル化を推進する必要性がある
・安全に大量の人事データを保有・分析する需要が出てきた
経済産業省の「DXレポート」では、企業がDXを進めていく重要性を説明しています。多様な働き方により勤務形態の変化が進む一方、人手不足が進んでいる業種もあります。各課題に対応するには、ICTの力を利用して、業務を改革していくことが望まれています。
参照元:経済産業省「DXレポート」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_02.pdf
DXの必要性は例えば、とある企業ではこれまで1か月あたり3時間×5人かけていたシフト業務を人手不足により2時間×3人でやる必要に迫られて業務効率化が急務になる、といった形で表面化してきます。既存のシステムを保守・運営する人材は、今後も減少することが懸念されます。現在の競争力を維持するだけでなく、今後も引き続き企業が成長していくためにも、人事DXは必要とされます。
人事DXを実施する5つのメリット
人事DXを実施するには、企業内での経営戦略に組み込まれることが必要不可欠です。しかし、必要性は理解しつつも、人事DX導入に踏み切れないという企業も少なくありません。人事担当者が人事DXを実施するメリットを具体化して提案できれば、企業の経営戦略に影響を与えられる可能性が高まります。
本章では、人事DXの推進を模索している方に向け、人事DXのメリット5つを解説します。
- 業務を自動化できる
- データの収集・可視化が容易になる
- 戦略人事に集中できる
- 多様な働き方に対応できる
- 人員不足への備えになり得る
1. 業務を自動化できる
人事DXを進めていくことで、日頃の業務を自動化できます。人事部ではシフト管理や人事評価など、定期的に行われるルーティンワークが存在します。人事部の多忙な業務を効率化することで、業務負担軽減が可能です。
また、人事戦略や人事評価の業務を効率化するためには、ペーパーレス化が有効です。ペーパーレス化が進むことにより、経済的な効率向上だけでなく、保管場所が不要になることでオフィス環境が改善されるといった、副次的な効果も期待できます。
業務の自動化に取り組む際には、移行の手間を気にする方もいます。確かに、最初は新規にシステムを導入したり既存のシステムを変更したりといった手間が存在し、相応の時間がかかります。しかし、業務の自動化は導入後の負担軽減効果が大きいため多くの企業で採用されつつある取り組みです。人事担当者が導入に必要な資金的・時間的コストと導入後に得られるパフォーマンスを丁寧に説明することで、経営陣や現場からの合意形成がしやすくなります。
2. データの収集・可視化が容易になる
人事採用に関わる多くのデータを、収集・可視化できるのもメリットです。人事は、各部署における従業員の働きぶりや成果について評価します。しかし、担当者によって評価基準や価値判断が変化してしまうと、主観的な判断が主となります。
DXを推進することで、スキルや経歴年数など客観的な判断基準をデータとして各部署と共有することが容易になります。客観的な判断ができるようになるため、適材適所の人材配置が実現します。
また、各部署でのニーズと各従業員が伸ばすべきスキルのマッチングがしやすくなるなど、データの統合管理を行うことで得られるメリットは多岐にわたります。これにより企業のニーズに合った研修も企画できます。データの収集・可視化が進むことで、目標を達成するための内部改革も促進可能です。
3. 戦略人事に集中できる
昨今では、企業の経営目標を達成するための「戦略人事」の考え方が浸透しています。戦略人事に集中できるのも、人事DXのメリットです。
人事部は、採用、人材開発、オペレーションなど幅広い業務があります。日々の業務が多いため、人事部が恒常的に忙しさに謀殺されているケースも稀ではありません。
DXによって日々の定型業務を効率化することで、業務に余裕が生まれます。手が空いた部分を、戦略人事の仕事に力を入れることが可能です。
4. 多様な働き方に対応できる
DXの一環としてクラウドシステムを導入すれば、多様な働き方にも対応できます。労務管理にクラウドシステムを導入することで、社外でも仕事が可能です。リモートワークが進んでいない企業でも、リモートワークの導入がしやすくなります。
例えば、シフト表を紙で管理してきた企業もクラウドシステム導入後は、データをスマートフォンやパソコンで管理できます。社内で勤務表を打ち込まなくても、社外から勤務表の確認、変更が可能です。
確認がしやすくなるため、勤務日程の誤解や関連するミスが減っていくことも期待されます。特に、夜勤がある仕事や勤務時間が長い業態であれば、より大きな改善効果が得られるでしょう。
5. 人員不足への備えになり得る
人事DXを進めることで、人材不足問題に対応しやすくなります。人員不足の企業は、業務を効率化、削減することで業務負担を減らせます。業務負担が減ることにより、従業員のワークライフバランスを改善できます。
また、人事DXが推進されると自ずと戦略人事を進めやすくなるため、人材の育成、採用によりリソースを割けるようになります。既存の従業員の働き方を改革しつつ、有能な人材を必要に応じて採用できる体制を構築できれば、人員不足にも柔軟に対応可能です。
人事DXの導入事例
人事DXは、現在さまざまな業種で導入されています。人事DXのメリットを把握した上で、実際にどのように導入されているかを理解すれば自社での取り組みが容易になります。本章では、以下に挙げる人事DXの代表的な事例について紹介します。
- 人材情報の可視化による適切な人事評価・人事施策の実現
- 勤怠管理システムの導入で社外からも打刻が可能に
- システム導入によりシフト作成時間が半減
- 担当者不在時にも勤務シフトの作成が可能に
1. 人材情報の可視化による適切な人事評価・人事施策の実現
ひとつ目の事例は、人材情報の可視化により適切な人事評価を実現した実例です。こちらの会社では、4,000人を超える従業員が勤務しています。社員が多いため、人材情報の可視化ができずに、属人的に社員の情報を把握していました。そのため、人事部全体で社員の情報を把握できないという課題がありました。
課題を解決するために、人材情報をクラウドで一元管理できるツールを導入しました。ツールの導入により、社員の各種情報だけでなく、顔写真などの把握もできるため、人材情報を管理しやすくなりました。それだけでなく、女性社員の社員数および子育てをしている人数、働く上での課題や賃金のレンジに対して役職者はどのように対応しているか、職種別にみた人材配置の適正性なども把握できるようになり、より良い職場環境の構築に役立てています。
人事DXでは過去の配置、仕事内容も把握できるため、人事評価の際に適材適所の配置が可能です。本事例では主観的な人事評価だけではなく、客観的な人事評価も可能になりました。
2. 勤怠管理システムの導入で社外からも打刻が可能に
次に紹介するのは、勤怠管理システムを導入し、社外からの打刻を実現した事例です。こちらの会社では、以前は紙の出勤簿を使用していました。アナログのため、社員の勤務管理の意欲も低く、勤務時間を正確に打刻しないなどルーズな一面もみられました。そのため、勤務時間の正確なデータを収集できず、分析できないことが課題でした。
課題を解決するために、クラウド型の勤怠管理システムを導入しました。iPadやスマートフォンから出勤・退勤時間が打刻できるため、正確な勤務時間を収集できます。営業職が多い会社ですが、直行直帰の方でも勤務時間の把握が可能です。
また、自分の勤務時間を把握できるシステムのため、社員の働き方に対する意識づけにもつながりました。人事部にとどまらず、会社全体の勤怠管理の意欲向上にもつながった事例です。
3. システム導入によりシフト作成時間が半減
大阪府や京都府に6店舗で展開するパンの製造販売会社では、シフト希望を紙で管理していました。
従業員の勤務時間帯がバラバラなため、シフトの提出遅れによって、紙の回収やシフトを組む作業に一苦労するという課題がありました。また、勤務時間帯が幅広いため、希望のシフトを組むことも難しかったようです。
課題を解決するため、「お助けマンTime」を導入したことによって、スマートフォンから勤務希望登録ができるため、シフトに関する要望の提出忘れ・遅れが減少しました。また、シフトの勤務時間のバランスも把握しやすくなり、2店舗分のシフト作成時間が半減するという成果を得ました。作業が効率化されたことで、生産性の向上に役立っています。
また、お助けマンTimeでヘルプに関する機能を充実させることができました。同社では、人手が不足している場所に、スタッフをヘルプとして割り当てていました。お助けマンTimeを利用することによって15分単位で柔軟に対応できるようになり、シフト作成の幅が広がりました。
お助けマンTimeは、マウスのドラッグ&ドロップで簡単に操作できるため、初めてでもとても利用しやすかったようです。サポートの対応もあったため、DXの導入をスムーズに実現しました。
4. 担当者不在時にも勤務シフトの作成が可能に
とあるホテル会社では、ホテルを運営するために365日・24時間体制が求められていました。シフト作成は困難なため、社内研修修了者がシフト担当に当たっていました。しかし、全社員に公平なシフト作成が課題となっていたようです。
課題を解決するために「勤務シフト作成お助けマン」を導入し、成功を収めました。選任のシフト作成担当者がいなくても、例え初心者の社員でも公平なシフト作成が可能になったことが大きなメリットだったようです。勤務シフト作成お助けマンは、どの社員でも操作しやすいシステムのため、誰でもシフト作成が可能になりました。
また、公平なシフト作成の手順が確立されたのも大きいメリットでした。勤務シフト作成お助けマンによってシフト全体の6~7割分を作成、その後調整という手順で、公平なシフトの作成方法が確立されました。作成の時間が減ったことで、シフト調整の時間が増え、作成ミスも大幅に減少できたようです。ミスが減ったことで、本社での確認作業の手間も軽減でき、とても助かったそうです。
勤務シフト作成お助けマンを導入する際には、会社の特性や業務パターンを理解した上で、担当者がサポートします。そのため、導入する側は不明点や疑問点を尋ねられるため、安心して業務改善に取り組めます。
人事DXによって、主に宿泊・レストラン・宴会部門のシフト作成の負担を減少させることに成功したこちらの会社では、さらに導入可能な部署を検討しているとのことです。
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人事DXの一施策として有効なシフト管理のシステム化
人事DXの必要性に迫られているが、何から着手していいかが分からないという方は多く存在します。導入方法で迷っている場合、まずは手を付けやすく、ルールがある程度決まっているシフト管理のシステム化がおすすめです。
シフト表は毎月作成する必要があり、従業員のスムーズな職務遂行に欠かせないものです。その作業は人事部の業務の中でも割合を多く占めるため、効率化した際の負担軽減具合が大きくなります。
また、人事部だけでなく、従業員の負担も減るというメリットがあります。紙のシフト表であれば、シフトの確認・希望提出をする際の従業員の負担は大きくなりがちです。システム化することにより、スマートフォンやパソコンなどから利用可能になるため、従業員も自分のシフトを容易に確認できるようになります。
企業全体の負担軽減につながるのであれば、導入に関しての賛同も得やすくなります。このため、人事DXに着手する際は、まずシフト管理のシステム化に取り組むことがおすすめです。
まとめ
人事DXとは、各種システムなどを活用することによって業務効率化を図ることで、個人や組織の変革につなげることを指します。導入によって、業務を自動化できる、データの収集・可視化が容易になる、戦略人事に集中できる、多様な働き方に対応できる、人員不足への備えになり得る、といったメリットが得られます。
しかし、人事DXの推進には広範な範囲のどこから着手すべきかを選ぶことが難しいという課題もあります。導入に悩んだ際には、企業に必須の要素で改善することで大きな効果が得られる、シフト管理をシステム化することから始めることをおすすめします。
JRシステムが提供する「勤務シフト作成お助けマン」には、早番・遅番・夜勤等の「1日1記号を割り当てるシフト表」を作成することが出来る「勤務シフト作成お助けマンDay」と、 10:00~17:30等の「時問を割り当てるシフト表」を作成する「勤務シフト作成お助けマンTime」があります。作成したいシフト表に合わせてサービスを選んでいただくことが可能です。
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